さとやま――生物多様性と生態系模様 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005006861

作品紹介・あらすじ

かつては身近だった草花や昆虫たちが、いま絶滅しようとしています。彼らのすみかだった「さとやま」とは、ヒトの節度ある自然の利用や管理によってつくられた、水田やため池、茅場や雑木林などがパッチワークのような模様を生む、変化に富んだ半自然です。衰退の危機にあるさとやまの歴史や価値をさまざまな角度から描き、再生の道を考えます。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、日本学術会議が、中学生にも理解できる水準と優しい表現で、最先端の学術情報を提供しようという意図で出版している岩波ジュニア新書の中の、<知の航海>というシリーズの1冊。ジュニア向けとはいえ、使われている用語は専門的で、私にとってはどちらかと言えば学術的な内容と言える。
    衰退の危機にさらされている「さとやま」を様々な角度から眺めることにより、人類の起源からその進化の過程において、生活や文化と密接に結びついた必需品の供給地として、大変重要な役割を果たしてきたことがわかる。とはいえ、「かつては普通にみられたのに、今は絶滅危惧種となっている生物が多く生息・生育する場所」というシニカルな表現は、さとやまが今日いかに危うい状況にあるかを、残念ながら見事に言い得ているといえよう。そうした状況下ではあるが、最終章において、持続可能な保全や再生へ向けての国内外の取り組みも紹介されている。どちらかといえば地道なこうした活動が、各地に広がっていくと同時に、今後も確実に続いていくことを願わずにはいられない。

  • 2023年1-2月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00470700

  • 気になった点2つ

    ・アリー効果について復習しようと思ったこと
    ・愛知目標という生物多様性に関する目標が2010〜2020に掲げられており、その達成率はわずか10%に収まるということ

  • 著者の視点から日本の”里山”とはどういったものなのかを纏めてくれている一冊。大人の私が「難しいけどなるほど~」といった感覚で読んでいたものの出版社の解説をみると本書はどうやら中学生向けらしかった...。

    印象に残ったのは「野」、「牧」という土地の概念、あまり知らず考えたこともなかったのですが現代でいえば公園や市街地といったものと同類レベルの位置付けで存在していたと思うと面白いなあ。

    ともあれ里山の良し悪しは実際に身を置いて生活しないとわかりっこなく、一度きりの人生、まずは住んでみて、色々知って感じたい気持ちでありましょうか...。(里山はすこし憧れでそういった環境下に一度住んでみたかったり。)

  • さとやま――生物多様性と生態系模様。鷲谷いづみ先生の著書。里山の実態、里山の衰退と崩壊によって絶滅の危機にある動植物の存在、生物多様性の大切さが理解できる良書。自分勝手で身勝手であたかも地球の支配者のような振る舞いをしている人類の横暴によって他の生物、動植物を絶滅させるようなことがあってはならない。中学生や高校生を含めた学生向けに里山や生物多様性の大切さをわかりやすく伝えているけれど、年齢に関係なく大人も子供も読む価値がある一冊。

  • ecological footprint
    https://www.youtube.com/results?search_query=ecological+footprint

    ヨハン・ロックストローム
    https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=ie8scint&p=%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A0

    ペティ=クラーク
    https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=ie8scint&p=%E3%83%9A%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%9D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AF

    修復生態学
    https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=ie8scint&p=%E4%BF%AE%E5%BE%A9%E7%94%9F%E6%85%8B%E5%AD%A6

    サクラソウって、絶滅しかかってたの?

    現状のままの人間活動が続くと、地球環境の安定が損なわれ、人そのものの持続可能性が危ぶまれる事態になっている。

    浪費型ライフスタイルの消費者としてだけ生きたいか?

  • 請求記号:SS/468/W44
    選書コメント:
    岩波ジュニア新書は中高校生向けのシリーズ。環境問題を考える際にはある程度の自然諸科学の知識を求められるが、このシリーズは入門書として役に立つ。本書は人間が関わって維持される生物多様性のあり方を考えさせる。
    (環境創造学部環境創造学科 北澤 恒人 教授)

  • コウノトリを育む米、のような農作物を買うことは、コウノトリが生活できるような生態系を守るということ。

    サクラソウについて。

    一昔前の「普通の生き物」で現在では数を減らしてしまっているものについては、生息地の減少など、単純な原因でそうなっているのではない。農業のやり方が変わり、山にヒトが手を入れなくなったことで、生態系全体が変化してしまっている。生息地を確保できても、この問題に対処しなければ、個体数の減少は止められない。

  • ジュニア新書なので、さらっと流すつもりで読み始めたが、とても充実した内容だった。水田が両生類やトンボ類に理想的な生息環境を与えていることや、洪水時の遊水池として機能することなど、日本人にとっての原風景ともいえる里山が自然環境との共生システムとして機能していたことがよく見えてくる。また、冬季も水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」の取り組みによって水鳥が利用できるようになり、除草効果や施肥効果も得られるようになったという事例も興味深い。

    日本学術会議との共同企画である「知の航海シリーズ」としてジュニア新書となったらしいが、読後感は岩波新書としてより多くの人に読んで欲しかったと思う気持ちが強かった。

    ・動物に食べられるのを防ぐ作用を持つアルカロイドやプリミンを含む植物がある。シカが増え過ぎている奥日光では、シカが食べないイケマが繁茂し、幼虫が食べるアサギマダラが乱舞する森や、サクラソウ属のクリンソウが増えている森も見られる。
    ・地下水が停滞する樹木が育ちにくい場所では、ヨシ原やスゲ原などの草原、スゲ類やミズゴケが主体の湿原が発達する。それよりも乾いた場所にはオギ原、さらに乾いた場所にはススキやササが発達する。
    ・水田のまわりの灌漑用のため池や水路、樹林や草原といった水と樹林の組み合わせは、両生類やトンボ類の理想的な生息地。日本列島には、61種類の両生類、200種近いトンボ類が生息している。近代になって、水田の中干しの時期が早まったことや、収穫後の乾田化によって全滅することが起きている。
    ・スウェーデンのロックストロームの研究チームが2009年にネイチャー誌に発表した結果によると、人為的な気候変動、生物多様性の損失、窒素循環の改変の3つはすでに「安全圏」から逸脱しており、逸脱の程度は生物多様性の損失が最も大きい。
    ・宮城県大崎市の蕪栗沼を治水のために掘削する計画が持ち上がったことをきっかけに、近隣の白鳥地区で耕作放棄されていた水田を遊水池とするために湿地に戻した。また、冬季の耕作水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」によって水鳥が利用できるようになり、除草効果や施肥効果もあることがわかった。

  • 過去の人が行う自然の中での活動は山の植生を豊かにしていた。人が里山に入らなくなった現代では、無配慮な植林、外来の動植物、護岸の設置等のためにかつての豊かな植生が失われている。内容は広く浅く。エコロジカルフットプリントや修復生態学などの紹介があり少しためになった。昔ながらの人の自然との接し方が良いことは理解できたが、ただ昔の生活に戻るというだけでは非現実だし、目的が「昔の植生」というだけでは憧れはしても必ずしも目指す姿にはなり得ないのかも

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著者プロフィール

生態学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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