- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006000783
感想・レビュー・書評
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「ひき裂かれた自己」「好き?好き?大好き?」などの著書で有名な精神科医R.D.レイン30歳までの半生記。惜しくも氏はこの著書以降、30歳以降の自伝に執りかかった頃に61歳の若さで、保養先のテニスコートで亡くなったという。まるで小説のように先が気になるような不思議な伝記で、この先の氏の歴史を読むことが出来ないのが非常に残念。
当時も現在でも、レインが精神医学界の中では異端であったという事がよくわかる。彼は「医者と患者」という関係性よりも、「わたしとあなた」としていつも人と向かいあった。医学(主に薬の処方や電気ショック、脳手術による)では治療・寛解が可能な「病気」でも、彼は積極的に治そうとはしない。その人を「病気」であることを含めてその人であると理解し、ただ隣に居続けたのだった。
しかし彼は心の「病気」とは、狂気とは何かと問い続ける。
家族や社会に阻害され、または大きな事故や戦争などで心が壊れるという事。それは「病気」ではなくて、正常な反応ではないのか。
正常な反応を「病気」として治療するという事はどういうことなのか。
正常と狂気の間に線を引き、隔離してしまうのは一体誰か。
そもそも自分は全く正常だと誰が言い切れるのか。
自身と社会に問い続けたレイン。貴重な半生記である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
―2003年4月―
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いわずと知れた反精神医学の旗手の自伝。訳本のためか、または元々なのか、文章は少しくどいところはある。スコットランド出身というのは、改めて本人の思想形成に影響を与えたのだろうか。幼少期のしつけから学生生活そして軍医、精神科医への道のりが抑えた筆致で述べられている。レインが卒業した頃は朝鮮戦争時で英国は徴兵制があったことや当時の英国精神医学はドイツ等の大陸精神医学に学んでいたことや患者と接触してはいけない(話してはいけない)ことなど、当時の状況がよくわかる。それを変えるために色々な実験をしてきたことが分かる。後のキングスレーホールにつながる萌芽があったのだろうが、その後の経過や最後はフランスのリゾート地でテニスをしている時に突然死した経過などを既に知っている今となっては(皮肉にも)青春物語と読めるかもしれない。
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レインは精神科医になるまで、病者の人格を疑っていたが、一人一人接するうちに考えを変えた。病者は善良でいい人がいっぱいいた。彼の人生は自分の身を刻むほど、病者に寄り添って接するようになって、彼の臨床医学を理解するうえで必読書である。
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245夜
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誰が狂人で,何が狂気だったのでせう。なかなか読みやすい。