本気の教育でなければ子どもは変わらない (シリーズ教育を考える)

著者 :
  • 旺文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784010550250

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  • 本気の教師が日本を変える。既存の教師概念を打ち壊すようなエクセレントな教師が日本を変えると思います。

  • ◎はじめに
     原田氏は大阪市立中学校に体育教師として20年間勤務された後、現在は天理大学の講師として、また株式会社 原田教育研究所の代表取締役社長として活躍しておられる方である。中学教諭時代は生活指導と陸上部の指導に尽力され、その実績が高く評価されている。本レポートでは、筆者が考える教師のあるべき姿、生徒との関わり方など、私が参考になると感じた点を実例を挙げながら述べる。

    ◎原田メソッド
     原田メソッドとは、著者が生徒を自立型人間に育て上げることを目的として考えだした手法のことである。自立型人間とは、自分の夢や目標を掲げそこに向かってやるべき課題を設定し、課題を乗り越えていきながら自らの夢を形にしていける人間の事を呼ぶという。その育成には、①態度教育、②価値観の向上、③目標設定が必要であると述べている。

    ①態度教育
     自立型人間の育成には、まず生徒の「心のコップ」を上向きにし、こちらの言葉がしっかり耳に入り、心のコップに溜まっていくような形に変えなければならないと著者は述べている。きちんと聞く姿勢をつくってからでないと、いくら強烈なエネルギーやメッセージを生徒に注いだとしても心に伝わることはないからであろう。具体的には、遅刻や忘れ物、服装や髪型、挨拶や返事、姿勢や言葉遣いといった問題に対ししつけの指導を徹底することが必要だと著者は述べている。遅刻の指導を例に挙げれば、毎朝電話をし、それでだめなら迎えに行き、それでもだめなら前日に泊まりに行くと伝えるという。しつけの指導は生徒ができるようになるまで何回もやらせる以外に方法はないからであろう。生徒は厳しい指導を嫌い反発も多いが、教師の本気度が伝われば何よりも自分たちのことを真っ先に考えてくれていると感じるようになり、絶対に子どもたちの態度は変わっていくという。
     また人の嫌がる、やりたがらない仕事は教師が率先して引き受けるべきだと著者は述べている。そうすることで生徒は「先生がやっているのだから、僕らもやろう」という気持ちになってくれるという。「しっかりやれ!」と言うだけでは生徒には何も伝わらないし、生徒の考え方も変わらないということだろう。教師が生徒のモデルになると同時に口だけではないという気持ちが生徒に伝わった時、そこに信頼が生まれ、教師の言う事に耳を傾けてくれるようになるのではないかと考える。

    ②価値観の向上
     生徒のやる気を引き出すには、小さな成功を積み重ねさせ、その度に褒めてあげる事が必要だと著者は述べている。人は褒められることで自信がつく。自信がつけばやる気が出てくる。やる気が出て初めて、人間は失敗や叱られた体験から学べるようになる。やる気があるからこそ自分で自分の間違いを糧にしようとする気持ちが出てくる、という。著者は一貫して教育において褒めることを非常に重視している。
     次いで、一人一役の仕事を生徒に与え、一定期間同じ生徒に担当させてやらせきることが大きなきっかけになると著者は述べている。一人一役であれば、例えば練習前に綺麗に磨かれた道具が用意されていれば誰がそれを準備したかが分かるため、すぐに道具係の生徒を呼んで褒めることができるという。学級だよりやクラブ通信でも褒めることで親からも褒めてもらえるため、生徒にとっての癒しになると同時に小さな成功体験となる。すると更にがんばろうと思い、自分に与えられている仕事に対して具体的にこうしようという目標を自分で立てるようになる。その上で色々工夫し、どうすればその仕事をより良くできるのか自分で考えるようになっていく。この積み重ねが子供に自信を誇りを持たせることに繋がり全てがプラスの方向に向かっていくという。これはクラスやクラブ活動や家庭でも共通することであろう。

    ③目標設定
     何事にも目標を決め、それに必要な事柄に優先順位を付け、期日と共に計画をたてることは非常に有効であると著者は述べている。期日後は成果の考察と失敗の反省を行い、それを皆で公表し合い考察と反省を共有する。そして教師が評価し、褒める際には最大限文章にして後々まで残るようにすることが重要であるという。そうすれば生徒はいつでも自分が成功した時の喜びを思い出すことができ、自らを勇気づけることができるからであろう。同時に自分の変化と成長の記録になるとも言える。

    ◎教師は常に、生徒が置かれている状況の最低ラインに自らを置かなければならない
     著者は遠足や運動会の際、家から弁当を持っていかないという。遠足に弁当を持っていけない生徒がいる可能性が高いからだそうだ。もしその生徒の前で愛妻弁当をおいしそうに食べていたら生徒はどのように感じ、教師に対してどのような気持ちを抱くだろうか。普段から手作り弁当は持っていかず、途中でおにぎりや駅弁といった既製のものを買うべきである。

    ◎茶髪やピアスは禁止しなければならない
     著者はこのように断言している。なぜなら、学校の中では暴力的な力の強い生徒が力の弱い生徒を脅す手段として金髪やピアスを使っているからであるという。それらは個人のファッションや個性で片付けられる問題ではないということだろう。確かに、真面目に勉強しようと思っている生徒の横にピアスに金髪の生徒が座っていたら真面目に勉強する気には到底なれないと思う。少なくともその場の雰囲気やムードは、そうした外見だけで十分に影響を受けるはずである。

    ◎不登校への対応
     文科省は「不登校を起こしている生徒は心のエネルギーが少なくなっているため、休ませればエネルギーを回復し学校へ行くようになる。下手に登校への刺激を与えるのは逆効果である」と過去に主張していたという。著者を含め現場の人間はそれを全く逆だと感じており、不登校は最初の3日が勝負で、まだ学校に行きたいという気持ちが残っているうちに生徒へ刺激を与えなければエネルギーが本当になくなってしまい完全に不登校になる、というのが共通認識だそうだ。現場の主張によってようやく文科省も「初期の登校支援、迎えや電話をすることが生徒によっては有効な場合もある」という言い回しで、現場の意見を認めるようになったという。金八先生でも観られたように、生徒に嫌がられたとしても我慢強く話を聴く努力が必要である。

    ◎生徒に対しても、保護者に対しても常に敏感なアンテナを張らなければならい
     著者は、生徒の家庭内暴力に耐えられなくなった家族が生徒を殺すという事件に実際に教師という立場で遭遇したという。いくらおとなしい子でも、おとなしいなりに何かのシグナルは出しているはずであるがそれに気付くことが難しい。
     ここから学べることは、教師は命に関わる職業であるということ、そして教師は生徒が発信するシグナルを敏感に感じるアンテナを常に張っていなければならないということであろう。同時に保護者からも信頼される様しっかりコミュニケーションをとること、生徒と保護者の関係を把握することの必要性を感じる。また自分のやろうとしていること、生徒とどのように接しようとしているのか、そのためにどのような取り組みをしその結果はどうだったのかを保護者に伝えていくためにも、学級通信や手紙類を頻繁に出すべきであると感じた。更に生徒との一対一の関係をつくり、一人ひとりが教師のまなざしを感じられるように努め、生徒の「自分を分かって欲しい」という気持ちに応えることが大切だと思った。

    ◎警察や児童相談所、地域との連携
     生徒が暴れて備品を破壊したり他の生徒や教師を傷つけたとしても、マスコミと保護者を恐れる余り学校が110番をためらう事が非常に多いと著者は指摘している。学校としての対面と生徒や教師の緊急事態、どちらが大切なのだろうかと思ってしまう。更に暴力的な生徒を野放しをしておくと、勉強をしたいと思っている生徒、平穏に生活を送りたいと思っている生徒が常に犠牲となる。著者が新しい学校に赴任する前には警察と児童相談所へ挨拶に行くようにしているという。また赴任先の学校の状況分析をするため、情報を集めるという目的で地域の役員の方などにも連絡を取るそうだ。

    ◎練習メニューの組み立て
     部活動において本数・回数で練習メニューを組み立てた場合、能力によって1分で終わる生徒もいれば3分かかる生徒もいるため、終了時間がバラバラとなりメニューの組み立てが難しくなるという。そこで著者は、ストレッチ◯分、筋トレ◯分のように時間でメニュー区切ることで、メニューを固定化し、かつ全体に一体感を生み出すことに成功した。同時にその時間内に行う回数の目標を自分で設定して練習をするようになったという。ただし、時間で区切ることでサボろうと思えばいくらでもサボれるようになってしまう様にも思える。更に、サボっている子に対しサボるな!と追い込んでしまうと、逆に生徒はもっと上手にバレないようにサボろうとするであろう。練習に真剣に取り組み、より良い成果を得るためには子どもたち自身の内面からのやる気が必要であると思う。その第一歩として、著者の考え方に従えば、生徒が頑張ったときには褒めてあげることが必要であろう。やる気さえ持続されれば成果も付いてくるはずである。

    ◎生き方モデル
     著者は、教師や大人が自分の仕事に対して、満足感や充実感、達成感がなく、喜びも自信も確信もないのではと問いかけている。子どもは大人を映す鏡であるから、「いまどきの子どもたちは」と言う前に大人は自分を反省すべきである、と述べている。自分は何かに向かって前向きに挑戦しているか、充実感を感じるような生き方をしているか、生徒の「生き方モデル」になるような姿勢を持っているか。「生き方モデル」を生徒に示せていない教師は、その責任をもっと考えなければならないということであろう。加えて、生徒を導くべき教師が夢を語れなくては生徒の夢を育むことはできない、ということだと思う。

    ◎教師にとしての心構え
     教師として大切な目標は生徒を成功に導くことであり、生徒の成功が教師としての成功であると著者は述べている。ここでいう成功とは、原田メソッドにも述べられているように、自分にとって価値のあることを目標においてそれを達成することであろう。その結果、充実感や達成感が得られ、それらが自分の自信や誇りに繋がり、さらに大きな目標に向かって突き進む原動力になるはずである。
     著者は最後に、何よりもまず教師という仕事が好きで、その仕事を楽しいと思えるかどうかが大切であると述べている。教師の仕事に一番の価値をおけるかどうか、何を差し置いても教師の仕事を優先できるかどうか考える必要があるという。そういった価値観を持てる者にしか、命がけで、本気で教師を全うするという決意とそれに耐えうる忍耐力は宿らないのだろうと想像する。

  • 大人が本気になれば子どもは変わる。
    みんなで本気になって、良い未来をつくっていきたいなぁ。

  • 『生徒指導は、ひとつ気づかなかったら人がひとり死ぬ。経験した』
    これは強烈。

    人として、の教育本。
    「高みを目指して頑張る」ことができてこそ人間。

    自分の将来自分でいじる。
    自分で目標を立てて達成する。
    たまたま勝ったのではない。

    自分の人生自分で切り開く。
    これを念頭に、心づくりの4つの指導。

    中でも、生徒さんが書いた日誌、
    これは社会人でもそうそう書けるレベルのものではない。
    日本一を取るには、これだけのレベルで振り返る⇒
    落とし込む、の繰り返しであると自分を戒めた。

    この自立型人間育成メソッドは、学校現場よりも、
    先ず家庭で実行されるべき。

    あと印象に残っているのは家庭内の役割について。
    家庭には母性しかない。
    中高生になったら父性が大切。
    どんな誇りを持ってどんな仕事をしているのか。語らない。
    子どもが荒れたら、父性を警察にゆだねるしかない。


    この先に、社会との接点を持ち、自分の将来を想像する力をつける教育が
    (ゆとりの目的でもあるが)求められてくるんだろうな。

  • ◆「仕事と思うな人生と思え!」「 率先垂範、まず動け!」「 敵は誰ですか?私です」などのクレドで有名な著者のすばらし情熱を感じさせてくれる本。

    ◇子どもにだけ「ちゃんとやれ」といっても、子どもは変わりません。まず自分が変わっていく。自分が努力する。大人が変わらなければ子どもは変わらない

    ◇「失敗から学ぶ」よりも成功体験を積み重ねていくほうが大切です。小さな成功を積み重ねていく。そのたびに、ほめてやる。人は「ほめられる」ことで、自信がついていきます。自信がつくと「やる気」が出てきます

    ◇仕事や役割を与える。そして、やりきる、やらせきる、ほめる。この積み重ねが子どもに自身と誇りを持たせるのです

    ◇人のせい、環境のせいにせず、あくまでも前向きに、本気で取り組むこと。人は変わると信じて「やりきる、やらせきる」こと

    ◇いくらいい話、新しいノウハウを教えようとしても、受ける側に受け止める態度や準備がなければ、全てが水の泡。まず大切なのは、子どもたちの心のコップを上向きにすること

    ◇求められているのは、教師が本気かどうか、「育てに育てる」気持ちがあるかどうか、だけです

    ◇目標を書いて、書いて、自分の潜在意識に打ち込むようにしていく。どんどん書いていけば、目標が「日本一になりたい」から、「絶対、日本一になる」、「死んでも日本一になる」と変わっていく。そのときにイメージが作られる

  • この本は、子どもと向き合うことの重要性を教えてくれた本です。
    特に何事にもやる気のない子ども(本の中ではコップが下向きと表現している)
    をどのように鼓舞させるか、について自身の経験をもとに記載されています。
    やる気を上げるためには、目標を紙に書き、言語化をし続けることが効果的と書
    いてありました(実際に私はこれを家庭教師でやりました)。
    因みに忽那教授の部屋にもこの本は置いてあります。
    きっと教育者が読むのにはうってつけの本なのかもしれません。

  • 校内暴力などで荒れていた時代より、今の生徒の方がタチが悪いように思います。現代では、この情熱的な指導も空回りする期間が長くなるでしょう。しかし、あきらめない限りいつかは通じます。
    また、前向きな姿勢など成功法則に通じることも多数書かれています。

  • ・「成功」とは何か。自分にとって価値のあることを目標において、それを達成していくこと。その結果、何を手に入れるのかといえば、”ああ、ようやった。やれた!”という満足感、充実感です。そういう達成感が誇りにつながり、さらに大きな目標に向かって突き進む力になります。(135p)

    ・”そうか!継続や、継続なんや、継続が大切ということなんや”
    目標を達成したときは、心が抜ける。強い心は、そこに至るまでの道程での努力の継続によってもたらされるのです。(115p)

    ・強い選手、確実に日本一になれる選手ほど、嫌がることなく真剣に仲間をサポートします。(189p)

    ★成功体験を通じて自信をつけること、他人をサポートすること、継続すること、が大切

  • やればできる、成せば成る。


    本気で関われば、人は変わる。
    本気でやれば、結果は出せる。


    もっとも大切なことを実体験ベースで教えて頂きました。

  • 熱っつ~い教師が生徒の態度を変えて何かを成し遂げる、そんな教育の本にありがちなもの。つまらなくもなく、おもしろくもない。でも、信念と情熱を失ってはいけない教師にとっては、予想できる内容でも奮い立たせてくれるという意味で読んでみても損はない。一般読者は「オレもいっちょやってみるか」と自己啓発書として読めばいい。

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著者プロフィール

同志社大学免許資格課程センター・同志社大学大学院総合政策科学研究科教授。1982年、同志社大学工学部卒業。1984年、同志社大学大学院工学研究科修士課程修了後、1989年、慶應義塾大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は図書館情報学。主な著書・論文に、『図書館情報学を学ぶ人のために』(編著、世界思想社、2017年)、『情報倫理――ネット時代のソーシャル・リテラシー』(共著、技術評論社、2014年)など。

「2017年 『ゲームの面白さとは何だろうか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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