讃歌

著者 :
  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022500892

感想・レビュー・書評

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  • かつて天才少女と呼ばれたヴァイオリニストが、30余年を経てテレビのドキュメンタリー番組に登場する。その演奏は聴く者の心を掴み、感動の演奏が評判を呼び、彼女は一躍スターになる。
    果たして、その感動の正体は?クローズアップされる栄光と挫折の半生、テレビ番組制作現場で作られていく感動の正体とは。
    テレビに限らず、およそ感動と名の付く物語に懐疑的な私にとっては「やはりね!」の印象。これはあくまでも物語だけど、限りなくこれに近いことが番組制作の現場をはじめとして行われているのではないか。
    ドキュメンタリーといいながら、感動を呼ぶようなシナリオに沿った絵作り。ドキュメンタリーという名の「ドラマ」作り。安易な感動を欲する視聴者がそれに拍車をかける。
    技術的に素晴らしい演奏が必ずしも売れる訳ではないということ。プロの音楽家の悲哀。
    クラシックの音楽家でさえもイケメンや美女がもてはやされ、まるでグラビアのようなジャケットのCDが売れるのは残念過ぎる。
    テレビと、音楽の世界の問題を決して堅苦しくなく描いた上質の社会派小説だった。

  • 161007図

  • #読了。
    TV製作会社の小野は、クラシック専門レコード会社社長熊谷に誘われコンサートへ。そこで聴いた、ビオラ奏者柳原園子の演奏に深く感動し、番組制作を決意。番組は好評、園子も一躍人気者となるが。。。
    商業的には恵まれていないクラシックというジャンルにかかわらず、技術的に未熟であっても人の心に響く演奏と技術的に完璧でかつ素晴らしい演奏がどちらが素晴らしいと感じるかは人それぞれなのだろう。

  • 演奏者のプライドと苦悩、売り出すための画策や思い、ドキュメント番組を作る大変さ、音楽とは?など考えさせられる要素がたくさん。とても読みやすい。

  • 逗子図書館で読む。筆力抜群です。小説嫌いの僕でも、すらすら読めます。状況説明も無理なく、分かりやすいです。ただし、積極的に読みたい小説家ではありません。どうも、好きになれない。

  • 薄暮読後にすぐ読んだ。題材は音楽だけどマスコミの人間を主人公にし芸術家を見出していく過程は薄暮のプロットにそっくりで姉妹作と言ってもいいほど。やはり人にとっていい音楽とは何かについて考えた。芸術に対する価値観とはなんなのかと。熊谷のイメージが薄暮の多田に丸かぶりだった。薄暮はミステリー仕立てになってたが、これはどう評したらいいのだろう?

  • 一気に読めた。冒頭や音楽の話は良かったんだけど、最初だけであとは失速…

  • ビオラの演奏への感激で始まる。

    千と千尋の神隠し の主題歌 いつも何度でも
    映画 タイタニック で演奏の賛美歌 主よみもとに近づかん
    シューベルト アルペジオーネソナタ
    チャイコフスキー
    ベートーベン コンチェルト
    クライスラー 愛の喜び、愛の悲しみ
    ハイドン

    音楽業界と放送業界の裏が分かる。
    悪意ばかりでなく、事実からずれていく様子が手に取るように分かる。

  • 3位
    単行本ではなく、新聞連載で読みました。が……。
    連載中は毎日苛々していました。
    「えっ?なんでこんな展開になるんだよ!」
    「ああもう、柳原園子はどうなっちゃうの?」
    毎日続きが気になって気になって仕方ありませんでした。
    しかも後味は悪い。それでも面白いんだから憎らしい!

  • ヴィオラという楽器はあまり詳しくない、というかほとんど知らない。バイオリンより大きめの低音を奏でる楽器らしい。かつての天才少女バイオリニストが不遇の時代を経てヴィオラ奏者として奇跡の復活をする話。だと単なるよくあるヒューマンドラマであるが、ここにマスコミが絡み複雑になっていくという展開。テレビや雑誌の力は実力を伴わないものをもスターダムに引き上げてしまうのは、日々見ていてよくあることである。メディアは恐ろしいなーとこれを読みながら少々思った。と同時に、ほんとに新聞やテレビや雑誌をそのまま信じる人々は、今後減っていくんだろうなと感じる。正しい形に日本人もなりつつある、というのはよくある意見だし、いいことなんだろうけど、一般に無宗教といわれる日本人にとっては、一つのものを(それがマスコミという媒体であっても)信じて生活の規範にするのは幸せなことだったのかもしれないと感じる今日この頃である。

  • 小説。バイオリンからビオラに転向した女性奏者のドキュメンタリーを作ったテレビマンが巻き込まれる、マスコミの力のすごさと隠された相関図が物語を引っ張るちょっとした謎解き。楽器演奏の技術の難易度は専門家でないとわからないのかもしれないけど、下手でも感動という評価は素人にもわかる。その辺が読みながら白黒つけたくさせるジレンマが沸き起こるのが面白かった。日本人は多数決に弱い。正しくても少数派でいると声が小さくなる。アメリカ音楽院の教師が抗議文を送ってくるあたりではマスコミの持つ力もさることながら、訴訟大国アメリカらしく、個人でも意思が確立してるのが見てとれ新たな火種追加で、話が大きくなっていく。最後にミステリアスな舞台裏を読めるのでもやもやはなし。

  • 音楽のセンスに悩まされてかわいそうでした。

  • テレビの番組制作を仕事とする小野は、レコード会社の社長に教えてもらった演奏会で、魂をゆさぶられるほど感動するヴィオラの音色に遭遇した。
    演奏者は、かつてヴァイオリンで天才少女と言われた女性だった。
    彼女の生い立ちは、順風満帆なものではなく、苦しい人生だった。アメリカの留学での挫折、自殺未遂。
    そういった出来事を経た彼女のヴィオラの音色には、魂を癒される魅力があった。
    小野は、彼女の人生をドキュメント番組として作ることに。

    硬派な印象を受ける彼女の文章は、社会派でかつ読みやすい。ものすごくしっかりとした文章力を感じることができる。
    一家そろってクラシック好きな我が家の一員として、この本はとても興味深いものだった。
    『ハルモニア』にはチェロが登場するが、今回はヴィオラ。
    楽器が登場するだけで嬉しくなる。
    テレビ番組の制作という世界の様子も興味深く、面白く読めた。
    ちょっぴり、結末に向けて失速したというか、なんとなく気持ちの盛り上がりに欠けてしまって残念。

  • 久しぶりに読んだ篠田節子さん。かつて天才少女ヴァイオリニストとしてもてはやされた女性の、挫折、復活、再生の日々を追いかけたドキュメンタリー番組がヒットし、彼女はヴィオリストとして名声を手にする。しかしやがて彼女の経歴詐称疑惑が浮上し、一転バッシングの対象となっていく。ドキュメンタリー番組は、事実だったのか、やらせだったのか?相変わらず初めに受ける印象がどんどん覆されていく感じが篠田さんらしい。そこが快感。もっと決定的な何かが欲しいと言う気もしたが、最後まで読む手を休められなかった。

  • 2007.10. 久しぶりに、篠田さんを読んだ。すごい腹持ちが良い(お腹に響く感じ)。ヴィオラという楽器を詳しく知らないし、読んでいて音色を浮かべられないのがすごく残念だった。でも、奏法が上手なのと心に響くのは別よね。そして、園子は情念の強い女の人だったんだな…。怖いな、けれどそれが女というものなのかな。なにを思って弾いていたんだろうと思う。もし、テレビに取り上げられなかったら(まぁ、そう仕組んだんだけど)、彼女は、教会の片隅でひっそりと、でも歓迎されながらずっとヴィオラを弾き続けたんだろうか。小説の本題はそこじゃないんだけど、読後じーっと考えてしまった。

  • 元バイオリンの天才少女がTVのドキュメンタリー番組に出演、その反響の大きさから「癒しのヴィオラ奏者」として華々しく復活するという内容です。

    フジ子・ヘミングさんをつい思い浮かべてしまいました。
    たまたま私もNHKのドキュメンタリー番組を見て感動し、あれよあれよという間にフジ子・ヘミングさんが脚光を浴びコンサートのチケットがとれなくなるという騒ぎをライブで経験していましたので。

    音楽の評価の難しさ(技術力と感動のどちらを優位におくか)、
    マスコミの強大な影響力(たやすくヒーローが作られ、捨てられていく)
    いろいろと考えさせられる作品でした。

  • テレビ制作会社で働く小野は、ある日耳にしたヴィオラ奏者の番組制作を決意。天才少女の栄光と挫折を追ったドキュメンタリーは好評。彼女はスターになるが…音楽を聴いて感動するのはどうして?うまい音楽家と感動する音楽家って何だろう。うまい演奏より感動する演奏の秘密は。スターを作り出すマスコミのあり方など。

  • 期待していたほどではなかったなあ。(ごめんなさいTB間違ってしまいました)

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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