これが原発だ: カメラがとらえた被曝者 (岩波ジュニア新書 194)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005001941

感想・レビュー・書評

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  • いやはや、これが現実なのだろう。著者は原発のみならず戦時中のや四日市喘息から話を始め、原子力発電までの公害の実態を赤裸々に語る。原発ムラの医者は、原子炉の中に入って作業している作業員が被爆しても本当のカルテを書けない。書いたらいられなくなる。また「書かない代わりにお金を出す。」など、なりふり構わぬ原子力の会社。
    防護服があるとはいえ、はずさないとノルマを達成できない。

    とくに印象深かったのが、核燃料の輸送だ。警官隊が隊列をなして運ぶのだが、近づいたりすると取調べを受ける。原子力発電は国策なのだ。そこまでしてなんで原子炉を動かそうとするのか。

    また海外でも原子力発電は続いている。核の汚染は事故がなくても起こりうる。

    「正常稼動でも人体に影響が出る。被曝者は出る。」ことを広く知ってもらわなければならない。

  • こんな大事故が起こる前から身を挺して取材をしていた人がいたんだな、と思うと頭が下がります。知らないことを教えていただいてありがとうございました

  • 原発内部ではいったいどんな人がどんな作業を行っているのか、その作業に携わった人々がその後どんな苦しみに襲われているのか、を取材したルポ。
    東日本大震災の20年も前に書かれた本です。あの事故が起こる前ですら、こんな綱渡りのような管理がされていたんだな、と分かる。
    最先端の技術で作られた原発でも、結局それを動かすのは元請けの下請けの孫請けのひ孫請けのまたさらにその下の日雇い労働者。うちの会社ですら、本社の指示が支社に伝わらないのに、こんな体制で、なぜ原発を安全に制御することができると信じられるのか、不思議。
    今から全く電気を使わない生活をする自信はないけど、原発を維持するために下請けの人たちがこんなに大変な仕事を請け負わされていると思ったら「経済発展のために原発は必要だ」なんてキレイごとは言えないな。私はこんな仕事はしたくないし、身内にこんな仕事をして欲しくないし、だれか見知らぬ人であってもこんな仕事を押しつけたくはない、と思う。

  • 公害から原発まで労働者を追った著書。“豊かさ”とは 一方で 人を虐げ、自然を破壊する物だったのかと がく然とする。原発の安全性どころか、それ以前のやり口に 言葉もない。
    今一度 日本人全員が考えなければいけないことが書かれている。

  • はい、ご想像どおり、反原発集会で買いました。手頃だったので。でも中身はお手軽どころか、数十年にわたる執念深い取材の成果が、コンパクトにまとめられていて、入門書には最適です。事故が起こるまで、原発労働者の被爆問題について、まったく知らなかったのが申し訳ない。事故が起きなくてもこんなに被害者を出し続けるようなもの、維持してちゃダメだよ、ほんと。

  • 公害・原発問題を取材してきたフォトジャーナリストによるルポ.写真多数.原発下請け労働者や核廃棄物に苦しむ人びと.日本,台湾,マレーシアでの取材

  • 20年前に出版されたドキュメンタリーですが、原発で働いていて被曝してしまった人たちや、核燃料輸送の話など、衝撃的な内容でした。
    今、福島で作業されている方々、ちゃんと内部被曝の測定されてるのでしょうか…ものすごく心配です…

  • 読んでいて胸が苦しくなる。たまに吐き気がする。
    1965年から今まで、全国54基ある原発で、何百万人という人が働いてきた。何十万という人が被曝してきた。亡くなった人も、体調を崩し、療養生活を送っている人も数え切れないほどいる。その人たちへの補償はとてもお粗末なもの。裁判をしようとしても、卑怯なやり方で切り崩される・・・。
    そんな人たちを、人生を、健康を、命を踏みにじって、「便利」な生活をしたいか?電気を浪費したいか?街を歩けば、必要以上の電力消費に溢れているというのに。
    先日、福島第一原発で被曝労働者が亡くなっている。福島の事故を終息させるために、誰かが犠牲にならなければならないことが苦しい。今までたくさんの人を踏みにじってきたことが苦しい。そして、これ以上犠牲になる人を増やしてはならないと、強く思う。

  • 情報は古いものになっていしまいますが、過去にこのような取材があったことには変わりがないですし、ジャーナリズムの読み物としてはすごく良いものだと思います。写真の方が書く文章はやはり写真を引き立たせるもののように感じます。素直な気持ちがストレートに伝わる文章です。今、読みたいと思う本の一冊に数えられると思います。

  • ふむ

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著者プロフィール

1937年長野県富士見町松目生まれ。報道写真家。日本写真芸術専門学校副校長。日本写真家協会会員。世界核写真家ギルド会員。日本広告写真家協会学術会員。『増補新版 樋口健二報道写真集成 日本列島1966 ―2012』(こぶし書房、2012年)他、著書・写真集多数。2011年、第17回平和・協同ジャーナリスト基金大賞受賞。日本の最暗部を追いつづけるフォト・ジャーナリスト。

「2021年 『慟哭の日本戦後史――ある報道写真家の六十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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