子どもと悪 (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 4)
- 岩波書店 (2013年12月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006032579
作品紹介・あらすじ
「いい子」を育てる教育に熱心な社会では、子どもが創造的であろうとすることさえ悪とされることがある。しかし一方では、理屈ぬきに絶対に許されない悪もある。生きることと、悪の関係を考えるのは容易なことではない。「いじめ」「盗み」「暴力」「うそ」「大人の悪」など、人間であることと深く関わる「悪」を斬新な視点から問い直す。
感想・レビュー・書評
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子どもと悪 (今ここに生きる子ども)岩波書店 / 1997年5月20日発売の方を読みました
https://booklog.jp/item/1/4000260642
文庫化にあたり、関連する論考を補論として3本付け加えました.
とあります詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マイッタマイッタ。わたしは物質だけ与えるような親になってないかな、そのうち思春期になったこどもに、逃げずにちゃんと向かい合えるかな。
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子どもと悪
河合隼雄
本書は、いわゆる悪といわれる「窃盗」「自殺」「うそ」「秘密」「性」や、「いじめ」などの社会的な問題も含めて、子どもと親がどう向き合うかだけでなく教育現場や日本社会への問いかけをしている。
親のための本というよりは、この日本社会に疑問を持って、生きづらさを感じる人のための本かもしれない。
谷川俊太郎氏や、田辺聖子氏との対談を元にしたエピソードも含まれていて、面白い。
・盗みはなぜ悪いか?
・人と仲良くしなければ良い子ではないのはなぜか?
・自殺はなぜ悪いのか
・援助交際はなぜ悪いのか
・うそは絶対にいけないことなのか
・いじめはいけません、と言い続けて本当に根本的な解決があると思うか?
『ただ、なんとなくダメっぽいのはわかってる。でも、衝動が抑えられない。』
そんな子どもたちに、大人はどう対峙するべきなのか?
そのヒントが本書にはあった。
わたしはどうだっただろう、と振り返る。
スーパーマーケットで、言えば買ってもらえるのにチョコレートをくすねようとしてみたり。
それが時に本だったり。
性描写の入ってる漫画が面白くて親に隠して読んだり。
少し話を面白くしたくて、小さな嘘をついてのちのち大変なことになったり。
したいわけではなかったけど、援助交際に興味を持って、友だちの話を興味津々に聞いたり。
別に好きでもない人と遊んで、ちょっと怖い目をみたりーーーー
親に言ったら叱られるかも…とドキドキしながらもやっていた、いわゆる"悪"みたいなことが、振り返るとたくさんあるのだ。
もちろんそれらについて、同意するわけではない。危険なことは危険だし、私はぎりぎりで犯罪には巻き込まれず、なんとか不良少女にならずに済んだのだ。
ただそれだけなのだ。
人生を面白くするためのウソと、自分のした悪いことを隠す人を傷つけるようなウソとは別ものだと、本書には書いてあった。
私は、それを知っている。
しかしその具体的な区別を親に教えてもらったわけではない。
自分がウソをついた経験から学んだのだ。もしくは、漫画や絵本の登場人物が、大事な人を傷つけた話を読み、自分ごとに捉えて教訓として残った。
そのような経験がある人は多いのではないだろうか?
本来、おそらく子どもは自ら学ぶことができる力を持っているのだ。それを大人はなかなか信じることができない。大人自身が"自分"を信頼できていないからだ。
子どもの悪を、大人は止めることなどできないし、止めようとすることは、また違う形で"悪"を呼び覚ますきっかけになる他ない。
静観し、時に叱咤し、それでも受け入れ、愛を示す。
言葉で言うのは簡単だが、なかなかそうもいかない。そんな多くの親の葛藤も、本書には具体例もふまえて記載があった。
河合隼雄は言う。
どんな正しいことも、"スローガン"になると硬直する。対立するかのように見える厳しさや優しさをいかに自分という存在の中で両立させるか、その両立の仕方こそ"個性"である、と。
現代人の抱える不安は大きい。
少しの悪をも自分に対して許せぬ気持ちが、子供に向かい、敏感に察知した子供たちは圧力に打ちのめされる。そして彼らの個性は死んでゆく。
簡単に善と悪は切り分けられるものではないのだ。
もしかすると、本当の悪は大人たちの善意の中に隠れているのかもしれない。 -
「悪」とは何か。ただ排除すればいいのかーー。
子どもが抱える悪、対面する悪について分かりやすく書かれていた。
印象的だったのは物を盗んだ子どもの例。
その子が「本当に欲しかったもの」は何かを考える姿勢が勉強になった。
子どもと向き合う時にまた読み返したい。
(子どもと関わる大人だけでなく、かつて子どもだった全ての大人も多くを学べる本です。) -
2019.10月。
小学生になって世界が広がり、社会的なことも必要になるとともに、悪いことも覚えるようになってくる気配がうっすら漂っていたタイミングで目に飛び込んできた本。河合隼雄さんの言葉は厳しくも温かい。悪は子どもの自立の証。大人がしっかりせいと。抑えつけるんじゃなく、愛をもって立ち向かえと。そういう心意気を忘れずに。 -
悪は必要。
思春期に悪を纏うことが、イニシエーションなのだから、それが逸脱しすぎないように見守ること。
それが究極に難しい。 -
悪と創造。
思いもしなかったけど、あったなと思う。
通る道だ。 -
(内容的に)名著だ。これは名著だ。
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文庫で「いじめと不登校」を読んだ。その中で、子どもと悪について触れられていた。たまたま古本屋でこの本を見つけて購入、即読みました。10年以上前に書かれている本だけれど、今でも十分に通用する。私の読み違いもあるかもしれないが、西洋的な考え方をそのまま肯定的にとらえられていることが多い。ヨーロッパでの経験が長いから仕方ないのかもしれないが、ときどき受け入れがたいことがある。特に何がというわけではないのだけれど、感覚的にそう感じる。とりあげられる児童文学が、海外のものが多いからかもしれない。さて、私の経験から。カンニングをする生徒、自己採点をしているときに答えを書きかえる生徒。悪気はないのだと思う。だから、いい点数を取ったと大喜びをする。カンニングを指摘された生徒が母親にそのことを訴え、母親が怒鳴り込んできたこともある。証拠をつかんでいたのだけれど、本人を傷つけないようにとやんわりと言ったのがいけなかったのかもしれない。保護者といっしょに子どもの行動の原因(一つではない)を探したかったけれど、それもかなわず、やめていかれた。他人のものを盗む、隠す生徒。もちろん、そのものがほしいわけではない。相手を困らせようとしているのでもない。全くつきあいのない生徒のケータイをゴミ箱の中に捨てていたりする。あきらかに誰の仕業かは分かっていたけれど、その子に対しては何もしてあげられなかった。そんな経験の中で、本書に書かれた内容に興味を持った。答えが見つかるわけでもないが、子どもの悪は「必要悪」でもあるということ、真剣に向き合っていかなければいけないということ、それくらいは分かった。
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友人に勧められて読んだ本。
出だしから、はーなるほど。そうなのか。
の連発で、社会のことを考えたり、自分のことを考えたり、他人のことを考えたりと、
常に誰かのケースを考えており、とても忙しかったのだけれど、読み進めていくうちに、読み終わるのがもったいない気がしてきてちょっとずつちょっとずつ読み進めていた。
子どもと接すること、ほんと難しいなーと思った。
日常的に子どもと接してる人、これから関わる人、かかわりおわった人、全ての人が何かしらの学びを得られる本なのではないかなーと思う。
はやおさん、すごい。