f植物園の巣穴

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著者 : 梨木香歩
  • 朝日新聞出版 (2009年5月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505880

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f植物園の巣穴の感想・レビュー・書評

  • 梨木香歩さんの一風変わったファンタジー小説『f植物園の巣穴』。昭和初期らしい時代を舞台にした日本版アリス・インワンダーランドと言ったところか。主人公が巣穴に落ちるという事故を経て様々な不思議経験をすることとなり、ついには自分の過去の姿おも見かけるようになって行く。その不思議な経験を通じで自分のあるべき姿、自分の守るべきものというものに気付いたときに現実の世界に戻って行く事が出来、そこには新たな幸せの種が待っている事となる。こう書いてしまうと随分さっぱりとした読みやすい小説のようだが文体が美しいのだがちょっと昭和風というのか古風あので少し読みづらく、加えてファンタジー小説であるが故の話の若干の複雑さもあるので結構読み応えがある物語だった。
    そんな昭和風味のファンタジー小説を読むBGMに選んだのはMichael Breckerの"Nearness of you". 二曲だけ客演のJames taylorがジャズアルバムなのに不思議だけどいい。

  • 「不思議の国のアリス」おじさん版かな(笑)
    亡くなったものとしていたなんてちょっとびっくり

    自分も今の生活がまぼろしの様に感じることがあるんだな

  • 前半、読むのが大変だった。
    どこがどうつながるのかさっぱりわからず、不思議な雰囲気が続く。
    坊と共に佐田豊彦が自分を振り返っていくと、これまでの伏線が次々に繋がっていって、読む速度が上がった。
    坊のように素直でありたい。
    何が現実なのか、本当に確かめなければならないことは何なのか。
    難しくて、すぐ理解できそうもないけれど、宝物のような何かが隠されているように思います。少し寝かせてまた改めて読み返してみたい。

  • わりとテンション異色?でしたよね今回。
    『家守綺譚』とかのテンションだと思ってた・・・全然違った・・・幻想小説?と思わせといて実は全部繋がってたラストにはぞくぞくしたな・・・。

  • 2016.01.03

    夢現の境が見えない不思議な、神話のような世界観。
    私、の意識と共にとぐろ巻く時間を降りて行く。

  • 不思議な物語。
    植物園に勤める男が、ある日「隠り江」に迷い込み、生まれてこなかった息子と、ねえやの千代や妻の千代という「千代」の記憶を取り戻していく。

    ぐるぐると取り込まれるようで、一気に読みました。
    時代的には昭和初期位?その時代が好きなので、どっぷりつかってしまった感じですね。

    最後に妻のもとに帰れてよかったです。
    千代さんかわいい人ですね。

  • 過去をめぐる。滞っていた水がめぐりはじめる。
    男が落ちたのは木の穴か、男自身の歯の穴か。そこにいたのは別れた愛しい人、欠落していた記憶。悲しむべき時に悲しまなかった、胸の痛みを感じるべき時に感じなかったかつての自分。穴の中でそれらと対峙し再生する物語。
    木の「うろ」は空/虚/洞と書くけれど、「無」ではない。うろの奥には、新しい芽/萌/愛があったのだから。男はそれを見つけたのだと思う。
    梨木さんの美しい文体は植物の瑞々しさと呼応し、細胞のひとつひとつをひたひたと潤していく。じんわり温かい気持ちになった。
    《2014.11.15》

  • 古風な言い回しの文体は嫌いではないしむしろ好きなのだけど、夢と現が奇妙に交錯する展開が何故か非常に眠く感じられてなかなか読み進めることができなかった。でも、坊の正体が分かった途端なんだかすごく切なくも温かい気持ちに。なかなか良いお話しだったなぁ、と^^ できればジ○リあたりの映像作品として見てみたいですね。

  • 植物園勤務の主人公が、樹の根元から落ち込んだ先で、次々と不思議な出会いをしながら進んでいく。
    「不思議の国のアリス」の梨木さんバージョン。
    読みながら、夢であるがゆえの滑稽無糖な不可解な展開に少し『酔い』のようなものを感じて、あまり読後感が良くなかった。
    文章使いは相変わらず美しく、丁寧な感じで好き。

  • しくしくとした歯の痛みに耐えかねて、ついに歯医者を訪れたその時から、植物園に園丁として勤める「私」の世界はどんどんと位相がずれていくようである。歯科医の「家内」や下宿屋の家主はどうも犬や鶏に見えるようであるし、時間と季節が噛み合わぬ。まるで、自分の歯にぽっかりと空いたうろの中に、自分自身が落ち込んでしまったようだ・・・
    『家守奇譚』など明治時代の紳士たちを主人公にした著者お得意の作品群に連なる物語。よくもこんな遠い時代の男性の内側に入り込んだような文章が自然に出てくるものだと感心する。まるでアリスの穴に落ち込んだ夏目漱石の冒険譚でも読むように、ユーモラスで奇妙だが心地のよい世界だ。精いっぱい威厳をたもとうとしながら、なすすべもなく奇妙なできごとに翻弄されてしまう主人公が情けなくも滑稽。だが亡き妻についての回想からすると、妻の心を思いやろうとしない独善的な冷たさをもった人物でもあるようだ。落下を続ける「私」は時間をさかのぼり、羊水の川で生まれなおして、自意識の底に押し込めてきた「千代」たちとの関係を生き直すことになる。
    儒学教育を通じて女性蔑視を叩きこまれ、洋装のように近代的合理主義をまとった明治の男である主人公は、大切な存在であるはずの女たちを切り捨てることによって、自分自身が生まれてきた世界とのつながりを失って、心にぽっかりとしたうろを抱え込んでしまっていたのだろう。『僕たちはどう生きるか』執筆の過程を通じて性暴力とマスキュリニティの問題について考えざるを得なかったであろう梨木さんが、明治以来無理を重ねてきた男たちに生き直しを優しく促している、そんなふうに見える物語だ。

  • 自暴自棄というのはこういう境地を言うのだろう。やってみて初めて分かったことだが、自分の名前を自分自身で大声で呼ぶと気が遠くなりそうになる。内側と外側を分ける壁を、内側から激しく叩いているような衝撃を感じる。自分が分解されてゆきそうな、自分のどこか、何かにひびが入ったような気さえする。
    (P.134)

  • 前半のあの独特な雰囲気にはまれなくて。
    だいたいイメージしてその作品に入り込むのだけど、まったくイメージできなかった。
    難しい言葉が多かったので、私の読解力が足りなかったのだろう。
    ところが、坊が出てきた後半部分からは、すごくのめり込んで、1日で読み切ってしまった。
    坊の正体とかあまり深く考えていなくて、わかった時にはただ素直に感動した。
    そして坊に名前を付けてあげたところでは、坊の嬉しそうな顔が浮かんで少しウルッときて。
    お別れする時には切なくて…。とにかく不思議な本だった。

  • 最近のミイラ研究で明らかになったのは、古代エジプトの歴代ファラオの死因(この場合は病死)の中で当時の病死で一番多いのが「虫歯」や「歯周病」がもとになって引き起こされる「敗血症」であったという。それほどまでに歯は重要な器官らしい。

    歯痛に悩む植物園の園丁、佐田はある日巣穴に落ちてしまう。そこは異界への入り口だった・・・。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、佐田はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

    歯科医の「家内」である犬、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。

    妊娠4ヶ月で儚くなってしまった妻の千代や、ねえやの千代の思い出、子供に戻ってしまった身体で辿る記憶の旅。

    混乱と戸惑い。どこまでが現実でどこからがそうでないのか、境目が分からなくなる。川上弘美さんの作品にもこの雰囲気、あるなぁ。

    最後、オシリス神のように復活を遂げる千代。佐田も再生されたのかもしれぬ。

  • 『生き方に「癖」というべきものが、ついてしまっていた。』
    月下香、白木蓮など、様々な植物の風景描写と幻想的な世界観のなかで、「私」は複数の「千代」との記憶の旅をする。
    とても美しくて、粛々とする物語。

  • 作者の梨木香歩さんは、本質的にファンタジー書きの作家なのだなあと、深々と納得した。
    植物園に務める佐田豊彦氏の心の旅が描かれており、心の旅という性格上、普通はつながるはずもないものがつながってしまう奇天烈な世界を歩きまわる話になるのだが、そこはさすがファンタジー作家、独自の論理でそれらがつながっていることを読者にわからせるのが上手い。

  • 不思議な感覚のするお話。まるで夢を見ているような、自分が何か別の生きモノにでもなったか錯覚に陥る。
    いつの間にか迷い込んで、入り込んでしまったウロの中・・・。
    自分自身の忘れてしまった過去と溶け合って、その中で元の世界へ戻る為の旅をする——。
    自分が忘れてしまっていることは本当は何なのか少し考えてみたくなるようなお話。

  • 魑魅魍魎の異界を漂いながら読み進めていくと、最後にちりばめられていた伏線が一挙に繋がります。忘れ去られていた記憶だとか、日本語の美しさだとか、植物がゆらめく風景だとか、全てが相交て切なくやさしい。心が洗われました。

  • 薄いのに読むのに時間がかかった。
    「どこにいくんだ」という感だけども、やっぱりこの雰囲気はなんか好きです。進むにつれ予想外の展開になったりでびっくりした。
    坊かわいい。

  • いつの間にか奇妙奇天烈な世界に迷い込んでしまった主人公。これは、夢か幻か。まるで『鳥獣戯画』のような不思議な出会いが過去を呼び起こし、絡まった記憶の糸は次第にほどけ始める。作品としては冒頭から取っつきにくく、「何これ? わけがわからない」と混乱しそうになる。それでも、前の晩に見た支離滅裂な夢を誰かに話して聞かせるときのように、心に浮かぶイメージに抗わないで読んでいくと、案外すっと物語に溶け込めた。私たちが眠っている間に見る夢は、究極のファンタジーなのかも。

  • とてもよい作品だった。植物園で働く主人公、佐田豊彦は、不思議な旅に出ることになる。理屈で説明できないことの連続に、最初は腹を立てることもあった豊彦だが、この一連の不思議な出来事が自分にとってどのような意味を持つかを理解してからは、少しずつ変わっていく。

    美しい自然の描写と、現実とファンタジーの上手い融合が梨木作品らしい。ストーリーの内容も、雰囲気も、とても気に入った一冊です。

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f植物園の巣穴の作品紹介

植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。

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