性犯罪被害にあうということ

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022504210

感想・レビュー・書評

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  • 信頼を裏切られた彼女の心を理解することは並大抵のことではない。簡単にわかるとか大丈夫だとか言えない。
    しかし彼女は強い。いや、強いという言葉で片付けてはいけない。強くならざるを得なかった。性犯罪被害者は沈黙を守ることを強いられている。そんな社会を変えるために、そんな暗闇におびえる無数の被害者が声を上げられる社会にするために立ち上がった。彼女は勇敢なサバイバーだ。
    被害者が完全に元に戻ることは不可能かもしれない。
    汚れてしまったという感情を緩和することは容易なことではなく、自殺者が後を絶たない。そんな社会。
    彼女たちが社会復帰を果たすためには周囲の援助が不可欠なのだが、その周囲がそれを妨げてしまうという悪循環。やはり身近に被害者がでると、うろたえてしまい、その感情を処理しきれない、受け入れきれない近親者が被害者をさらに傷つけてしまう。
    私たちは準備ができているとは到底言えない。
    なぜなら、そんな不幸なことは自分の身には起こり得ないという感覚が常につきまとっているから。
    悔しいが、不幸なことはだれの身にでも起こり得ることであり、被害回避の方法は細心の注意を払うしか現段階ではない。
    そのためにも、被害者、被害者家族、また一般市民に対する啓蒙活動は不可欠である。
    一般市民である私たちにできることはカウンセラーへの橋渡しのみである。しかしその状態にもっていくまでが困難であり、そのためにも彼女たちの心情を理解することが大切だ。
    小林さんが声をあげてくれてどれだけの人が救われたことか。本当に嬉しい。

    2009/02/02

  • 被害者学の教授に薦められ、読んでみました。

    男性である私が評してよいものか、とは思いますが。

    まず、個人として。
    当たり前だけれども、男性は女性を襲うものではなく、守るべきである。
    自分の身の周りでこのようなことが起こった時、自分はいったいどう対応できるのか。

    社会問題として。
    安定した社会ではなく紛争社会で、性犯罪やそれからの復帰のプロセスはどうあるべきなのか。(問題提起にとどまってしまうが)

    法哲学的命題として。
    終わりごろの、「性犯罪の概念の幅」についての言及。犯罪って誰が決めるものなの?

    そして最後に人生として。
    社会システムで人生は包含できない。システムや論理、計算は個人の人生から名前を奪う。最後に唯一確かなものは、自分だけ。

    男女両方に薦めます。

  • 2011.9.10読了。

    二次被害について。
    家族や恋人、友達らに当たり散らす(という表現は良くないだろうが)。
    彼女も必死だ。
    でも、彼女の周りにいる人たちも必死なんだ。
    でも、彼女にはわからない。
    それが、読んでいて辛い。
    二次被害というのがそういうことなんだ。
    被害者、そしてその周りの人たちの人生を大きく変えてしまう。
    そういうことも全部含めて、犯罪者には大きな罪を。

  • どんなことも経験しないとわからないし、経験したからこそ、言えることもあると思うけど、内容が内容だけに、著者の本にすることの勇気に感謝したい。この本を通じて加害者や被害者が世の中から減ってもらうことを祈る。

  • ★を付けて評価する、という行為は、本書にはふさわしくない。
    ただ、読んでみて、人間としてとても大切な部分がたくさん書かれている。多くの人がこの本を手にしてくれること、「伝える」ことの至難さと、それでも伝えずにはおれない、また、伝えるべきことがあるということを願って、私は★をつける。

    これは一人称で読むべき本。
    これは、小林さんの物語であって、同時に私の物語でもある。
    性的、暴力的、経済的いじめのサバイバーとして、私はそう思った。

  • 自分が最初に期待していたような本じゃなかった。
    勝手に被害者が周りの協力で立ち直るストーリーを期待していた。

    著者は実際にレイプの被害者であり、犯人はいまだつかまっていないという。
    レイプのせいで、事件後当初から献身的に支えようとしてくれた彼氏とも別れてしまった。親とも喧嘩が絶えない、結婚したが結局離婚した。全然立ち直れていない。
    それでも著者は一生懸命生きていると。そしてまだ事件と戦っていると。
    いや、消えることのない肉体の一部として取り込んでいる。取り込まざるをえない状況なのだと。

    これがレイプの現実なのだと知りました。被害者に薄黒くドロドロしてくっついたらはなれない悲惨さだけを残すんだ。ドラマであるような美談にはならないんだと。いい本です。

  •  現在、33歳の小林美佳さんが、24歳の時のレイプ体験、その後の人生を語る一冊。
     孤独、苦しみ、悲しみ、恐怖、性犯罪被害者の現状が分かる。

     私は、日頃法律を勉強していて、犯罪予防や矯正強化など加害者の視点でものごとを判断していた。
     しかし、犯罪には被害者が存在し、何よりもまず被害者の救済が一番にやるべきことだとこの本を読んで思った。

  • この本に書いてあるのは、壮絶な体験です。
    犯人にとっては一時の出来事でも、被害者にとっては永遠に続く苦しみをもたらすのです。
    この本を読み終えてなお、(自分がこの人のそばにいたとしても)この人の力にはなることはできないように思います。
    こんなことになってしまうのか。
    言葉がありません。

    [08.6.11]

  • 友達が読んですごく心を打たれたので、是非読んでみてください

  • 被害者が泣き寝入りするしかない、または隠さなければならないような悪しき社会規範と、その犯罪そのものにまず大きな憤りを感じる。そして、信頼しあい配慮しあう気持ちの疎通すら、なんと難しいことか。

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著者プロフィール

【小林美佳】日本ヘルスケア歯科学会認定歯科衛生士

「2016年 『歯科臨床会話フレーズ275』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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