食と日本人の知恵 (岩波現代文庫 社会 52)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030520

感想・レビュー・書評

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  • 【目的】日本で培われてきた調理方法の歴史や保存食など発展してきた食が知りたくて

    知らないことがとてもコンパクトにまとまっている一冊。くりかえし読んだり、自分でも実際につくってみたいと思うものもある。

    ♧梅干しは、元気回復、風邪、食あたり、夏まけ、つわり、頭痛につかわれてきた
    ♧ごぼうの繊維素は水の吸収がよく、膨張して腸内の掃除に一役買う
    ♧全粥は米と水を重量比で1:5にして炊いたもの、七分粥は1:7、三分粥は1:15など汁粥には名称がある
    ♧日本人は歴史上獣肉を嫌う風習が長くあった
    ♧日本人の食は塩に支えられてきた
    ♧がんもどき、のような食べ物は、本物が持ち合わせていない部分を補うためにつくられている
    ♧インスタントラーメンはアメリカの余剰小麦粉の利用法のひとつ
    ♧糒(ほしいい)や焼米、懐中汁粉などの即席食が重宝されていた
    ♧干し椎茸にすると貯蔵性が高くビタミンDが乾燥の際に生成される
    ♧小豆は日本人のみ好む豆
    ♧パスツールの殺菌法:アルコールや有機酸が液中に存在していれば、低音の加熱でも効果が得られる
    ♧漬け床をぬるま湯に溶いて飲んでいた
    ♧小麦粉を甘酒でこねた生地を一晩寝かせて焼いていた
    ♧あんぱんは粒食主食型の生活に粉食の導入となった
    ♧納豆には「塩辛納豆(寺納豆)」と「糸引納豆」がある
    ♧寺納豆は、煮た大豆に麹菌を繁殖させて大豆麹をつくり、これを塩水に浸して3〜4ヶ月放置したのち乾燥した物
    ♧日本には、長期間熟成させる食べ物が多い→日本酒、醤油、味噌、鰹節、漬物、梅干など
    ♧熟酢の酢から整腸作用によい菌やビタミンを得られる
    ♧日本では麹、酒粕、もろみなど固体の発酵漬け床がつかわれる
    ♧すべての新鮮な食べ物は、加工するほど栄養素を失う
    ♧日本人はひとつの材料をつかって多くの食べ方をもっている。例)大根:おろし大根、煮大根、漬物、大根飯
    ♧日本人は料理に「かくし味」のような秘密の味づけを大切にしているため、同じ料理でも場所によって味が違う
    ♧おいしさの定義:食べ物の風味、食感、温度、視覚、音などの「食味」、雰囲気や気温などの「外部環境」、食文化や習慣などの「食環境」、心理状態や健康状態などの「生体内部環境」により決まる
    ♧天ぷらの衣のつくりかた:薄力粉(グルテン10%以下の)、鶏卵(黄身白身をよく混ぜる)、水を35:15:50であらく混ぜる。5人分で180gくらい
    ♧麺や漬物など音でも味わう食べ物が多い
    ♧日本の文化は水との関わりが多い
    ♧新米では、米と同量か1割増、古米では2.5割増し、ふつうではれば2割増しくらいの水を入れて炊くと良い
    ♧日本で生まれ育った嗜好品をつくる際の専門用語は数1000にのぼるほど多い(薬味、照り、笹掻など)
    ♧味噌に含まれるビタミンやミネラルは日本の粗食生活を大いに助けた
    ♧江戸末期に消えた「酒道」という酒を通した精神の統一や修養をめざした作法があった。

  •  日本食というと色どりが鮮やかでとても素敵だし、見た目とは違った素朴な味付けがまた魅力的な料理だ。
     そんな料理に秘められた様々な工夫と知恵が記されていて、読み終わった後に心地よい「賢くなった感」に浸れる。

     そして、ちょっと書いてある内容を試してみたくなる。
     とても良い本だと思った。

  • 〔「知恵の食事学」(サンケイ出版 1987年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40002408

  • 実に面白く学びとなる、日本の食についての教養書。
    四方を海に囲まれ、四季の移ろいがはっきりして、水清き日本。魚介も茸も数百種類を自在にし、黴を利用して鰹節を、麹の力で酒を作り出して、世界に類を見ないという。礼讚が過ぎないか…とも思うけど、もともと80年代の新聞コラムをまとめた本なので、まあまだ昭和の心意気と思えば納得。
    日本の食はすべてが水を基本としていること、江戸末期までは華道茶道のごとき「酒道」があり、公家武家商家それぞれの流派で礼儀作法を身につけたこと…など知らなかったことのオンパレードで、楽しみつつ勉強になりました!

  • 学生時代

  • ありとあらゆる日本の食べ物の、礼賛。ツバが溜まるように書いてある。

  • 一部よいしょしすぎなのはご愛敬。
    (でも一部著者の本では本当に厳しい論調のあるのよ
    こっちは普段の先生ね)

    今は食の多様性で
    なかなか真剣に日本の食べ物を
    味わう機会が減っているおうちも少なくないと思います。
    私の場合は比較的恵まれているかな。
    パン食あまり好きじゃないからなぁ。
    (理由は単純、菓子パンのあのカロリーは無理よ)

    やはり発酵の力は
    なんだかんだで身近だなと思います。
    納豆もそうだし、
    私には縁がないけど焼酎とか、
    日本酒だってそうだからね。

    なんかもっと色々食べてみたくなりました。

  • 7/6読了

  • 日本の食べ物についての小話集。ねちゃねちゃ、とか発酵系の描写が独特で、読むとつばが出る。

  • [ 内容 ]
    梅干、湯葉、納豆、蕎麦、鰹節…。
    日本人が創造した食べ物は。香り、色。かたち、食べる音までがおいしい。
    しかもすべて理にかなっている。
    読むうちに日本人の知恵に得心がいき。楽しい蘊蓄に食欲も増す極上の1冊。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 古来の日本人が生み出した食に関する知恵や工夫などは成る程と頷くばかり。

    ひと手間やふた手間を加えた調理方法や、美しい皿に盛られた料理の数々。

    山紫水明の国が生み出した食に対するこだわりと伝統。

    和食が世界無形遺産になったのも納得。

    美味しい和食が食べられる日本人に生まれてきて良かった!

  • "よく、「中国人は四本足なら、机以外のものは何でも食べてしまう」という譬話がある。実際、広東料理では蛇や猿、穿山甲、犬なども名物料理にしているほどである。その広東料理の材料を克明に数えた人の記録では、約八百余種あったという。ところが、同じ方法で今度は日本人の食材を調べてみたところ、百五十種の貝類、二百種に及ぶ魚、十五種の哺乳動物、八十種の鳥類、二十五種の昆虫、百種を超える海草類、多種の野菜や果物、穀類、豆類など実に千二百余種に及ぶ材料があったという。もしかしたら、わが日本人は、世界一何でも食べる民族なのかもしれない。"

  • この本の著者、小泉武夫氏は発酵学者ということを浅学なもので知らずにいた。道理で詳しいわけだ。
    最近は書店に行くと麹や発酵に関する本がよく並んでいるが、この本を読むと、まずはいかに日本の食事と発酵が関連しているのかということがよくわかる。納豆は勿論、鰹節やなれずしなど、発酵の技術を使った料理が日本では豊富、そして栄養学的にもよく考えられているということも。
    また、ねりものや煮物といった調理方法や、だしやうまみについても、我々の祖先が深く考え、試行錯誤を繰り返しながら洗練させていったということも詳細に記述されている。個人的には、天ぷらの概念が東西で違っていたということが興味深かった。
    そして、何よりも日本の食材の多さをこの本を読んで改めて知った。よくこんなもの食べるなぁ、というものが他国にもあるが、やはり日本にも多い。ナマコやホヤを生で食べる国は確かになかなかないだろうし、最初食べた人はやっぱり凄いわなぁ…。
    先に読んだ本と同様、2-3ページのエッセイが延々と綴られているのでなかなか頭には入らないが、何気なく食べているものについて考えるきっかけにはなると思う。
    余談であるが著者の名前を検索してきたときに出てきた会の名前と活動が興味深い。
    食に命を懸ける会
    http://www.shoku-inochi.jp/index.html

  • 日本人の主に伝統的な食事にみる、日本が誇るべき独自の文化を、これでもかこれでもかと紹介した本。
    文書からして、この人は食べることが好きなんだろなー、と伝わってくる。美しい、美味しい和食を前に、どれたけ嬉しそうにしたか、まるで目の前にいるかのように分かる。
    そして、日本を愛し過ぎていることも。。。確かに、日本人は独特の文化を持っていることは確かですけど、そんなに力を込めて賞賛の嵐なのは、照れる。てか、クドい。またそれか。
    でもまあ、本当に昔の人は科学の知識もないのに、よくぞこれだけの食品を作ったものだ。クサヤなんか、どうして食べられると思ったか、不思議でならないが。。。これがまた、うまいんだな。

  • 図書館に在庫なし。

  • 発酵学者小泉武夫先生の著作は、その薀蓄までが美味しい。
    小泉先生の著作は、栄養学、化学、民俗学、博物学等、利用できる学問的知見を総動員しつつ、つまるところ「美味いものを食べることの快楽」をめぐって書かれている。
    だから、薀蓄までが美味しくなる。

    ほんとうに美味いものを食べると、からだの奥底からじんわりと悦びが広がってくる。
    しあわせってのはこういうことだったか、とそのたびに実感する。
    小泉先生の著作を読むと、いつも、その、美味いもので腹を満たした食後の幸福感を思い出す。

    任意に一箇所引用する−『垂汁。「たれ」と読む。煮物や焼き物に用いる、味の濃い調味料のことである。もともとは、味噌や醤油の原型である「味醤」の垂れた汁から始まった言葉で、「味噌タレ」「生タレ」などの語があり、また醤油の元祖ともいうべき「たまり」(大豆のみを原料とした色と味の濃厚な醤油)という名は、「タレの溜まったもの」の意を持つ。
    鰻の蒲焼の匂い。あの食欲をそそる匂いは、鰻の脂と身とタレとが、火に焙られて、焦げたものである。
    従って、鰻の開きだけを焼いて出るという簡単な匂いではなく、これにタレをつけて焼く時のみ発生する芳醇さを持った匂いである。日本人好みの焼き物にタレがいかに必須で重要な役割を果たしているかが、発生する匂いからもよくわかる。』

  • 小泉武雄先生の本、是非読んでみたい。

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著者プロフィール

小泉武夫(こいずみ・たけお):1943年、福島県の造り酒屋に生まれる。東京農業大学名誉教授。専門は醸造学・発酵学・食文化論。専門的な話を、分かりやすく伝える達人。また食の未来を中心に、日本が抱える多くの大問題に挑んでいることから、「箸(★正字)を持った憂国の士」と評される。140冊を超える著作があり、小説も『猟師の肉は腐らない』、『魚は粗がいちばん旨い』など、専門的な知識に裏付けられた独自の作品が多数ある。


「2023年 『熊の肉には飴があう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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