ゴッドは神か上帝か (岩波現代文庫 学術 56)

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000561

感想・レビュー・書評

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  • 結局、どっちだったか。

  • モリソン訳聖書が日本語訳や洪秀全の太平天国へ与えた影響を翻訳という観点から読み解き大変面白かった。原文忠実か文体重視か、翻訳された言葉は翻訳された先の言語の文脈や言葉で読まれてゆくといった指摘。本論では翻訳におけるequalityの問題に真摯に誠実に取り組むモリソンの訳業を精緻に読み解きつつも、前段と後段でアヘン戦争によってイギリスが獲得しようとした大義equalityが植民地侵略の大義名分ともなったこと、その文脈ではアヘンは毒薬ではなくpropertyだったことに言及する構成も品が良い。

  • p.113
    英華字典(第一巻、第二部の序文)
    読者は、翻訳に際して使える正確なことばを、この字典に期待してはならない。ここで提供できるのは、しかるべき文句を取出す手がかりとなるようなことばの意味なのである。また、中国語の詩的な意味が正確にここで得られるとを期待してはならない。ことばの移り変る意味のすべてとか、よく使われる漢文古典の比喩の意味などもここに求めてはならない。そういうものは、これまでヨーロッパ人が中国語を学んできたのよりもずっと多くの、さまざまな才能の人たちの努力にまたなければならないのだ。

    p.118
    翻訳者がいかに努めようとも、こういう新しいことばの意味、あるいは同じことだが、古いことばに負わされた新しい意味というものは、原文からではなく翻訳語の側のことばの文脈によって(from the context rather than the text)、そのことばで生れ育った人々(the native)によって理解されるものだからである。

  • 翻訳論。原語と訳語の等価性、ということが、実は世界観や行動理念を反映するシビアな思考活動を伴わなければ決められないのだ、ということを認識させられました。原文の読者が受け取るであろう情報を訳文の読者も受け取れるような訳文を作る、ということは前から意識していましたが、私が経験した翻訳はみんなまだ生っちょろかったな、と実感。グローバル化が進んだ現代では、昔に比べると翻訳は格段に易しくなっただろうな、と初めて思い至りました。

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著者プロフィール

1928年東京市生。東京大学教養学部教養学科卒。元桃山学院大学教授。著書に『翻訳語の論理』『文体の論理』『翻訳とはなにか』『翻訳文化を考える』『日本語をどう書くか』『秘の思想』『近代日本語の思想』『未知との出会い』『日本の翻訳論─アンソロジーと解題』(共編著)(以上、法政大学出版局)、『翻訳の思想』(ちくま学芸文庫)、『比較日本語論』『翻訳学問批判』(日本翻訳家養成センター)、『翻訳語成立事情』(岩波新書)、『現代日本語の発見』(てらこや出版)、『「ゴッド」は神か上帝か』(岩波現代文庫)、『一語の辞典─文化』『一語の辞典─愛』(三省堂)、『翻訳語を読む』(丸山学芸図書)ほかがある。

「2017年 『近代日本語の思想〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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