- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006032166
作品紹介・あらすじ
金正日体制はどのように形成され、現在に至っているのか。金正恩への権力移行はいかに進むのか。本書は金日成時代から現在に至るまでの北朝鮮指導部の動向を徹底的に解明し、謎に満ちた隣国の政治と社会の実像に迫る。歴史的な分析も踏まえて、現状を考察する本書は、私たちの北朝鮮認識をも問い直す。長年、朝鮮半島や中国等で取材を続けてきた著者が書き下ろした渾身の一冊。
感想・レビュー・書評
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文庫本ながら450ページ近い中身の詰まった本。私のような門外漢は消化不良を起こしてしまうが、北朝鮮の統治構造や指導部の顔ぶれについて、価値判断を前面に出すというより(もちろん体制については否定的)、膨大な事実関係を丹念に押さえた上で分析している。「(金正日総書記に)自分の部門の決裁を受ける予定の日には党幹部は夜もおちおち眠れない状況になる…いつ問い合わせなどが入るかわからないからだ」という記述を読み、党幹部に親近感。宮仕えはいずこも大変だ。
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金正日の死がきっかけで脱積読。なかなかの力作で、北朝鮮の現状がわかった気になったが、同時に一次情報が少なくて、平壌に支局を持っている共同通信でさえも、情報に迫りきれないもどかしさも感じた。北朝鮮要人のプロフィールは韓国のネタ本から、金正恩の話は、ここでも料理人・藤本健二から多く引用されている。でも資料的価値大。
筆者は金正日→金正恩は明らかなる世襲だが、金日成→金正日は単なる世襲ではなく、金正日がライバルを退けて手にしたものと書いている。しかし、後継レースへの参戦資格はもともと有していたのだろう。
金日成までは内閣や党のルールに則して統治が進められていたが、金正日時代はまさにそのような手続きを踏まずに、まるで王国のように国を仕切っていたようす。本を読むと、想像していたより金正日がタフな人間に見えてきた。金正日が金日成からポストを剝ぎ取るようにして継承を進めていたとのこと。そこの過程は可能なら、ねだったのか、脅したのか、もうちょっと具体例がほしかったところ。筆者は、反乱事件をでっち上げて国防委員長のポストを受け継いだと推理しているが…。
金正恩に関しては、このところの報道と大差ない。一年前に書かれたことを考慮すると上出来というか、これを読んでいる人が多いのでは。今の北朝鮮は長期間の服喪とか言っている余裕はないのだろう。 -
あらためて、どうしていいかわからないような「国」だ・・・・と感じた。アジア独特の独裁体制なのだろうか。中国のような定年制という英断がなければ、北朝鮮の未来もないのだろうな・・。
著者のものすごい探究心、好奇心のおかげで重要な資料ともなる本です。著者の危惧もまた共有できるものです。 -
金正日が一番偉いのはわかった。後は正直よくわからない。
テポドンは北朝鮮では白頭山1号というのか。
指導部に定年制はない。金正日にとってパルチザン世代は父金日成主席の同志であり、唯一指導体系確立の同志。
金正日の一人独裁体制は、幹部を突然粛清したり、更迭したり幹部への革命化教育を実施したりする一方で、その対象になった人物を再起用することにより、恐怖的な支配構造を確立していること。
そのようなアトランダムに使うことで専制的な地位を強化している。幹部は粛清と恐怖の中で生活せざるを得ず、そこに改革や挑戦という新しい潮流が生まれるのは極めて困難。