日本の文化 (岩波ジュニア新書 409)

著者 :
  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784005004096

感想・レビュー・書評

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  • 「はじめに」に本書の内容がだいたい語られているので、それを読めば十分だった。

    かなり読みにくく、読んでいて疲れてしまった。いったい何の目的で書かれた本なのか、何を明らかにする章なのか、前後とどう関連する節なのかが示されない。なぜ今その例を出しているのか、その一例だけで何を語れるのか、そういったことも示されない。そのため、詩集を読むときに使うような読解力を求められる。
    筆者の考える日本文化の紹介に終始するが、文化とは何か、本書ではどのようなスタンスで語るのかといったコンセプトもなく、延々と教授のおしゃべりを聞く大学の授業のようだった。また、時代もあちこちに飛ぶので、非常に分かりにくい。

    編集者がもう少し整理してあげた方がいいのではと思った。

  •  地味な題名と表紙ですが、中公新書並みには難しくて驚きました。
     とくに「はじめに」は、前置きや概論等ではなく、(二分割した時の)第一部というくらいの内容です。圧縮してあるので、油断せずに。



    【書誌情報】
    著者 村井康彦
    通し番号 ジュニア新書 409
    ジャンル 日本十進分類 > 歴史/地理
    刊行日 2002/09/20
    ISBN 9784005004096
    Cコード 0221
    体裁 新書・並製・カバー・270頁
    在庫 品切れ

     大陸から海で隔てられた「島国」日本の文化の最大の特色とは一体なにか.それらはどのようにして生まれ,洗練され,今日に伝わる伝統となったのか.清少納言や紫式部の王朝かな文学をはじめ,西行の和歌,世阿弥の能狂言,利休の「わび茶」などが生まれた歴史的背景を明らかにして,私たち日本人の物の考え方の本質にせまる.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b271195.html




    【目次】 本書にあるルビは亀甲括弧〔 〕に入れた。※私が振ったルビは全括弧[ ]にいれた。
    はじめに [iii-xv]
    1 雑種文化をめぐって iii
    ラッキョウ文化論/文化はプロセス
    2 島国文化をめぐって vii
    グローバリズムと島国/島国論否定論/島国文化の特徴
    3 生活文化をめぐって xi
    女文字と日記/「モノ」・「トコロ」・「ヒト」/「型」の文化
    目次 [xvii-xxi]

    第1章 神と仏と 001
    神々の誕生/シンボル・ツリー/飛鳥寺の西の広場/夜刀神[やとのかみ]/磐座[いわくら]/神仏習合の思想

    第2章 『風土記』 015
    芭蕉と『風土記』/『風土記』のもつ意味/地名説話/開発説話

    第3章 「みやこ」の原像 027
    「みやこ」の原郷・飛鳥/「みやこ」の原像/出身法/遷都〔せんと〕の力学/京師集住〔けいししゅうじゅう〕/平城〔なら〕貴族と平安貴族

    第4章  041
    古代の「外人教師」/仏教伝来と僧/司馬〔しば〕氏三代のこと/中臣〔なかとみ〕氏と藤原〔ふじわら〕氏/氏族の機能分離

    第5章  055
    漢字とかな/通説への疑問/在唐僧中瓘[ちゅうかん]の書状/唐風と国風/梅から桜へ

    第6章  069
    具注暦[ぐちゅうれき]と暦日記[れきにっき]/天皇日記にはじまる/「年中行事障子[ねんじゅうぎょうじしょうじ]」/貴族と日記/「望月の歌」の真相/日記と「やまとごころ」/男日記と女日記

    第7章  089
    歴史と文学/女官と女房/女房の条件/女房サロン/終わった「才女の季節」

    第8章  105
    面貌を写す/九条兼実[かねざね]と「似せ絵」/絵画と説話/「似せ絵」画家の登場/「似せ絵」とはなにか/物量主義の「信仰」/武者の登場/遁世[とんせい]者とはなにか/絵系図

    第9章 内野〔うちの〕の蕪〔かぶら〕――権威と権力の分化と補完 129
    「内野通リヲユク」/太郎焼亡・次郎焼亡/里内裏[りだいり]が内裏に/頼朝の奉仕/皇位継承上の二大原則/武家の内裏造営/内裏のその後

    第10章 茶寄合と連歌会 147
    碁石茶の里/団茶と抹茶/茶勝負のひろがり/バサラの茶寄合/連歌会の盛行/個の文学・座の文学

    第11章 衆人愛敬[しゅにんあいぎょう]と貴人賞翫[きじんしょうがん] 163
    多様な中世芸能/多芸な遊び者/衆人愛敬/消えた山里/花の芸論/『花伝書』の時代へ

    第12章 物数寄〔ものずき〕の系譜 179
    命より大事な茶道具/兼好の唐物趣味批判/茶と唐物数寄/モノを飾る場/床の間の出現/『君台観左右帳記[くんだいかんそうちょうき]』と同朋衆[どうぼうしゅう]/「和漢のさかいをまぎらかす」

    第13章 市中の山居 197
    茶の湯の「型」/方丈間が四畳半/市中の山居/都市の生活文化/茶における饗式/日常と非日常の間

    第14章 一座建立・一期一会 213
    「一期一会」は奇遇のこと?/二つの「一座建立」/四畳半と小間[こま]/待庵[たいあん]での試み/「くぐり戸」の意味/座のなかの個/井伊直弼[なおすけ]の『一会集』

    第15章  231
    芭蕉の元禄三年/旅の案内書/女性と芸能/啓蒙書の出版/貝原益軒の「童蒙[どうもう]の助[たすけ]」/『三礼口訣[くけつ]』/藪内竹心[やぶのうちちくしん]の『源流茶話』/茶の湯から「茶道」へ/流派の分立/家元制度の成立






    【抜き書き】
    ※中略するときは、〔……〕を置いています。
    ※簡単な漢字のルビは省きました。


    ・62頁
     いささか煩瑣[はんさ]な考証を重ねてきましたが、以上のことから何が言えるでしょうか。それは、寛平六(894)年における遣唐使の派遣決定とその中止をめぐる一連の動きは、在唐僧中瓘のもたらした一通の書状によってひき起こされた虚〔から〕騒動であり、終わってしまえば事態になんの変化もなかった、ということです。ことは当事者間で処理されたのであって、社会的なひろがりをもつ事件でもありませんでした。


    ・66-68頁
     このような美意識の変化に呼応するかのように、和歌の扱いがかわってくることにも留意されます。
     万葉の時代、天皇の饗宴や行幸[みゆき]の折には、廷臣〔ていしん〕たちは必ず和歌をよんでいました。侍宴従駕応詔〔じえんじゅうがおうしょう〕の歌と称せられたゆえんです。ところが奈良時代の末期、唐一辺倒で知られた藤原仲麻呂〔なかまろ〕の時、〔……〕和歌の席に漢詩が登場します。これがきっかけで、以後漢詩の比重が増し、平安初期の嵯峨天皇〔さがてんのう〕の代には、ハレの場での詩歌はすべて漢詩となりました。この時代が「国風暗黒時代〔こくふうあんこくじだいい〕」と称されるゆえんです。〔……〕
     ところが、〔……〕万葉の末期、意に任せて漢詩が登場したのとは対蹠的に、ここでは意に任せて和歌が再登場しているわけです。登場した和歌は、技法上、漢詩の影響を受けていますが、この流れが、六歌仙〔ろっかせん〕の時代を経て『古今集』に至ることは言うまでもありません。してみれば、九世紀の半ば――道真以前に「暗黒」の中から早くもすでに国風が芽ぶきはじめていたことは確かです。
     八九四年の遣唐使の廃止を日本的な文化――国風文化が形成されるきっかけになった、とする理解は、まったくの空論でしかないのです。


    ・170-171頁
    この『風姿花伝』は、〔……〕ですが、その中に「初心忘[わす]るべからず」とか「秘すれば花」といった名文句がちりばめられているだけでなく、その明快な猿楽観・芸能論に惹かれるものがあります。なかでも「この芸とは衆人愛敬[しゅにんあいぎょう]を以て一座建立の寿福とせり」という文言は、ひろく芸能者にとっての教訓といっても過言ではありません。猿楽‐芸能は多くの人びとに理解されることが肝要であり、それが一座を成り立たせ維持して行くうえでの根幹であるといい、そのために父観阿弥は遠国〔おんごく〕や田舎、山里でも、所の風儀を大事にして芸をした、といいます。

  • 学生時代、「社会」や「歴史」の授業はひどく退屈でした。大人になって仏像に目覚め、日本の歴史や文化に興味を持つようになって、基礎知識を欠いていることに不便を感じ(中世っていつのこと?というレベル)、只今、勉強中です。新書や学芸文庫などは専門的すぎて、偉くなったような気分にはなりますが、本当には理解できていないような不安を感じます。そこで、手に取った「岩波ジュニア新書」。字も大きく、噛み砕いた懇切丁寧な文章。遅ればせながら、基礎からちゃんと勉強できそうです。

    さて、その1冊目は「日本の文化」。神仏、連歌、茶の湯など、さまざまな角度から日本の文化にスポットをあて、読み解いていきます。授業では常識とされていたことを否定したり(平安時代の国風文化は遣唐使が廃止されたから広まったわけではない)、これまで常識ではなかったことを提言したり(連歌こそ日本の文化に大きな影響を与えた)、最後まで刺激的な説が続きます。

    そして、著者の村井康彦氏の名前をどこかで見たことがあるなぁ、と思っていたら、半年ほど前に読んだ「出雲と大和」の著者でした。「出雲と大和」は常識にとらわれない説とはいえ、独断的でとても筋道が通っているとは思えませんでしたが(村井氏の専門は考古学ではないそうです)、「日本の文化」は説得力がありました。

    そうそう、学校の授業に「日本の文化」という教科があったらいいのに、と思います。授業の内容はこの本に書かれている「茶道」「華道」「連歌」「お能」などの実習形式。机に座った授業より楽しいし、日本人なのに茶道も華道も経験せずに大人になってしまうなんて、とってももったいない。いや、恥ずべきことかも。これまで嫁入り前の習い事みたいに思っていた茶道もこの本を読んで「一期一会」の考え方など共感を感じ、興味がむくむくと湧き上がってきました。でも白洲正子氏は現代の茶道のこと、ぶった切っていたっけなぁ。

  • 日本の文化=宗教、政治、教育、表現、能、茶、などについて、当時の文書や政治や土地柄などから状況を洗い出し、日本人の物事の捉え方を考察した本。

    教科書などでざっくり箇条書きに書かれていることが多い日本の文化について、虫眼鏡で覗くように当時の社会や生活からどう成立し発展していったか考えられていて、よくわからない昔の出来事ではなく当時の人が作り上げたものである、と理解させてくれます。
    古くからの文化を自分と切り離さずに考えていて、とても大切な態度で歴史を考えられていると感じました。

    背後の大量の知識を思わせる詳細な記述が続くことが多く、本筋がどこか迷うことがありましたが、自分には理想的な歴史の本といえるかもしれません。

  • 13/03/19 茶道は日常生活の俗事の中に存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式である。(岡倉天心「茶の本」)  「生活芸術」

  • 読了しての感想としては「食い足りない・・・・・」っていう感じでしょうか?  結構羅列的に事象が並べられていて筆者なりの考察もそこそこは書いてあるんだけど、しょっちゅう「詳細には触れませんが・・・・・」という類の逃げ口上的な文言でサラリとかわされてしまうしまう印象でなんとなく中途半端感が漂うんですよね~。  そうであるだけに「へぇ、面白そうな考え方だなぁ。  それで?」と興味を持っても「なるほど~」とか「そんなバカな!」というような印象には辿りつかない・・・・・そんな感じなんですよ。

    KiKi にとって一番面白かったのは「はじめに」の部分で、そこで期待を持たされた分、後の章でその期待に対する落としどころを求めちゃったわけだけど、その後ではひたすら肩透かしを食らった・・・・・そんな印象なんですよね~。

    まあ、これはジュニア新書だし、「この本をきっかけに何らかの興味をかきたてられたらもっと深いところまで触れている他の書籍やら何やらで自分なりに研究しなはれ・・・・」という立ち位置があるのかもしれないし、もっと言えば紙幅の関係でこれが限界というようなこともあるのかもしれないけれど、それにしてもちょっとねぇ・・・・・。  何て言うか色々なジャンルの映画の10秒CMを並べて15見せられ(はじめにを除くと15章構成)て、中には興味を引くものもあったんだけど羅列された分印象が薄くなっちゃって、何を面白そうと感じたのか良く覚えていない・・・・・そんな読後感なんですよね~。  そういう意味ではとっても惜しい本だなぁと感じました。

    (全文はブログにて)

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著者プロフィール

村井康彦(むらい・やすひこ):1930年山口県生まれ。京都大学文学部大学院博士課程修了。専攻は日本古代史・中世史。国際日本文化研究センター名誉教授・滋賀県立大学名誉教授。著書『出雲と大和』『藤原定家「明月記」の世界』『茶の文化史』(以上、岩波新書)、『武家文化と同朋衆』(ちくま学芸文庫)、『王朝風土記』(角川選書)など多数。

「2023年 『古代日本の宮都を歩く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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