f植物園の巣穴

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著者 : 梨木香歩
  • 朝日新聞出版 (2009年5月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505880

f植物園の巣穴の感想・レビュー・書評

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  • 最近のミイラ研究で明らかになったのは、古代エジプトの歴代ファラオの死因(この場合は病死)の中で当時の病死で一番多いのが「虫歯」や「歯周病」がもとになって引き起こされる「敗血症」であったという。それほどまでに歯は重要な器官らしい。

    歯痛に悩む植物園の園丁、佐田はある日巣穴に落ちてしまう。そこは異界への入り口だった・・・。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、佐田はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

    歯科医の「家内」である犬、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。

    妊娠4ヶ月で儚くなってしまった妻の千代や、ねえやの千代の思い出、子供に戻ってしまった身体で辿る記憶の旅。

    混乱と戸惑い。どこまでが現実でどこからがそうでないのか、境目が分からなくなる。川上弘美さんの作品にもこの雰囲気、あるなぁ。

    最後、オシリス神のように復活を遂げる千代。佐田も再生されたのかもしれぬ。

  • 最初から不思議な話だった。現実なのか幻なのか分からないような世界。そのまま話はどんどん進み、過去に立ち返り忘れていた事を思い出したり、大事な物を見つけていく。
    ずっと、掴み所のない話だと思いながら読んでいたが、読み終わった時に「あぁ、良い話だった」と心から思えた。

  • 前半のあの独特な雰囲気にはまれなくて。
    だいたいイメージしてその作品に入り込むのだけど、まったくイメージできなかった。
    難しい言葉が多かったので、私の読解力が足りなかったのだろう。
    ところが、坊が出てきた後半部分からは、すごくのめり込んで、1日で読み切ってしまった。
    坊の正体とかあまり深く考えていなくて、わかった時にはただ素直に感動した。
    そして坊に名前を付けてあげたところでは、坊の嬉しそうな顔が浮かんで少しウルッときて。
    お別れする時には切なくて…。とにかく不思議な本だった。

  • 不思議な物語。
    植物園に勤める男が、ある日「隠り江」に迷い込み、生まれてこなかった息子と、ねえやの千代や妻の千代という「千代」の記憶を取り戻していく。

    ぐるぐると取り込まれるようで、一気に読みました。
    時代的には昭和初期位?その時代が好きなので、どっぷりつかってしまった感じですね。

    最後に妻のもとに帰れてよかったです。
    千代さんかわいい人ですね。

  • 古風な言い回しの文体は嫌いではないしむしろ好きなのだけど、夢と現が奇妙に交錯する展開が何故か非常に眠く感じられてなかなか読み進めることができなかった。でも、坊の正体が分かった途端なんだかすごく切なくも温かい気持ちに。なかなか良いお話しだったなぁ、と^^ できればジ○リあたりの映像作品として見てみたいですね。

  • しくしくとした歯の痛みに耐えかねて、ついに歯医者を訪れたその時から、植物園に園丁として勤める「私」の世界はどんどんと位相がずれていくようである。歯科医の「家内」や下宿屋の家主はどうも犬や鶏に見えるようであるし、時間と季節が噛み合わぬ。まるで、自分の歯にぽっかりと空いたうろの中に、自分自身が落ち込んでしまったようだ・・・
    『家守奇譚』など明治時代の紳士たちを主人公にした著者お得意の作品群に連なる物語。よくもこんな遠い時代の男性の内側に入り込んだような文章が自然に出てくるものだと感心する。まるでアリスの穴に落ち込んだ夏目漱石の冒険譚でも読むように、ユーモラスで奇妙だが心地のよい世界だ。精いっぱい威厳をたもとうとしながら、なすすべもなく奇妙なできごとに翻弄されてしまう主人公が情けなくも滑稽。だが亡き妻についての回想からすると、妻の心を思いやろうとしない独善的な冷たさをもった人物でもあるようだ。落下を続ける「私」は時間をさかのぼり、羊水の川で生まれなおして、自意識の底に押し込めてきた「千代」たちとの関係を生き直すことになる。
    儒学教育を通じて女性蔑視を叩きこまれ、洋装のように近代的合理主義をまとった明治の男である主人公は、大切な存在であるはずの女たちを切り捨てることによって、自分自身が生まれてきた世界とのつながりを失って、心にぽっかりとしたうろを抱え込んでしまっていたのだろう。『僕たちはどう生きるか』執筆の過程を通じて性暴力とマスキュリニティの問題について考えざるを得なかったであろう梨木さんが、明治以来無理を重ねてきた男たちに生き直しを優しく促している、そんなふうに見える物語だ。

  • 作者の梨木香歩さんは、本質的にファンタジー書きの作家なのだなあと、深々と納得した。
    植物園に務める佐田豊彦氏の心の旅が描かれており、心の旅という性格上、普通はつながるはずもないものがつながってしまう奇天烈な世界を歩きまわる話になるのだが、そこはさすがファンタジー作家、独自の論理でそれらがつながっていることを読者にわからせるのが上手い。

  • いつの間にか奇妙奇天烈な世界に迷い込んでしまった主人公。これは、夢か幻か。まるで『鳥獣戯画』のような不思議な出会いが過去を呼び起こし、絡まった記憶の糸は次第にほどけ始める。作品としては冒頭から取っつきにくく、「何これ? わけがわからない」と混乱しそうになる。それでも、前の晩に見た支離滅裂な夢を誰かに話して聞かせるときのように、心に浮かぶイメージに抗わないで読んでいくと、案外すっと物語に溶け込めた。私たちが眠っている間に見る夢は、究極のファンタジーなのかも。

  • とてもよい作品だった。植物園で働く主人公、佐田豊彦は、不思議な旅に出ることになる。理屈で説明できないことの連続に、最初は腹を立てることもあった豊彦だが、この一連の不思議な出来事が自分にとってどのような意味を持つかを理解してからは、少しずつ変わっていく。

    美しい自然の描写と、現実とファンタジーの上手い融合が梨木作品らしい。ストーリーの内容も、雰囲気も、とても気に入った一冊です。

  • 植物園で働く佐田豊彦は何年か前に妻を亡くし、一人で下宿先と職場を往復する日々を送っている。

    突然襲ってきた歯痛のために通うことになった歯医者。
    植物園から時折聞こえてくるという赤ん坊の泣き声。
    幼いころに下女として世話をしてもらった千代。
    亡くなったと思い込んでいた妻の千代。
    大事にしていたウェリントン・ブーツの行方。
    カエル小僧へ芽生えた思い。

    迷いこんでしまった巣穴での不思議な出来事。

    本当に不思議な話。。。
    最後まできっちり読まないと結末もなんだかよくわからない感じ。

    下女だった千代は突然姿をくらまし、妻は亡くなったと思っていたが
    実際は下女の千代は川に流され溺死したのを目の前で見ていたし
    その千代と同じ名前である妻は改名して今も一緒に暮らしている。

    現実にいる筈なのに空想と妄想のなかをさまよっている感じ。

    実に読むのに時間がかかった!!!!!)^o^(

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f植物園の巣穴の作品紹介

植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。

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