不当逮捕 (岩波現代文庫 社会 10)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030100

感想・レビュー・書評

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  • ジャーナリズム精神を美化することなく、ひとりの新聞記者の人間味あふれる生涯が語られる。そこに本来庶民のためにあるべき検察や為政者の謀略や保身によって正しい情報が隠蔽される愚行が露呈する。そのスクープの核心にあるのは正義か、それとも倫理の崩壊なのか、人の心の弱さが様々な観点から考察されていく。あまりに切ない世情は現在もなお様態を変えながらも存続している。私たちは知る権利を決して放棄してはならない。権力に追従するのは良識ではなく無分別な隷属でしかない。

  • すごい本。出版された時に読みたかった。検察の内部抗争、検察の圧力に対する読売の弱腰。そして立松記者自身の資質、時代背景。これら一体となって不当逮捕を生み出したのだろう。後輩の作者しか書けない書物である。

  • 1

  • よしのぶちゃん事件を題材にした「誘拐」と同じ著者だったので。

    かなり読むのがつらくて時間がかかってしまった。
    というのも、内容に全く興味がなかったので。
    政治がらみの検察局の派閥抗争に巻き込まれる形で、
    読売新聞社の記者が逮捕されたという事件。

    疑獄や検察内部の対立や、政治とのからみも全く興味がもてなかった。
    記者や検事たちの人となりやエピソードは面白かったが。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/400603010X
    ── 本田 靖春《不当逮捕 20000316 岩波現代文庫》講談社文庫
    http://sinkousya.exblog.jp/11176975/
     
     本田 靖春 読売新聞記者 19330321 京城 東京 20041204 71 /

  • 立松和博という読売の司法記者が,スクープ記事を書きまくっていたのだけれど,昭和32年頃,政治家の売春疑惑を報じて名誉毀損により不当逮捕された話のノンフィクション・・・ではあるけれども,当時の検察組織の内部抗争の話や政治情勢など,周辺部分も興味深かった。
    逮捕に関しては、読売の1日の沈黙ののち、全新聞が「言論の自由への不当な制圧」として反対記事を書いて、勾留請求が却下されることで、立松記者は釈放されるんだけども、筆者によると、読売が自分を裏切ろうとしたことを後で知ったことをきっかけに、さらに、読売も、立松の報じた売春疑惑は誤報という立場をとり、立松を懲戒休職に付し、麻薬に溺れ、死んでしまう…。
    人をつかむのがうまいそうで、大酒飲みの上、覚せい剤を打って夜回りをしてアルコールと睡眠薬でつないで、女遊びも激しくて・・・、こんな新聞記者では妻もたいへんだ。
    ある友人の親族の話もかなり出てきて,すごい人だったんだなと分かった。

  • 再読本。
    本田さんの話が飛んだり、挿入話が長い部分はいつものことだが、本書はやはり最高傑作。その挿入部分の話も抜群に面白い。
    立松和博という読売の新聞記者。
    スクープ連発というが、その人心把握力の行動はすごい。
    相手に一服勧めるにはライターよりマッチとか、気に入った女性がいればどんどこものにするのところなど、これまた豪快。
    結果として検事側の派閥争いのとばっちりのような感じで、逮捕~何となく閑職への処遇。
    やはり、非難されるべきは読売本社。
    泥酔した立松の言葉「運ちゃん、読売はひどい会社だぞ。俺を助けてくれなかった」。
    あれほど権力と闘ってきた氏がこのような言葉を出してしまうこと、それだけ会社を好きだったのかということ、また会社に対しての依存があったこと、厳しく言えば甘え、に人間の弱さを感じてしまう。

  • 2007年64冊目

  • これほどまでに、激しく熱く、汚濁共々を生きいきと生きようとした新聞社の社会部記者がいたとは。読売新聞記者・立松和博 http://brains.te.chiba-u.jp/~itot/work/genius/g6/tatematu_btm.htm である。
    売春防止法が成立しようとしていた前夜、赤線業者から二人の代議士が収賄容疑がかかっていると検察庁幹部から聞いた立松は、「立件へ」とまだ、逮捕になる前にリーク情報を報道したのだった。
    彼は、そのような情報を掴んでは社会的スクープを次々と発表したのだが、その背景には時代の移り変わりを予期するような問題があった。だが、その両代議士の「立件」が確定される前から報道したツケは、立松本人に対しては両代議士による「名誉棄損」として、新聞社に対しては検察による「ネタ元」を明らかにせよという圧力とであった。
    立松は逮捕され、「ネタ元」を明らかにすれば起訴は無いと圧力をかけられたが拒否しつづけ、遂には釈放。当時の言論界を揺るがすこのような検察庁の対応に、新聞社やマスコミ、労組が「言論の自由」に対する挑戦として大々的に世論を喚起したものでもあった。
    後の読売新聞社の対応が注目されることになった。時の読売新聞社社長正力松太郎は、両代議士と手打ちを行い立松を起訴しない代わりに、記事そのものを取り下げてくれという取引を飲むという判断を行う。両代議士の意向を受けた読売新聞は、記事訂正のお詫びを発表し、立松記者の事実上の懲戒である「休職」処分として、左遷してしまったのだ。
    政治と検察、マスコミと権力内部の駆け引きを含めて当時の激動の時代が改めて分かる現代史としても本書は読みごたえがあるだろう。
    本田は立松という記者、時代のなかで生まれたこのようなサラリーマンの枠におさまらない時代のヒーローをこよなく愛していたことも本書を通読すると良くわかるものだった。

  • ¥105

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著者プロフィール

1933年、旧朝鮮・京城生。55年、読売新聞社に入社。71年に退社し、フリーのノンフィクション作家に。著書に『誘拐』『不当逮捕』『私戦』『我、拗ね者として生涯を閉ず』等。2004年、死亡。

「2019年 『複眼で見よ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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