精進百撰 (岩波現代文庫 文芸 25)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006020255

作品紹介・あらすじ

私は、米塩の資とし、山菜と畑の作物を喰い、心臓を病みつつ、八十の坂を登ろうとしている-突然に襲った心筋梗塞。長期入院からの回復の日々、信州の山居暮らしで目をひらかれた精進料理の世界。土と遊び、畑と相談しながら調理した数多くの料理のなかから、百点を選び、レシピ、カラー写真とともに紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • ≪内容≫
    著者が仏門で徒弟をしていた経験から、その思想を温めながら素材を大切にした精進料理を紹介する。

    ≪感想≫
    前書、本書、後書の3部構成になっており、前書「典座修行」では、著者が70歳で心筋梗塞を患ってからの山での生活と小僧時代の回顧や仏門の教えが書かれている。読者にとっては料理や素材に関する典座修行とまではいかないものの、つらつらと書かれた前書からは著者の人となりが十分に読み取れると思う。

    本書の「蔬食三昧」ではカラー写真とともに精進料理100撰が簡潔な文で紹介されている。一般的なレシピ本と異なるのは、細かな調味料の分量などが記されているわけではなく、作り方というよりもその一品一品と、その素材の面白さを説いた本である。読み物として面白いので、たまに開いて眺めるというのもいいかもしれない。

    著者の生活は質素ではあるが、僕にとっては非常に魅力的で贅沢な生き方であると思う。そしてその生活の基本が食にあることは誰が読んでも明らかである。肉や魚でなく、たまには野のものだけの蔬食も大切にしながら、著者のような生活に少しでも近づけたらと考えている。

  • 「土を喰う日々」という本が好きだったので、こちらは手にすることがなかった。なかなかに沁みるいい本だと思う。砂糖をよく使うのが私には馴染めない。
    料理に関する本は世の中に山のようにあるけれど、その中にあって、この本は出色の出来と言える。料理のことを書いている本で素材についてきちんと書いている本のなんと少ないことか。素材なくして料理の話をすることは実際、あり得ない。この本はこの素材というのがあって料理を書いている。当然と言えば当然だが、そこが沁みる。
    さらに自身の料理をとても気に入っているのがよく判る。だから断定の表現が多い。そこもいい。謙遜ではなく喜びを語っている。気持ちがいい。

  • 私は,米塩の資とし,山菜と畑の作物を喰い,心臓を病みつつ,八十坂を登ろうとしている−突然に襲った心筋梗塞.長期入院からの回復の日々,信州の山居暮しで目をひらかれた精進料理の世界.土と遊び,畑と相談しながら調理した数多くの料理のなかから,100点を選び,レシピ,カラー写真とともに紹介する.

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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