イスラームを知ろう (岩波ジュニア新書 430)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005004300

作品紹介・あらすじ

「イスラーム=過激な宗教」という印象を与える時事ニュースが多いが、本当にそうなのだろうか。教えの基本、礼拝をはじめとする日常の義務規定、結婚、死や来世の考え方、民間信仰など、世界に一〇億を超える信者をもつイスラームの、実は柔軟性にとんだ素顔を紹介する。真の国際理解・異文化理解のための必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 中高生向けですがよくまとまっていて初学者には分かりやすかったです。

  • 図書館の岩波ジュニア新書コーナーの本を漁っていた時に見つけて気になった本です。「いい機会だし、イスラム教についてちゃんと知ろう」と思い借りて読んでみました。

    そして読み始めて早速、「イスラーム」だよ、と著者に注意されるという。
    「イスラームは、それ自体が宗教の名です。これに「教」をつけるのは、キリスト教や仏教にさらにもうひとつ「教」をつけるようなものだといえるでしょう。」(p.13)
    だから、「イスラーム」を知ろう、なんですね。

    本の大部分は高校の世界史・倫理で習うイスラームについての解説をちょっと深くしたような内容。私としては復習にもなってよかったのですが、「わーっとるわい!」という向きには若干退屈かも。
    この本はむしろ、「ムスリムと民間信仰」「ジン化現象」(おそらく清水先生の人類学における研究テーマ)の話が面白い。ヨルダンのクフル・ユーバー村とブルネイのパンカラン・バトゥ村がやたら登場しますが、これもおそらく清水先生の人類学のメインフィールドなんでしょう。どちらもムスリムの村であることは間違いないと思いますが、『イスラームを知ろう』というタイトルからすればぶっちゃけピンポイント過ぎるなぁと。サブタイトルに「――ヨルダンのクフル・ユーバー村とブルネイのパンカラン・バトゥ村の事例から」とでも書いてあれば手に取る前からある程度内容は察することできますが、それやっちゃったらターゲットである中高生が手に取らなくなりますからね……。
    要するに、「大学でイスラームを学んだら、こういう人文学(特に人類学)の研究も出来るよ!」という、中高生向けイスラーム研究入門として、あるいはイスラームを研究しようと志した大学生がまずとっかかりとして読む本として手に取るのがいいように思いました。
    こうして読み終わってみると、まだまだイスラームについて分からないことって、無数にあるなぁ。

    あと最後に。この本の最後に書いてある言葉が――書いてしまえば当たり前な話ですが――著者の実感がものすごく込められているように感じたし、読んでいて心に残ったので引用します。

    「異文化を理解することが、即異文化尊重につながるわけではないでしょう。それでも、異文化理解なくして異文化尊重はありえないのです。」(p.192)

  • 参考になったが、ひとつの団体組織を例にあげすぎているきらいがある。

  • イスラームについて書かれた本
    ジュニア文庫なのになかなか難しいと感じるのは
    今までの関りが薄いからでしょうか

    イスラームは現在急速に信者数が増えているそうですが
    日本ではイスラームの男性と結婚した女性が
    改宗するという形で増えているそうです
    その形でしか増えていないことと都市部に集中しているため
    地方には日本人のイスラーム信者はとても少なく
    理解が進んでいないため宗教上禁止されていることを
    してしまい問題になってしまう点が挙げられていました

    日本にイスラームが浸透しないのは豚肉禁止と
    断食があることが最大の理由だと思っています(^ ^;)

  • この本は13年前に出版されている。裏に書かれた一文を読んで驚いた。その頃から全く変わらないイスラムに対する認識にがく然とした。イスラム教を信奉する者はムスリムといわれ、彼らの生活はその教えと密接につながっており、法律にまで及ぶ。相手を知ることから、まず始めたい。

  • 2015年1月23日読了。イスラーム(原語に近い発音)の宗教・社会・文化について解説する、若い世代(中高生くらい?)向けに書かれた岩波ジュニア新書。やさしい内容だが、イスラームについて無知な私にとって入口としてちょうどよかったかも。2000年の同時多発テロを背景にして2003年に刊行された本だが、イスラム国などが台頭する現代、議論の前提としてイスラームへの理解は必要不可欠なのではないだろうか。イスラームがクルアーン(コーラン)を絶対の経典とし、その教えを日常に実践するための細則をハディースに定めている、とかイスラームが元来異教徒にも寛容で平等を重んじる宗教(というか、生き方など全てを包含する教え)であるということなど。イスラームは厳格で血に飢えた宗教である、というイメージもあるがそんな宗教が世界に広まるはずもないということか。今は知り合いにムスリムはいないが、今後そういった人と接触を持つ機会も出てくるのだろうか。

  • 頑張って読み終わりはしたが、理解できない部分が多かった。「イスラム教」というのは実は寛容な宗教なんだよ、というのが筆者の最も言いたい事だと思う。この本が書かれた当時は、同時多発テロは発生した後だったが、「イスラム国」なんてものは無かった。今こそイスラム教に対する偏見を持たないように注意せねば。

  • 中高生向けのシリーズということで、イスラームに関する基本的なことがやさしく書かれている。
    著者自身がムスリムと暮らしながら知った、ムスリムの生活様式や考え方を多く紹介してある。

    印象的だったのは、「ムスリムはいつ、どこで礼拝の仕方を教わるのか」。学術書では出てきたことがないテーマ。
    「彼らは当たり前のように礼拝の動作を行えるものだ」となんとなく思っていたが、そういうわけでもないらしい。一連の動作は結構動きが多く、唱える言葉も動作一つ一つに対して決まっている(これも本書のなかで紹介されている)。どこかでちゃんと教えてもらわないとわからないようなかんじなのだ。
    「どこで教えてもらったのか?」という問いの答えは読めばわかります。

    「ニュースの中のイスラーム世界」より、もっと普通の人々の「イスラーム世界の生き方・考え方」を知りたくなった。

  • イスラムの土着化、ジンは幽霊なのか?

    男性は10歳になったら子供といえども義務として礼拝をしなくてはならない、というのが宗教の先生の意見。

  • ジュニア新書なだけあって、読みやすかった。
    イスラムの多様性を強調したいといっているだけあって、地域によって異なる慣習を紹介。多様な理由としては、①もともとの民間信仰にイスラムが融合 ②イスラム自体の解釈が歴史を経るなかで異なる ③柔軟な契約思想
    たぶん↑こんな感じかと。

    1.イスラームとの出会い
    イスラーム=唯一の神であるアッラーに無条件に従うこと

    2.イスラームの成り立ちと広がり
    ◆ムハンマド
    預言者、創唱者、使徒、マッカ生まれ(570年ごろ)の商人出身

    ◆六信五行
    ①アッラー
    「唯一神」を意味。固有名詞(アッラーさん)であり、普通名詞(神様)ではない。アッラーの前ではみな平等(預言者を含め、序列はない)

    ②天使
    性別なし、役割別にいろんな天使がいる、人間の両肩には二人の天使(右→善行、左→悪行を記録、最後の審判で秤にかけられる)

    ③啓典
    アッラーの啓示を記録=「クルアーン」
    ※聖書も啓典にあたるが、イスラムでは人為的に改編されたものと認識
    ※啓典の民=ユダヤ教、キリスト教(つまりイスラム教とは仲間)
    ※「ハディース」(ムハンマドの「スンナ/言行」を記録)は聖典であるが啓典ではない。

    ④預言者
    アッラーの啓示を預かり、ほかの人々に伝える役割、12万4千人、「クルアーン」では25人搭乗(アダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエス、ムハンマド)
    ※使徒=預言者のうち、特別な使命をさずかったもの(313~315人)

    ⑤来世
    最後の審判の日に、死者はよみがえり、アッラーによる審判を受けて天国行きか地獄堕ちが決まる

    ⑥天命
    この世のすべてのことはアッラーの意思によってあらかじめ決められている

    (1)信仰告白(シャハーダ)
    アッラーへの信仰を告白する行為
    「ライラへ・イッラッラー、ムハンマド・ラッスッルラー」

    (2)礼拝(サラート)
    1日5回、夜明け・正午・午後・日没・夜、金曜正午はモスクで集団礼拝

    (3)喜捨(ザガート)
    貧しい人へのお布施、救貧税

    (4)断食(サウム)
    ヒジュラ暦の9月(ラマダーン月)に一カ月実施、日没前~日没まで飲食・喫煙・性交すべて断絶
    ※つばを飲み込むことも禁止

    (5)巡礼(ハッジ)
    ヒジュラ歴の12月7日~13日、マッカのカーバ神殿を詣でる
    ※肉体的・経済的に可能な者だけ

    ◆シャリーア(イスラム法)
    イスラムの規範、クルアーンとハディースに拠る

    ◆スンナ派とシーア派
    スンナ派→ムハンマドのスンナを信仰の基礎とする、合議派(ムハンマドの後継者は合議で決める)
    シーア派→それ以外の少数派(まとめてシーア)、血筋派(ムハンマドの後継者は血筋があるものに限定)
    ※イラン→シーア派の国、12イマーム派(ムハンマドの後継者は12人いる)

    ◆イスラームの寛容性→信徒が増えた理由
    ①改宗が容易(特別な儀式は不要、信仰告白のみ)
    ②平等主義(アッラー以外の神性は一切認めない)
    ③契約思想(六信五行の契約をまもれば来世が約束される)
    ④そのくせ柔軟(過不足や善悪のバランスをとればよい、とりかえしがつく宗教)

    3.ムスリムの一生
    ◆ムスリムの通過儀礼
    多くは民間信仰+イスラムによるもの→土地によって儀式は異なる
    イスラムを国教とする国では、近代法を採択しつつ民法の一部にシャリーアをとりいれている国もある。
    ※サウジやイランは、国の法律すべてがシャリーアに準拠(イスラム的!)

    ①誕生・名づけ・割礼は民間信仰による慣習

    ②結婚は義務、独身はタブー、男性は啓典の民との結婚は可能だが女性
    はムスリム男性としか結婚できない、婚資は花婿が花嫁の実家に支払う(⇒女性は結婚が早いが、男性は遅い)

    ③一夫多妻(4人まで)は、未亡人や孤児を救済するため
    ※欧米からは、男尊女卑・非経済的と非難→戦後、トルコやチュニジアは一夫多妻を禁止(家族法の改正)

    ④遺産相続は、妻は1/8、子供が残りの7/8を男:女=2:1で配分
    ※妻が複数いる場合は、1/8を均等配分

    ⑤死(生)は一度だけ、輪廻転生はない、火葬はNG(最後の審判で霊魂が戻るところがなくなるから)、火で人間を焼くことはアッラーのみ持ち得る罰、自殺はタブー、ジハード(殉教)は好ましい死、墓はただの死体置き場

    ※生きている人間が死者のために善事をおこなう「追善」は、イスラム社会でも見られるが、これはイスラムではなく民間信仰に近いもの
    →宗教指導者によって、追善儀礼を禁止する場合も。

    4.ムスリム社会の一年
    ◆ヒジュラ暦(イスラム暦)
    太陰暦(月が地球の周りを一周する=1年354日)、622年7月16日=イスラム元年元旦(ムハンマドがマッカからメディナに移住)

    ◆メインは断食・巡礼後の二大祭り
    ①イード・アル・フィトゥル→断食あけ
    ②イード・アル・アドハー→犠牲祭(巡礼あけ)
    墓参り、饗応、羊の屠殺・供物など、「ハレ」の日、祝日、サラート・アル・イード(早朝の集団礼拝)

    5.ムスリムと民間信仰
    ◆民間信仰(呪術)は、イスラムではない
    法律で禁止→実態は、不法滞在者を排除することが目的

    ◆スーフィズム(イスラム神秘主義)
    スーフィズム→六信五行以外に修行が必須
    (例)トルコのメヴレヴィー教団(旋舞)、ヨルダンのアラウィー・ダルカーウィー教団(呪術)

    ◆聖者
    「ムスリムとしての徳を人並以上に積み、アッラーの寵愛を受けた人々」として世間から認められ・あがめられた人たち、スーフィーもその一部
    ※厳格なイスラム社会(サウジなど)を除いては、聖者信仰を黙認

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