- Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022506276
作品紹介・あらすじ
昭和初期を舞台にした、仰天"女中小説"連作。
感想・レビュー・書評
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意欲作だが、隔靴掻痒。
中島京子さんはインテリだと思うし、彼女の教養はここでもフル回転されている。また筆力があるので、読ませるように書けている。
それがいけないのだ。教養が先に立ってしまっている。何かが足りない。昭和の初期から女中や女給、踊り子と、女の底辺を舐めて生きてきた主人公のすみを、どこまでも突き詰めて描ききることができていないのだ。ラストもありきたりだ。トリビュートものなので限界があるのか、作品全体に品が良過ぎて、中途半端に終っている。それは中島京子さんの育ちのよさの反映ともいうべきものだろう。
同じ題材を岩井志麻子氏に書かせたらどうだろうと思った。たぶん主人公は生き生きと動きだし、読むものの気持ちをわしづかみにして、吐き気を催すほどに、この嫌な女、すみの血肉あふれるほんとうの姿を描きだせるだろう。
たぶん、中島さんはこの作品でそう挑戦したはずだ。でも、足りない。中島さんは他の作品を読んでいてもわかるが、底辺の人間を書かせると、どうしても靴の上から痒いところを掻いているようになる。
作家には書きたくても書ききれないものがある。それは悪いことではない。個性というものがあるからだ。そのことに気づいたとき、作家はぐっと伸びる。中島さんは「さよなら、コタツ」に出てくるような育ちも品もそこそこいい女性の日常なんかを書かせるとグッとうまいのだから。
中島さんの直木賞受賞作も女中の話という。きっと作者はそのあたりを解決できているのではないか。図書館に予約しているが、まだ順番がこない。どんな変化を遂げているのか、早く読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
R4/12/24
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大正の末期生まれの貧しい女、すみ。
その女性の逞しくも、生き抜くことにかけては、明暗併せ持ち何者も排除しない生き方。
特に教養があるわけではない、誉められた生き方もしていない。
だが一貫して自分の人生は誰にも渡さず生きてきた。
最後に秋葉原のメイドカフェに勤める女の子、りほっちに語る形でその物語を語るお話。
中島京子はこの時代のアンニュイな雰囲気をうまく仕立てる。 -
[private]昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による女中小説があの『FUTON』の気鋭作家によって現代に甦る。失業男とカフェメイドの悪だくみ、麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる女中、麻布の変人文士先生をお世話しながら舞踏練習所に通った踊り子……。レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。[/private]
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小さいおうちと比べるとちょっとビターな感じの女中話。多分元ネタを知ってる方が面白いと思う。でも妙に引きつけられてぐいぐい呼んでしまう話…
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相手のことを考えなければならない仕事はあたしには務まりそうにないね。
この中なら文士さんのお宅ならなんとか行けそうか。ってほぼ用事がない、夜に出歩けそうってところがなんとかなりそうと思うだけだが。いやー、やはり他人の生活に介入するのはちょっとね〜。 -
解説を読んで、底本?元本?の存在に気付きました。底本を読んでからの方が自分にはよかったかも。
過去の混沌と現在の日本の混沌の融合なのかな?読んでいてかなり暗い気持ちに。悲しい。 -
秋葉原に住むおばあちゃん、スミさんが、昭和初期の女中やカフェーの女給をしていた時代を昔語りするという話。
小さいおうちのタキさんよりは少し年上、かなりハスっぱな女性だった様子のスミさん。
3つのお話も色っぽいものばかりですが、面白かったです。
こんな話を聞かせてくれるおばあちゃんが近くにいたら楽しそう。
最後のシーンは、秋葉原の事件と繋がるようで、驚かされました。
オマージュとなる3作品は知りませんが、さらりと楽しく読了しました。 -
スミという名の女中
おばあちゃんと呼ばれるほど年を重ね当時のことを語る
昭和初期が舞台、あやしげな雰囲気で異次元の世界のような感覚で読みました