財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書 566)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005005666

作品紹介・あらすじ

自治体の財政赤字がふくらみ、国の借金も世界最高になっている。なぜ、赤字になったり、借金が増えるのだろう?国や自治体の予算はどのように決まるのだろう?税金の体系はどうなっているのだろう?それらの疑問に答えながら、財政のしくみと今かかえている問題を解説し、地域のニーズを実現する財政のあり方を考える。

感想・レビュー・書評

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  • Amazonでもわかりやすいとの評価が多いが、同意できない。
    文章が平易だからといって、わかりやすい記述とは限らないのではないか。
    ジュニア層の読者が読んで、すんなり理解できるとは思えない。

  • 「おおやけ」の概念を「社会を構成している人々がすべて排除されない、誰もが参加できる領域」と説明するところから始まる本書。つまり財政は、「誰も排除されないお金まわりであり、社会の構成員の『共同の財布』」であると。
    考えてみれば当たり前のことではあるが、財政と民主主義が密接につながり、それはすなわち、私たちの手に委ねられているのである、ということが、全編通しての主張と感じられた。

    2023年度からの施行が決定した「インボイス制度」についての説明もあり。税率を上げるとすれば軽減税率を導入せざるを得なくなり、その結果、インボイス制度も導入が必要だろうという論。

    「国の借金が膨れ上がっている」ということはよく言われることであるけれども、筆者は日本は国債を国内向けにしか発行していないので国家破綻というようなことにはならないと主張する。国の借金の考え方については、財政学者の間でも意見が真っ二つに分かれるそうなので、次はもう一方の意見を知りたく思った。

    p.134
    「内国債を発行しすぎて国家破産したという例は、人間の歴史のなかでは一つもありません。第二次大戦中、日本は今よりもっと多くの借金をかかえていました。しかし、それで破産はしませんでした。どういうふうに返したのかといえば、戦後インフレーションがおこったため、借金は事実上意味がなくなったのです。もう一つは、一回限りの財産税という巨額の税金をかけて、償還してしまいました。…日本政府が明日、借金を返そうと思えば、明日返すことができます。…税率100%の国債保有税という税金をかければいいわけです。」
    という、実際に起こった横暴とも言える出来事を”国の借金解消方法”として述べる乱暴さには思わず声をあげて笑ってしまったけれど、それは当時の富裕層の没落を意味していて、当人たちにとっては笑い事ではなかっただろうし、そして現在日本(どころか世界中)はインフレの真っ只中にある。さらに、インフレが起こったときに困るという内国債の保有者が誰かというと、その筆頭は日本銀行であり、それって一体どういうことなんだっけ?とわからなくなる。

    7章・8章は、財政学者からの未来への提言。当時の未来となった今、日本は何ら方針転換をすることなく、社会状況は確実に悪化している。このような中で「壊そう」という声を上げるのは簡単で、賛同もされがちだが、その先の未来を描けていなければ、ただただ社会・生活が壊れ、立ち直るのが困難となる破局を迎えるだけ、という言葉には、2021年衆議院選挙の結果を思い浮かべる。

    p.192
    「まず地域の住民として、隣人たちといっしょに政府を作り、その隣人たちの政府の集まりとして一つの国家というのができあがっている、という形にしなければならない」
    まずは足元から。分断された私たちがつながりを取り戻すには、まず、「私」が誰かの隣人であるという意識を持ち行動することと改めて思う。

  • 難しかった…この内容で中高生は分かるのかな?

  • 字ばっかりの本を久しぶりに読んだ気がします。

    一見難しそうだが、重要なこと(新聞等で話題になるようなトピックス)を理解できるように、取捨選択して書かれています。

    財政の基本を知らなかった私にとっては、目から鱗の一冊でした。

    建設公債の原則
    繰上充用制度
    会計年度独立の原則
    などの言葉を知らないが、財政に詳しくなりたい方には手頃かと思います。 

  • 大学生の頃に購入して以降、社会人になってからもずっと積まれており、ようやく読んだ本。
    すごく簡単に分かるところと、言い回しが難しいところとがある。
    インボイスはこの頃から話題にはなってたんだと気付きを得たが、仕組みを聞くといつも頭がこんがらがるので、頭の中をよく整理する必要があるなと改めて思った。
    社会人が読んでも難しい部分はあるが、全体的にすごく丁寧に説明をしており、分かりやすい。
    ただ、予算がどのように決められているのかや財務省の実情とかそういうところを知りたくて買ったので、少し物足りなかった。

  • 神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書, 2007)
    ▼ 高校生くらいでも読める財政(学)入門書。
    ▼ 第2章の税の話が明快。
    ▼ 第5章の国債の話が面白い。日本政府の国債はほぼ内国債であり、また資産も多くあるので、大した問題ではない。問題は、政府が予算の1/4を借金返しに充てている点、またそのことが所得再分配に反してしまう点にある、と。

    「財政の借金が大きくなると、財政がこの所得再分配の機能を果たせないどころか、逆再配分の機能をもってしまうということです。なぜなら、国債をもっているのはお金持ちの階層です。したがって、国民からとりたてた税金を、国債の借金返しに使えば、一般の国民から税金をとって豊かな人々にお金を再配分してしまうという現象になるのです。
     現在日本でおこなわれようとしている、財政再建のために消費税を増税しようという政策は、この典型です。なぜなら、消費税は負担が逆進的で、貧しい人に負担が大きく、豊かな人に負担が小さいからです。税金で貧しい人々に負担を求め、国債をもっている豊かな人々にお金を配分するということになるわけです。
     つまり、本来の財政は、国民のお金を右のポケット(豊かな人々)から左のポケット(貧しい人々)に移すのが役割なのですが、財政再建のための消費税増税では、左のポケットからお金をとって、右のポケットに押しこむという逆再配分がおこなわれる危険性があるということです。」(137頁)

  • 言い回しがジュニア新書にしては難しく、例示も中高生には分かりづらいように感じたが、当のティーンエイジャー達はどうなのだろう。

    挿入されているグラフはひと目でメッセージが伝わる価値のあるものだったが、アクセスしやすい出典であれば、なお良かった。

    政府や自治体のお金の原則が分かりやすかった。

  • これ、中高生向け?!

  • 非常にわかりやすく、財政の役割、日本の財政の仕組みや問題点など理解できた。

    とても良いと思ったら東大教授で財政審議会の会長という現場の方が書かれた本でした。

    本来こうあるべきという日本の財政のおかしなところにも切り込んでいて、単なる平易な本ではなく考えさせられる内容もあった。

    初学者向け。

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著者プロフィール

神野直彦(じんの・なおひこ)
日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授(財政学・地方財政論)
『システム改革の政治経済学』(岩波書店、1998年、1999年度エコノミスト賞受賞)、『地域再生の経済学』(中央公論新社、2002年、2003年度石橋湛山賞受賞)、『「分かち合い」の経済学』(岩波書店、2010年)、『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』(NHK出版、2015年)、『経済学は悲しみを分かち合うために―私の原点』(岩波書店、2018年)
1946年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学



「2019年 『貧困プログラム 行財政計画の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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