- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006021894
作品紹介・あらすじ
米国統治下の沖縄で日本人、沖縄人、中国人、米国人の四人が繰り広げる親善パーティー。そのとき米兵による高校生レイプ事件が起こり、国際親善の欺瞞が暴露されていく-。沖縄初の芥川賞受賞の表題作のほか、「亀甲墓」「棒兵隊」「ニライカナイの街」そして日本語版未発表の「戯曲 カクテル・パーティー」をふくむ傑作短編全五編を収録。
感想・レビュー・書評
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沖縄を舞台に、人々が戦争や米軍、本土とどう向き合ってきたかを描いた小説。短編の連なりで、相互に関係はしてないけど、様々なタイムシフトの中で米軍への向き合い方が変わってきたことを感じました。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759368 -
本土復帰前のアメリカ統治下の沖縄が舞台。役所勤めの「私」は、アメリカ人のミラー、中国人の弁護士の孫、そして本土出身の新聞記者の4人で中国語の研究会をやっていた。設定が沖縄らしい。
アメリカ人のミラーは、諜報部員で情報収集のために中国語研究会をやっていたのだった。ミラーの招待で、米軍基地の中の自宅のパーティに招かれた「私」は、米軍基地に招かれることが自分のステイタスがあがったように感じていた。アメリカ人の子供が行方不明となり、私と孫で基地内をその子供を探す。基地内のアメリカ人は、そのことに協力してくれた。子供が見つかった。ここまでは、「私」という主人公。
ところが、「お前」に主人公が変わる。私からお前への転換が巧みな物語となる。客観性を持たせる。お前は、家に帰ったら、家の離れを米兵ハリスに貸していたのだが、その米兵が、お前の高校生の娘がレイプされたことを知る。しかし、娘はハリスを崖から落とし、傷害罪で捕まっていた。私は、憤りを隠せなかった。そして、娘が家に帰ってきた。
「お前」は三日三晩悩み苦しんだ後、告訴することを決意し、娘にそのことを告げる。しかし、娘は強く反対する。
お前は、そのことをミラーに頼むが、ミラーは拒絶する。中国人の弁護士の孫に依頼するが、孫はやんわりと断る。とにかく、ハリスから事情を聞くことは了承を得た。ハリスは合意の上だと主張する。お前は、告訴をしないことを決める。
『友好と親善』というのが、うわべだけだったことを知った。そして、孫と話をしていると、孫も戦争中に、妻が日本人にレイプされたことを語る。その痛みが、つながるが、どうしようもない壁にぶつかる。果たして、お前はどうするのか?
沖縄の少女レイプ事件を思い出させるが、日本の侵略の歴史も重ね合わせることに、独特の物語として成り立つ。怖くて、恐ろしい物語であるが、沖縄にアメリカ軍基地が有る限り、その事件は起きるという事実が想定できる。いい作品だ。 -
【書誌情報+内容紹介】
著者:大城 立裕[おおしろ・たつひろ](1925-2020) 小説家。
解説:本浜 秀彦[もとはま・ひでひこ](1962-) 比較文学、メディア表象論。
通し番号:文芸189
刊行日:2011/09/16
ISBN:9784006021894
版型:A6 322ページ
米国統治下の沖縄で日本人,沖縄人,中国人,米国人の四人が繰り広げる親善パーティー.そのとき米兵による高校生レイプ事件が起こり,国際親善の欺瞞が暴露されていく――.沖縄初の芥川賞受賞の表題作のほか,「亀甲墓」「棒兵隊」「ニライカナイの街」そして日本語版初公表の「戯曲 カクテル・パーティー」をふくむ傑作短編全5編を収録.
◆編集部より
小説「カクテル・パーティー」は,1967年に著者が沖縄出身の作家として初めて芥川賞を受賞した記念すべき作品です.それは,
“米軍統治下の沖縄を舞台にし,米軍属に暴行を受けた娘を持つ主人公が,不利だと分かっている裁判に事件を訴えることを決意するまでの展開を描いた物語である.そのテーマ性と,沖縄の近現代史が重層的に織り込まれた物語は,九五年の事件をはじめとした数々の基地被害をほうふつさせるだけではなく,依然基地の重圧が押し付けられている沖縄をめぐる複雑な政治状況をも浮かび上がらせる.その意味においてこの小説は,決して単なる古色めいた「古典」にはなることはなく,同時代的な緊張を読む者に強いてくる.”
――本書「解説」(本浜秀彦)より
本書には,この戯曲版を初めて収録しました.英語に翻訳された戯曲は先月,Living Spirit: Literature and Resurgence in Okinawa という本に収められて刊行されましたが,そのもととなる日本語版は未発表でした.詳しい経緯は著者の「文庫版あとがきに代えて」をご覧下さい.
本書所収の他の短編小説「亀甲墓」(66年),「棒兵隊」(58年),「ニライカナイの街」(69年)と併せてお読みいただくことで,現代の沖縄をめぐる諸問題を考える手掛かりになれば幸です.
〈https://www.iwanami.co.jp/book/b256162.html〉
【目次】
目次 [iii]
亀甲墓〔かめのこうばか〕 実験方言をもつある風土記 001
棒兵隊 067
ニライカナイの街 091
カクテル・パーティー 147
戯曲 カクテル・パーティー 231
戯曲「カクテル・パーティー」の成り立ち――文庫版あとがきに代えて――(二〇一一年八月 大城立裕) [301-303]
解説 本浜秀彦 [305-317] -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759368 -
芥川賞受賞作を読み進めているが、出来事の羅列だけにしか思えなかった。本作のどこに人間が描かれているのか全くわからず。
同じく米軍などが出てくる『アメリカンスクール』などとは雲泥の差