期待はずれのドラフト1位――逆境からのそれぞれのリベンジ (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008438

作品紹介・あらすじ

高校や大学、社会人野球で華々しく活躍し期待されてプロの道に進んでも、誰もが思い通りの成績を残せるわけではない。ケガに苦しみ、伸び悩み、やがてひっそりとユニフォームを脱ぐ…。しかしそれは人生のゲームセットではない。真価を問われるのはその後だ。新たな道を歩む元ドラフト1位選手たちのそれぞれの生き方をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 謙虚に学ぶこと
    何を変えて、何を変えないのか、自分を持つ
    柔軟な頭を持つこと
    状況に応じて考えてベストを尽くすこと

    分かっちゃいるけど、むずかしい。

  • ○ 新書で「学校生活」を読む⑭

    元永知宏『期待はずれのドラフト1位 逆境からのそれぞれのリベンジ』(岩波ジュニア新書、2017年)

    ・分 野:「学校生活」×「人生を読む」
    ・目 次:
     はじめに
     38歳から修行を始めてイタリア料理のシェフに 水尾嘉孝
     傷だらけのドラフト1位 的場寛一
     松坂世代最初のメジャーリーガー 多田野数人
     ITビジネスマンへ華麗なる転身 江尻慎太郎
     やりたくなくなるまで野球をやり切る 河原純一
     暗黒時代の阪神の絶対エース 藪恵壹
     ドラフト1位のそれから 中根仁
     おわりに

    ・総 評
     本書は、ドラフト1位という最高のスタートを切りながら、その後、周囲からの期待に応えられずに挫折した元プロ野球選手たちを取り上げた本です。著者は、自身も立教大学野球部に所属し、現在はフリーライターとして野球に関する著書を多数発表している人物です。
     毎年、ドラフト会議が近づくと、どの球団がドラフト1位で誰を指名するのかといったニュースが飛び交うようになります。しかし、そうして華々しいデビューを飾った選手たちも、プロの世界で生き残ることは簡単ではありません。多くの選手が、夢半ばでユニフォームを脱いでいくのが現実です。本書では、一度は夢破れながらも、その後、どのようにして自らの活路を見つけていったのかが語られています。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。
     
    【POINT①】「変わる勇気」――江尻慎太郎(日本ハムファイターズ:2001年ドラフト1位)
     投手の江尻慎太郎さんは、レベルの高いプロ野球の世界で成績を残せず、何らかの「変化」が必要にもかかわらず、ドラフト1位という「成功体験」がそれを妨げていました。このように「欠点を修正することができず、ひっそりと消えていくケースが多い」と著者も指摘しています。しかし、江尻さんはその後、コーチのアドバイスで投球フォームを「横投げ」に変えたことで、目覚ましい成績を残すことができました。本人も「自分のキャリアや栄光を振り払うことは難しい」と言っていますが、それでも「何を変えて、何を変えないか」という難題に向き合った人のみが成功を掴むことができると著者は指摘しています。

    【POINT②】「自分のやり方を押し通す強さ」――河原純一(読売ジャイアンツ:1994年ドラフト1位)
     投手の河原純一さんは、巨人のドラフト1位という重圧の中、コーチのアドバイスを「聞きすぎた」ことで、思うような成績を残せずにいました。この時期について、本人も「自分のやり方を押し通す強さが足りなかった」と振り返っています。やがて右肩を怪我し、納得のいく投球ができなくなります。しかし、そこから「100パーセントではない状態でどう戦うか」という「自分のやり方」を確立したことで、その後も複数の球団で選手として活躍することができました。また少年野球の指導者となった現在、そこで得た「メンタルの鍛え方」や「コンディションの整え方」などが、彼の武器になっていると著者は指摘しています。

    【POINT③】「大切なのは頭の柔軟さ」――中根仁(近鉄バッファローズ:1988年ドラフト2位)
     現在、引退したプロスポーツ選手のセカンドキャリアを支援するサイトを運営する中根仁さんは、プロの壁を突破するには「頭の柔軟さ」が大事だと言います。アマチュア野球では”主人公”だった選手たちも、プロ野球では”脇役”にならざるを得ないことが多く、この時に「昔のこと」は忘れて「自分の力量と役割に気づくこと」が重要となります。そのためには、周囲の意見に耳を傾けなければなりませんが、全てを鵜呑みにするのではなく、自分にとって不必要な意見を「聞き流す力」も必要です。そのバランスを「自分の頭で考えることができるか」が、いわゆる「頭の柔軟さ」であると著者は指摘しています。

     今回は【POINT①】と【POINT②】で対照的な人物を取り上げました。一人は周囲の意見に耳を傾けずに失敗した選手、もう一人は周囲の意見に耳を傾けすぎて失敗した選手――こうして見ると、プロ野球選手として成功する「唯一の正解」などは存在しないのでしょう。そもそも、野球は「3割の確率でヒットを打てば好打者と認められる」ほど、失敗するスポーツです。だからこそ「失敗の中から何を見つけるか」が重要になると著者は指摘しています。野球に限らず、自分が得意なことや好きなことで挫折した時ほど、人は落ち込みますし、冷静でいられなくなるものです。そんな時は、本書で取り上げられている人たちの“再挑戦”を是非参考にしてほしいと思います。
    (1613字)

  •  プロ野球でドラフト1位指名されたが、十分に活躍できなかったと目される選手の「その後」を取材したノンフィクション。登場するのは水尾嘉孝、的場寛一、多田野数人、江尻慎太郎、河原純一、藪恵壹。それに本人は2位指名だが、学生時代から多くのドラフト1位選手と接点のあった中根仁にも取材している。名前を見てわかるように、全く活躍できなかった選手は皆無で(むしろ多くは一時期でも球史に結果を残した選手たちだろう)、彼らに「期待はずれ」というのは酷ではある(本当に「期待はずれ」だった人に面と向かって「期待はずれ」とは言えないだろうが)。

     10代の読者への教育的効果を想定した「岩波ジュニア新書」なので、失敗や挫折をバネに別の世界で復活という定型的なリベンジストーリーばかりなのが綺麗事すぎるが、その中でも日本野球界の「古い体質」の問題が垣間見えるのは興味深い。各人の話に共通するのは、従来の日本の野球界では監督・コーチの権威主義的な指導(怒鳴る、殴る、失敗を責める、気に入らない選手を干す、無理にフォームを変えさせるなど)が横行し、選手は「やらされる」感覚で萎縮してしまい、自分の頭で考えることができなくなってしまうということ。特にプロ生活をアメリカでスタートさせた多田野は「日本のコーチはやってはいけないことばかりをしている」(p.82)とまで指摘する。最近はメジャーとの人的交流が増えて変化しているようだが、完全には払拭できていまい。単に野球界のみならず、企業や学校などにも通じる日本社会の構造的欠陥と言えよう。

  • なかにはぜんぜん期待外れじゃない人もいたけど、まあそれは置いといて、第二、第三の人生をしっかりと歩んでいる人を追いかけた企画はとてもよいと思う。

    読後は、本書にも登場しないほどの「期待外れ」もすごくいるんだよなあ、とちょっと悲しくなる。

  • 仕事や生き方にとても役立つ事が多かった。
    普通に当たり前のことも多いだろうけど、伝えている相手がドラフト1位で色々な挫折や経験をしているから、説得力が違う。
    阪神ファンとして、藪さんがここに入ってるのはちょっと違うかなぁ。と感じた。

    ・事が起こった瞬間にすぐに手を打つ。反応ではなく対応する。一旦感情を脇に置いて次の一手を考える。
    (仰木監督)
    ・学ぶときに大切なのは謙虚になる事
    ・未来に楽しい事がある。何でも自分の力で変えられる可能性があるから。
    ・明日を変えるために知識と技術を身につける
    ・これからどうするか未来形で話す。昔話は不要
    ・失敗は沢山しても良いが同じ失敗は二度としない。

    ・自分のゴールを決め、ゴールにたどり着くために何をするべきかノートに書き出す。
    目標、乗り越えるべきカベ、解消すべき課題
    ・目標をノートに書く事で行動が変わる。
    ・トレーニングを怠らず準備に時間をかける。
    ・つらいときには今は神様が我慢しろと言っているんだ。勉強する時期なんだと考えて我慢する。
    どんなときにもポジティブに!

    ・営業は自分がいかに気に入ってもらえるか。
    ・退路を絶ってじぶんを変えようとする姿は美しい。
    ・人の言うことを鵜呑みにしない。自分で正解を見つける。

    ・プロ野球は自分を持っている人だけが生き残る世界。周りに影響を受けたり他人に気を遣い過ぎたりする人は生きにくい。
    ・悪いなら悪い状態でどうやってバッターを打ち取るか徹底して考える。
    万全の状態でなくても全力を尽くす。過去の自分と決別し今を懸命に生きる。
    ・習慣と心構えが本当にすごく大切

    ・人からはムダに見える事も自分にとっては大事な経験、財産

    ・準備をしっかりしたうえでの失敗はそこから何かを学び取れる。
    ・頭の柔軟さが必要だけど、自分の真ん中にしっかりした芯を持つことも同じくらい必要。

  • 自分を正しく把握できればいいんだけど、それがいちばん難しい。ひとりで解決できる問題ではないからね。

    まあ、とにかく。ぼーっとした時間をなくして、明日からがんばろうと思わせてくれる本です。

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著者プロフィール

1968年愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。近著に『補欠のミカタ』、『それぞれの甲子園』『野球と暴力』他多数。

「2022年 『トーキングブルースをつくった男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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