花と龍 下 (岩波現代文庫 文芸 101)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006021016

作品紹介・あらすじ

時代は昭和へと移る。金五郎は若松市会議員となり、すでに押しも押されもしない貫禄の親分である。しかし波止場の近代化の陰に、吉田親分との因縁の対立は徐々に深まる。マンと彫青師お京、金五郎をめぐる女たちもしのぎを削る。明治から昭和戦前に至る北九州若松を舞台に展開するロマンティシズム溢れる波乱万丈の物語。完結。

感想・レビュー・書評

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  • あとがきで、火野葦平が文中の勝則であり、自分の父親と母親のことを書いたと述べている。1952年の出版であるので70年以上も前であり、読売新聞への連載ということで、読者も共感が強かったと思われる。主人公の金五郎は小説のなかでは襲撃は受けたものの死ななかった。よく私小説として自分の親に関してこれだけのものが書けたものである。
     読みやすくすらすら読んだ。文庫版でも地図を付けてくれたらもっといい。

  • 中村哲さんのことを知るうちに、こちらの小説に辿り着きました。仲仕やゴンゾなど、聞きなれない言葉や方言で少し戸惑いましたが、まっすぐな生き方には惚れ惚れするほど惹き込まれました。見た目や身分で判断しない、そして非暴力の闘い。自分に恥じない生き方とは何かと問われます。

  • 上巻から時代を経て、昭和初期。金五郎は北九州・若松で既に市会議員。妻マン、そして長男の勝則(葦平自身)たちの博徒世界での活躍。文字通り半殺しに会ったり、犯罪一歩前の脅しをするなど命を賭けた日々である。金五郎の永遠の恋人ともいうべき江戸のお京、そしてその娘・お葉とマンとの駆け引きはその息子が書いているだけに興味深いものがある。次女秀子とその夫・中村勉が登場する。中村哲の両親だ。哲氏の肝の据わった姿に納得である。

  • 日野葦平の両親の半生を描いた話。
    中村哲の祖父母にもあたる人物であり、非暴力と土壇場での肝っ玉は、この家系に脈々と流れる血なんだなと感じることのできる内容。
    ゴンゾとして生き、ゴンゾのために生きた夫婦。この二人が言う、「職業に貴賤はない」という戒めは、説得力がある。

  • 火野葦平の父親を主人公とする伝記小説の下巻。金五郎も仲仕の親分となり、ゴンゾの生活を守るために東奔西走する。あとがきで著者の火野葦平は一時マルクス主義に傾倒したことがあると本人が書いているが、火野葦平の小説は底辺の人々に温かい視線を送るようなところがある。
    恋愛もあり、一家のサーガのような側面もあるが、全体を基調とするのは任侠映画のような対立する組織同士の抗争である。金五郎があくまで暴力に頼らないで解決しようとするのも任侠物と似通っている。(任侠物は最後は大抵暴力で解決するが)。この小説は昭和二十七年から二十八年にかけて読売新聞に連載されたそうでその後石原裕次郎主演で映画化されている。今では古臭いような血の気の多い仲仕の抗争が当時の日本人にはうけたのだと思われる。火野葦平は戦争を賛美したと言われ最後は自殺してしまったという事だが、このような筋を通す生涯をおくった金五郎の息子がそのような運命になるとはなんともやりきれない。

  • 下巻もいろんな展開があって面白かった。中村哲さんは、こういう人達に囲まれて育ったんだなぁ。

  • 2014年北九州の若松にサイクリング行ったのがきっかけでこの本を購入。大変面白かった。読書後にビデオも見たがやはり火野葦平の筆力にかなわない。上下巻とも面白い。

  • 任侠ものかと思っていたけれど、労働者階級の地位向上に務めた男性に関する社会派の小説だった。
    ミニシアター系の映画が好きな人なんかにおすすめ。
    文章も上手いので、サクサク読めておもしろかった。

  • 九州などを舞台とした作品です。

  • んで、3時間で読破。まぁ面白かったが、オチらしいオチがないのは、伝記的小説やからかなぁ。明治昭和の石炭積み込み労働者の様子が少しわかって興味深かった。
    しかしまぁ、岩波現代文庫とはなぜにこうも高いのか。。

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著者プロフィール

1907年1月、福岡県若松市生まれ。本名、玉井勝則。
早稲田大学文学部英文科中退。
1937年9月、陸軍伍長として召集される。
1938年『糞尿譚』で第6回芥川賞受賞。このため中支派遣軍報道部に転属となり、以後、アジア・太平洋各地の戦線に従軍。
1960年1月23日、死去(自死)

「2016年 『青春の岐路 火野葦平戦争文学選 別巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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