自分で調べる技術: 市民のための調査入門 (岩波アクティブ新書 117)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007001178

作品紹介・あらすじ

資料を調べる、データを探す、フィールドワークに出る、プレゼンテーションをする-行動派社会学者の情報収集・整理のノウハウ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書が出版されたのは2004年。(手元にあるのは2008年の10刷) 本書の出版当時よりもなおさら「調べる」という作業におけるインターネットの比重が大きくなっていて、それ以外に発想しようがないぐらいにまでなっている人も多いのではないかと思う。

    本書は「資料・文献調査」「フィールドワーク+アンケート調査」「まとめかたとプレゼンテーション」という形で、市民が自ら何かを調べる際に取り得る方法の全体像を解説する。

    「資料・文献調査」としては例えば雑誌記事や論文、書籍、新聞記事、統計データ、インターネットなどの具体的な調べ方やそれぞれのメリットの解説がなされている。具体的な情報源が示されていたり、練習問題がついていたりとリテラシーを高めるための工夫が織り込まれている点も良いし、実際問題として重要だと感じるのはそれぞれの調べ方に「メリット・デメリット」があることを理解することでしょう。

    フィールドワークについてもそうで、アンケート調査がフィールドワークの章の中に含まれているのだが、市民活動団体では気軽にアンケートがなされることが多いが、アンケートは簡単なものではなく、設計を十分にしていないアンケートから導かれる数字は単なる調査もどきにしかならないという点をはっきり指摘します。

    ただ、一方でアンケートの効用についても触れている点が良い。アンケートをすることで意見の多様性やポイントに調査者自身が気付くというフィールドワークの一環としての効果があるということ。これは市民活動団体では確かに必要なことだと感じる。ごく少数の当事者に触れることで始まる活動が多く、それ自体は全く間違っていないが、それを社会課題化するアプローチを取るのであれば、それなりの手順をきちんと踏むべきであり、その手順にはそれなりのしんどさもあるけれど、必要なことだと学ぶことのできる一冊です。

    2020年10月に岩波新書から『実践 自分で調べる技術』という改訂版?が出ているようなのでそちらも読んでみたい。

  • 読了 20210124

  • 社会は複雑になり、決めなければいけない事が一人ひとりではカバーできないくらい多岐にわたるようになり、それにともなって、それぞれの分野にくわしい専門家というポストがつくられ、彼らが決定を下すシステムになってきた。ゆえに、現代において社会を作っているのは、見ようによっては断絶された一人ひとりの専門家の決定である。それを、少しでも市民の手に取り戻したらどうだろう、と著者は言うんですね。自分で自分の社会をつくる、そういった自律性を取り戻すことって、実は大事なんじゃないかということです。僕個人の考えとしても、生活から他律性をできるだけ除くことで、幸福感は増すものだとしているので、著者のこちらの考えにも納得はいくところはあります。本書の入門書としての性質は、小学六年生くらいから参考にできそうな水準だと思います。第二章の文献などにあたることについての解説などは、本当に分かりやすく、そして簡単でした。しかしながら、本書はちょっと古いので(2004年刊)、インターネットやパソコンのソフトを使うところでは、もはや時代遅れになっている部分はあると思います、スマホなんて文字すら出てきませんし。それでも、調査するノウハウとしての基本姿勢として踏まえておける基礎であることはたしかでした。そうなんですよね、本書は、基本中の基本を扱う種類の入門書で、ぜんぜん難しくありません。ときに練習問題が出てきて、それを愚直におこなうと面倒ではあるでしょうけど(僕はやらなかった)、すんなり読めるし、第三章のフィールドワークのあたりからは、ぐっと本筋に入ったような気がして面白かったです。フィールドワークまでいくかいかないかが、調査しているかしていないかの分かれ目と言えるくらいのところだと思います。そこのところを解説してくれるのは、非常にありがたくもあり、でも実際に、個人としてなにか調べたいと思ってフィールドワークをするのは、変わった人だと思われそうで腰が重くなります。僕は小説を書くので、そのために調べものをする必要って今後もでてきますけど、なかなかフィールドワークまでは……となってしまう。そこが勝負の分かれ目なのかなと思ったりもしました。文献調査をして、フィールドワークをして、まとめて。そういったサイクルを延々と続けていくうちに、調査目的のものが、だんだんくっきりしてくるそうです。一連のそういった連環作業が、調査目的のひとつの答えを磨きあげます。また、そういった調査行動と、それらを概念かする思考も、往ったり来たりを繰り返すものなんです、と説かれていました。その往復運動も際限がないようなもので、まるで人生だなあと思うのでした。

  • ネットを使えばなんでも簡単に調べられると思ってはいるが、いざ欲しいデータがなかなか探せなかったので、この本に書かれている「検索サイト」は使えそうだ。
    また単なる検索サイトの紹介だけでなく、情報の洪水を取捨選択し、自分で考える力を養う姿勢も書かれている。
    中でも「アンケート調査の功罪」の章は興味深い。当たり前のように行われているアンケートに実は多くの誤りがあることに気づかされる。思わず”あるある”と笑ってしまった。

  • まず驚いたのはこの本が発刊されてから10年ちょいの間に情報技術が目覚ましい発展を遂げていたこと。
    リアルタイムで経験していたすべてが、もうobsoleteな手段になっている。
    しかし、使えるツール、調べた後の情報の組み立て方はまだ健在である。
    ★本と言うのは本来こまぎれの情報を最初から最後まで通して読むことを目的に編まれており、ひとつの閉じた世界を作っている。それが本の醍醐味であり魅力、という旨のことが冒頭近くに書かれており、最も印象に残った。

  • 請求記号:SS/002.7/Mi86
    選書コメント:
    社会科学の基本的なツールとして必要な(社会)調査について、実践的、かつ、分かりやすく書かれています。初学者が最初に手に取る本としてふさわしものです。情報収集や整理、文献の探し方、統計データの入手方法、現場でのフィールドワーク、メモのとり方、ヒアリングのやり方まで、広範囲の内容を網羅しています。
    (環境創造学部環境創造学科 齋藤 博 准教授)

  • 特に新しい学びはなかったが、簡潔で読みやすく、高校生くらいに読んでおきたかったなと思う。また、自分たちの社会を自分たちで作っていくために、まず調査してみようというコンセプトはとても共感できる。それは課題意識から始まる、本質的な課題の発見であり、私たちの社会も活動もそこからしか生まれないのだと思う。

  • 文字通り、自分で調べたいと考える市民のための本。かなり具体的な技術が詰まっていて、実際に調べてみようという気になる。ただ、websiteの紹介なども多いため、今でも使える技術かどうかは、実際使ってみないと分からない。

  • 一口に「調査」と言っても奥が深い!机上論になってはいけないが、今の時代、根拠となる裏付けデータは絶対に必要!仕事は勿論プライベートでも。

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著者プロフィール

1961年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。北海道大学大学院文学研究院教授。
著書:『歩く、見る、聞く 人びとの自然再生』(岩波書店、2017年)
   『かつお節と日本人』(共著、岩波書店、2013年)
   『なぜ環境保全はうまくいかないのか』(編著、新泉社、2013年)
   『開発と生活戦略の民族誌』(新曜社、2011年)

「2023年 『小さな民からの発想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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