天皇観の相剋: 1945年前後 (岩波現代文庫 学術 68)

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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006000684

作品紹介・あらすじ

廃止か保持か-日本降伏をめぐる英・米・オーストラリア・中国など連合国側のさまざまな天皇観の対立・相剋をはじめて実証的に明らかにし、戦後改革を伝統社会の変容のドラマとして解明した画期的研究。諸外国の「鏡」に映し出された天皇制のイメージは、同時に日本人のいかなる思考や集団行動様式を反映しているのか。

感想・レビュー・書評

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  • 各戦勝国による日本の天皇制の捉え方の違いもさることながら、本書のハイライトはやはり「原爆と天皇」を扱ったところだろう。知日派のグルーが原爆という未曾有の兵器使用を未然に阻止すべく孤軍奮闘する様には心を動かされる。他方、本書には触れられていないが、原爆投下に対して「仕方がなかった」とコメントした昭和天皇の感覚にはどうしても理解し難いものがある。

  • 明治憲法下における天皇の位置付けの二重性は、敗戦による戦争責任の追及にも大きく影響した。天皇制存置か廃止か、天皇の戦争責任を追及すべきか否かを巡り、連合国の米、英、豪、中国において、どのような意見が示されてきたかを、著者は丁寧に辿っていく。
    アメリカにおける親中派と親日派との対立は知っていたが、オーストラリアが強硬に天皇の戦犯訴追を求めていたことや、その事情については、本書で初めて知った。
    現憲法の象徴天皇に至るまでに繰り広げられた、厳しい道筋を教えてくれる好著である。

  • 歴史

  • ポツダム宣言を受諾した日本において、天皇制がどうなるかは国内のみならず、米国、及び連合国においても注目の的だった。完全なる天皇制の撤廃を求める中国やオーストラリア、ソ連。米国の中でも天皇制を今後の民主化を行う土壌として利用しようとする米国知日派と、それに反対する勢力に分かれていた。まさに各国、各派がそれぞれの「天皇観」を持ち、戦後日本を挟んで相剋していた。
    何度か版を重ねる際に追記されたあとがきが、最近の天皇制や改憲問題をめぐる議論にも言及していて興味深い。

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著者プロフィール

1917年生まれ。神戸女学院大学、オリヴェット大学、コロンビア大学、ユニオン神学校に学び、R.ニーバー、P.ティリッヒに師事。文学博士(東京大学)。国際基督教大学名誉教授。著書に『人間観の相剋』(弘文堂新社)、『土着と背教』(新教出版社)、『正統と異端の“あいだ”』(東京大学出版会)、『天皇観の相剋』『日本リベラリズムの稜線』『戦後デモクラシーの源流』(共に岩波書店)、『峻烈なる洞察と寛容──内村鑑三をめぐって』『植村正久──その思想史的考察』(共に教文館)などがある。

「2017年 『新版 光の子と闇の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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