道化の民俗学 (岩波現代文庫 学術 175)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006001759

作品紹介・あらすじ

エロスと笑い、風刺と滑稽に満ちた祝祭空間で演じられる"道化"の意味は何か-コンメーディア・デラルテの主人公アルレッキーノや狂言の太郎冠者、中世劇の悪魔と道化、ギリシャ神話のヘルメス、アフリカのトリックスター神話、古代インドの黒き英雄神クリシュナ、アメリカ・インディアンの道化集団など世界の民俗に分け入って、博引旁証、縦横無尽に議論を展開する。文化英雄としての道化の本質を明らかにし、一九七〇年代の知の閉塞状況を打破した記念碑的著作。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと平面的。やっぱり海外の本の方が面白いかも。

  •  第1章から第4章までは1969(昭和44)年に雑誌に連載され、それに1970年に発表されたものを第5章として加え、単行本としては1975(昭和50)年に発行されたもの。山口昌男さんの著作としては、わりあい早期に執筆されたものと思われる。特に1章から4章は長編の論文として連続性をもって仕上げられている。
     まず特徴的な「道化」として、イタリア16世紀頃のコンメーディア・デラルテに登場する「アルレッキーノ(=アルルカン)」が取り上げられ、ギリシャ神話のヘルメス、アフリカのエシュ、インド神話のクリシュナを中心として論じられる。
    「道化」と「トリックスター」はもちろん別々の概念だが、山口氏の思考においては両者はほとんど重なり合っているようだ。
     トリックスターとしてのヘルメスについてその特徴を簡潔にまとめたリストが載っていて、これはアフリカ(ナイジェリア)ヨルバ族のエシュのふるまい・機能ともかなり重なっているという論点である。

    <(A)小にして大、幼にして成熟という相反するものの合一。
    (B)盗み、詐術による秩序の擾乱。
    (C)いたるところに姿を現わす迅速性。
    (D)新しい組み合わせによる未知のものの創出。
    (E)旅行者、伝令、先達として異なる世界のつなぎをすること。
    (F)交換という行為によって異質のものの間に伝達(コミュニケーションを成立させる。
    (G)常に動くこと、新しい局面を拓くこと、失敗を怖れぬこと、それを笑いに転化させることなどの行為・態度の結合。>(P.233)

     いま私は音楽活動における自分の立ち位置を考え直すためにトリックスターについて勉強しているところだが、まさにこのリストが分かり易い手がかりとなった。芸術分野においてトリックスターを演じるためには、特に(D)の、異質なものの組み合わせによって新しい意味を生成しなければならないという部分が、最も肝要であろう。
     本書は連続的に展開される道化/トリックスターに関する長編の論考として、私には得るものの多い、貴重な書物だった。

  • 道化は、日常での秩序や概念を転化させることで真の「世界」へ橋渡しをしてくれる

  • 佐藤優が、田中真紀子はトリックスター(騒動師、文化人類学)だと言っていたこと、最近の「トランプ氏」のばかばかしく見える発言がやたら人を引き付けることの原因が「道化」にあるのでは?と思い、本書を読んだ次第。(つまみ読み)

    結果、知りたいことと書いてあることは違った。

    が、道化についてここまで深く研究し考察している人が存在していることに感動。

    世界的に道化は乞食・不具者の体裁をとることが多く、それはそれらの人々が、俗人の世界と神の世界の境界に住む者として、一種の恐れ・一種の羨望・一種の尊敬を持たれるからだという分析が興味深かった。

  • [ 内容 ]
    エロスと笑い、風刺と滑稽に満ちた祝祭空間で演じられる“道化”の意味は何か―コンメーディア・デラルテの主人公アルレッキーノや狂言の太郎冠者、中世劇の悪魔と道化、ギリシャ神話のヘルメス、アフリカのトリックスター神話、古代インドの黒き英雄神クリシュナ、アメリカ・インディアンの道化集団など世界の民俗に分け入って、博引旁証、縦横無尽に議論を展開する。
    文化英雄としての道化の本質を明らかにし、一九七〇年代の知の閉塞状況を打破した記念碑的著作。

    [ 目次 ]
    第1章 アルレッキーノの周辺(コンメーディア・デラルテ『二人の主持ちのアルレッキーノ』;科白とマイムの意味論 ほか)
    第2章 アルレッキーノとヘルメス(アルレッキーノの起源論;アルレッキーノの民俗 ほか)
    第3章 アフリカ文化と道化(社会構造と道化的行為;演劇的行為としての「ジョーク」 ほか)
    第4章 黒き英雄神クリシュナ(始原児クリシュナ神とヘーラクレース;クリシュナ、ヘルメス、ヘーラクレース ほか)
    第5章 アメリカ・インディアンと道化の伝統(蘇るインディアン;道化と想像力 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 『読書の軌跡』阿部謹也より

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著者プロフィール

1931年生まれ。東京外国語大学名誉教授。2013年没。

「2018年 『仮面の道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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