- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022504999
作品紹介・あらすじ
よれよれな父と元気全開な娘が初めて語りあった爆笑対談。「好きでちゅ!」父は、躁病になると、エレベーターの中でいつも叫んだ。真夏の夜、夢中で蛾を追いかけていた父・北杜夫。「当家の主人、発狂中!」の看板を門に飾った娘・斎藤由香。躁病もうつ病も怖くない。
感想・レビュー・書評
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https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA88898112詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作家・北杜夫と、その一人娘でエッセイストの斎藤由香が語り下ろした親子対談。書名のとおり、北杜夫が長年病んできた躁うつ病にまつわるエピソードを中心に、北家の歴史を振り返った内容である。
斎藤由香が最後に「これでインタビューは終わりね」と発言しているとおり、彼女は父から話を引き出す役割に徹していて、対談というよりロング・インタビューのようだ。
対談集というのはじつにピンキリであって、キリのほうには「この著者には本を書く時間や能力がないから、対談ですましちゃえ!」という感じで安直に作られたものが多い。
本書は、どちらかといえば「キリ」寄りである。「ヨタヨタで老いている」(斎藤のあとがきの一節)81歳の北杜夫には、もはや一冊の本を書き上げる余力はないのだろう。「テープ起こしをそのまま載せました」みたいな箇所も散見されるし、どうでもいい雑談も少なくないし、わりとイージーな作りの対談集だ。
とはいえ、だからつまらないかといえばそうでもない。躁うつ病についての印象的なエピソードが満載で、北杜夫ファンなら最後まで興味深く読める。躁期になると株売買にのめりこむ奇妙なクセをもつ北杜夫は、なんと、株で破産したこともあるのだという。
破産に象徴されるように、客観的に見れば悲惨なエピソードも多いのだが、北杜夫も斎藤由香も育ちのよいおぼっちゃん・お嬢様だから、語り口は上品でおっとりしており、読者に悲惨さを感じさせない。
また、うつ病はとかく自殺念慮に結びつきがちだが、北杜夫はうつ期にもまったく自殺念慮を起こさないそうで、それが救いになっている。「楽しい躁うつ病」などというお気楽なタイトルにできたのも、一つにはそのためだろう。
印象的な一節を引く。北杜夫が躁病を発病して気持ちが昂ぶり、夫人にも暴言を吐くようになった時期のエピソードである。
《由香 ママは泣きはしないんだけど、最初の頃は、悲しがってばかりいたママが、義母の輝子おばあさまに相談すると「私も茂吉とうまく行かなかったときに、お父様から看護婦になったつもりでいなさいって言われました。喜美子も宗吉に対し、看護婦だと思ってつきあいなさい」と説得された。
それで急にあるときからママも元気になっちゃって。パパが「出て行ってくれ!」と言うと「あなたは患者さんで、私は看護婦です。しかも、ひとりしかいないから婦長さんなのよ。婦長さんで偉いから、あなたこそ、私の言うことを聞いてください!」と言うようになっちゃって。
北 あの頃は大変だったなあ……。
由香 大変ってママが大変だったの! また他人事みたいに(笑)》 -
躁うつ病は、仕事も家族も失ってしまうと、言われます。北氏のように、長期間にわたって家族を巻き込んだ闘病生活で家族が離散しなかったことは賞賛すべきです。,現在の社会情勢が違うことや、北氏が著名人であったことによる求心力が一般人と異なることが要因なのかもしれません。,でも、こんな明るいテイストの対談集を娘と出せるとは、うらやましい限りです。
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予想に違わず、おもしろい本だった。
いずれにせよ、人間は「矛盾の束」である。完璧な人間などいないのだから、いい加減に生きるのがうつ病にならないコツだと、私は思う。
北杜夫の前書きのことば。
60点で満足、それでいこう。 -
北さんて変わってるね(笑)
躁病を楽しんじゃうなんて、無敵の考え方だな。
素敵なご家族。
お庭で表彰なんて、豊かな、味わいある人生だなって、ご苦労の部分も含め、思った。
注目されるひとって、対価を支払っているんだな。
なにかをたくさん持ったら、なにかを手放さなきゃならないのかもしれない。
愛は例外? -
図書館で、たまたま目に止まった本。
対談形式で、あまり面白くなかったが、
同じ症状をもつ父の子として、
あ〜あるあると、思いながら読んだ。 -
全然進まず。途中で返却。
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医学博士で著述家の北杜夫氏と、その娘である斎藤由香氏の対談本。
中身は、娘が生まれたときの思い出話から始まり、躁病で株をやり続け、借金を作る杜夫氏の状況などが書いてある。
いや~、なかなか躁病の実態はうわさでしか知りませんが、本当にすごいですね。中身は濃くないですが、その時の状況、そして家族の見守っている姿はなかなか読んでいてほのぼのしました。 -
雑誌で由香さんのエッセイを読んだことはあったけてど本は初。大変なのにのほほんとした不思議な対談。