人生の四季に生きる (岩波現代文庫 社会 159)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031596

作品紹介・あらすじ

自然界に咲く花のように、私たちの人生にも春・夏・秋・冬の四季が訪れます。思わぬ困難もあるでしょう。しかし、いかに自分らしい花を咲かせられるか、挑戦できる人は幸いです。内科医として多くの患者の生と死に寄り添った著者が、人生の四季における、生の喜び、仕事と幸福、病い、老い、そして死について語ります。

感想・レビュー・書評

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  • 人生の四季に生きる
    著:日野原 重明
    岩波現代文庫 社会159

    東京大空襲で病院に収容することもなくみとった経験が聖路加病院を築地の野戦病院化する発想に繫がる
    日本の医療に、予防保全、緊急医療を持ち込んだ先見性
    よど号事件の体験
    地下鉄サリン事件での病院を解放しての奮戦
    日本の医療を変革してきた日野原先生が人生を1度限りの四季をみなして綴ったのが本書です

    人の死に接してきたその姿は厳しく、そして深い想いに包まれていました。

    ・日本人は太古から四季を友にして生きてきました

    ・日本の国は、世界の他の国々に較べれば、文明の囲いを一歩出ると、春夏秋冬の四季の移り変わりがことのほか美しく、自然から与えられるこの季節感は日本人の心をまだまだ豊かにしてくれます。

    ・四季に咲く自然界の花のように、私たち人間の人生にも、春、夏、秋、冬の四季が訪れ、若葉は緑濃くなった後は、紅葉また黄葉し、間もなく散っていきます。

    ・ゲーテは、人生に花を咲かせよ といっていますが、これは健やかな人だけに言っているのではなく、心の中の花を意味していると思います。

    ・人生には一回かぎりの四季がある

    ■春

    ・戦前に齢若く、人生の春に散っていった病人の数に比べると、戦後に亡くなった大部分の人は少なくとも人生の秋まで生き延びることができた病人でした。
    ・医師としての私は、幸福な人よりも、むしろ、悲しみや悩み、問題がある人々に多く出会いました。
    ・自分だけが苦しい、自分だけが悩んでいる、なぜ自分は悪いことをしていないのに、このように苦しまなければならないのかといって私に助けを求める患者さんに出会った時私はよく申してきました。
    ・人間は罪を犯さなくても、間違ったことをしなくても苦しい体験を受けざるを得ない時があります。そのようなことは、あなただけに起こるのでありまえん。苦しみや悩みのレベルは違うにせよ、大多数の人は大なり小なり苦難を負っていきているのです。病気や交通事故もその1つです。

    ・人生は4つの誕生があります
      個体の誕生:子供が生まれる
      自我の誕生:青春期
      社会的な人間への門出:成人
      自由人としての自我の誕生:定年後の最後の時期

    ・人間が齢をとって最後に老化するという状況は、人間の宿命として受け入れなければならないものだと思います。

    ・仏教での生死一如。生きることが死ぬことだと言っているのです

    ■夏

    ・人の幸福には仕事が大きく関与しているのが常である。人は仕事をもって働くことによって生きがいを感じ、それがその人の幸福感につながる場合が多いのです

    ・自分を満足させるもの
     趣味をもって生きる仕事をしたいということ
     その仕事が世間に必要なもの、役に立つようなものとしたい
     自分を曲げずにできる仕事をしたい
     自分を生かすことが世の中のためにもなる

    ・鈴木大拙先生 90にならないとわからないことがあるから、君も長生きしなさい
    ・ハプニングを経験したとき、それを身に受けとめるか受けとめないかは、私たち自身が選択しなくてはならないことです。
    ・アントニヌス・ピウス大帝 人間が人生の最期、死に直面して一番身につけていなければならないのは、平静の心です
    ・ヘルウィッヒ 不幸そのものに多くの益はないが、それはなお三人の健気な子供を持つ。その名を、力、忍耐、同情と呼ぶ
    ・人が人に与える最高のものというのは、心を与えるということでしょう

    ■秋

    ・ギリシャの数え歌 一番よいのは健康で、次によいのは器量のよいこと。そして三番目は正直に手にいれた財産だ
    ・病気には3つある。遺伝病、そとからの感染、内からの悪い生活習慣によって起こってくる病気です
    ・東洋には古くから心身一如と考える仏教哲学があります。これは心と体は表裏一体であるという考え方です。
    ・私たち医師はいつも、患者に接するときには、その人が心とからだの両面について痛みを感じる、感じないにかかわらず、人間といては病んでいるということを知らなければなりません。
    ・壮年の日からの習慣、からだを使い、頭を使い、心に感じるためのよい習慣形成がなされるべきであります。

    ■冬

    ・世の中は空の空
    ・シェイクスピア マクベス 人とは歩く陰法師、あわれな役者だ
    ・老齢期にいるということは、その人が人生における仕上げの季節に入っていることと考えてもよいでしょう。
    ・人は年齢によって時間の経過する早さが違ってくるというわけです
    ・もしも私たちが老いへの備えができていれば、あるいは突然秋風が膚に感じられるときにも、狼狽したリゾッとしたりする寂しい思いをしないですむのではないかと思います
    ・誰の本のどこが良かったと思っても、どの箇所かはすぐ忘れてしまうので、最近は気軽に手帳に短くノートしておくようにしています。
    ・良寛 裏をみせ、表をみせて散る紅葉


    ■自ら創る

    ・徒然草49段 老い来りて、はじめて道を行せんと待つことなかれ。歳をとってから初めて仏道にを修業しようというようなことはすべきではない、もっと早くからせよ

    ・残り時間を大切にし、人生の無常を心得つつも、与えられた今日の生き方に心すべきだと吉田兼好は説いています

    最後に私が告白したいことは、医師としての私が患者さんたちに与えたものよりも、患者さんたちから与えられたものの方が多かったということです。

    目次
    日本人と四季 まえがきにかえて
    人生の春―生きる喜び
    人生の夏―仕事と幸福
    人生の秋―病む心とからだ
    人生の冬―老いの生き方
    自ら創る
    岩波現代文庫版あとがき

    SBN:9784006031596
    出版社:岩波書店
    判型:文庫
    ページ数:200ページ
    定価:900円(本体)
    発行年月日:2008年01月
    発売日:2008年01月16日第1刷

  • 日野原重明 著「人生の四季に生きる」、1987.6刊行、2008.1文庫化です。人生には一回限りの四季がある(戦禍や事故がない場合でしょうけど)といいますが、英人、心理学者ウィリアム・ジェームズは「人生には4つの誕生がある」と説いたそうです。即ち、個体の誕生、自我(自意識)の誕生、社会人としての社会的誕生、自由人としての自我の誕生の4つ。幼年期、青春期、壮年期、老年期でしょうか。素晴らしい考え方だと思います。誕生ごとに生まれ変わり、新しい春を迎えるということですよね(^-^)

  • 祖父の四十九日の間に読んだ。人生とは、人の命とは何かと考えていた時にこの本に出会えてよかったと思う。人生ずっと春が続くわけではなく四季があること、自分も嵐を経験したからこそ人の痛みに寄り添うことができたという先生ご自身の経験等に元気づけられ、励まされた。また明日から頑張ろう、もっと高次の目標に向かって努力しようと思える一冊。

  • 季節に春夏秋冬があるように人生にも四季があるという日野原先生。冬を生きるためには春夏秋を考えて準備をしながら生きていかなくちゃなりません。なんて楽しいんだろう!先生の膨大な読書量も窺えます。

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著者プロフィール

1911年山口県生まれ。1937年京都帝国大学医学部卒業。1941年聖路加国際病院内科医となる。学校法人聖路加国際大学名誉理事長、聖路加国際病院名誉院長、一般財団法人ライフ・プランニング・センター理事長などを歴任。予防医学の重要性を指摘し、医学・看護教育の充実、ターミナル・ケア(終末期医療)の普及に尽力。2000年には「新老人の会」を結成。1999年文化功労者。2005年文化勲章受章。2010年には国際コルチャック協会名誉功労賞受賞。2017年7月18日逝去。

「2022年 『2023年版『生きかた上手手帳』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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