- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022507860
感想・レビュー・書評
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この本を出版するにあたり、森見氏のサイン会が梅田で開催される事となった。私はそれを非常に楽しみにしていたのだが、私の勘違いで、気付いた時には整理券は定員に達しており、サイン会に参加できなかった。悔しいので(単なる逆恨み)本は買うまい!と思っていたのだが、発売当日書店でこの本を見た途端、持ってレジに向かってしまったのだった。それほどにこの本のカチッと四角い装丁が気に入った。表紙の質感も好きだし、カバーを取った中表紙も可愛い。この本にサインしてもらいたかった…。
さて内容は祇園祭宵山の日に、世間を揺るがすぽんぽこ仮面(善人)を追いかける追走冒険劇。
森見作品らしく、万華鏡のように次から次へと溢れ出てくる不思議な世界。宵山の一日にぎゅっと濃縮された森見ワールドを堪能した。京都の地理はなんとなく頭に入っているものの、Google Map片手に読むのも面白かった。
購入してから読み終わるまで時間がかかったのは、内なる怠け者のささやき故でした。私も主人公の小和田くんに負けず劣らず怠け者だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ユーモラスな森見ワールド☆
とぼけているけど、破天荒な面白さです。
正義の味方「ぽんぽこ仮面」に跡継ぎと見込まれたのは怠け者の小和田君。
なぜか、ぽんぽこ仮面を追う人たちが現れて‥?
宵山の土曜日に、京都の町で巻き起こる大騒動を描きます。
勤め人の小和田君は、家ではひたすら寝ていたい人。
ぽんぽこ仮面に跡継ぎになるよういわれますが、断り続けています。
ぽんぽこ仮面とは、かわいい狸の手作りのお面をかぶり、旧制高校のマントをはおって、小さな親切をして歩いている謎の人物。
怠け者の小和田君はいっこうに興味がわきません。
家ではゴロゴロ寝ているか、「将来お嫁さんを貰ったらしたいことリスト」を作るのが楽しみというのが、笑えます。
週末に探偵の助手をしている玉川さんという女の子が、ぽんぽこ仮面を追っています。
かなりグウタラな浦本探偵が、ぽんぽこ仮面の正体を突き止めるよう依頼されていたのです。
何者が何の目的で‥?
恩田先輩と彼女の桃木さんは、土日を充実したものにするよう、いつもスケジュールぎっしりに計画しています。
小和田君の先輩なので、毎週声をかけてくるけど、小和田君が応じるのは3週に一度ぐらい。
この対照的なカップルの行動と、方向音痴な玉川さんが絡むことで、事態はどんどん動いていき、さらに、他の作品に出てきた京都の秘密のようなことが絡んできて‥?
ぽんぽこ仮面の正体と、追っていた人たちの意図は‥?
学生の集団も出てきて、初期の作品を思い出したり。
事件の渦中に小和田君が本領発揮して眠り込んじゃうのが、おかしい。
新聞に連載された作品を全面改稿したとのこと。
じつは連載を読んだはずなのだが、思い出せない‥
元のストーリーを知りたくなったけど、まあ作者が忘れてほしいんでしょうね。
意外と集大成的な、まとまった話に変わっているような。
森見作品を読むならば「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」「宵山万華鏡」がオススメで、この3作を読んだ後のほうが、この作品はわかりやすいです。「太陽の塔」も関連ないこともないかな。
全然読んでないと、SF並みに独自なイメージの奔流って印象になるかも? 大冒険じゃなくて小冒険、と作者が言ってる通りなんですけども(笑)
あ、「ペンギン・ハイウェイ」もいいんだけど、こちらは別系統の話です☆ -
京都を騒がす謎の怪人・ぽんぽこ仮面。
ボロボロの旧制高校のマントをまとい、かわいらしい狸のお面を付け、困っている人々に手を差し伸べる正義の怪人です。
そんなぽんぽこ仮面の後継者になぜか選ばれてしまったのが、本書の主人公で目が覚めるほどの怠け者・小和田くん。
舞台は京都・宵山の日。
長い長い土曜日の幕開けでございます…。
いやぁ、待ちわびておりました、登美彦氏!
『宵山万華鏡』で幻想的で魅惑的、何が起きても不思議ではない宵山を描かれていましたが、それと通じる物語でした。
『宵山~』のほうはやや不気味さを感じましたが、こちらは好奇心を刺激される冒険譚です。
宵山の日は世界の境界線がゆるゆるほどけ、見知ったはずの町は姿を変える。
誘われるがままに、導かれるままに、ただただ転がる方向に転がっていくのが怠け者の冒険スタイル。
小冒険を嗤う者は小冒険に泣く。
世の怠け者諸君、小和田くんと一緒になすがままに転がろうではありませんか!-
けーこさん、コメントありがとうございます!
自分の中の怠け者心が刺激されますよ~。
ぜひ楽しんでください(^^)けーこさん、コメントありがとうございます!
自分の中の怠け者心が刺激されますよ~。
ぜひ楽しんでください(^^)2013/06/08
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「聖なる怠け者の冒険」(森見登美彦)を読んだ。 森見登美彦作品読むのはまだ三冊目だね。
読んでいて楽しいのって大切なことだよ。
これを読むと京都に住んでみたくなる。 (今は帰省中だが)大学生の息子は京都で一人暮らしをしているわけで、なんか羨ましいぞ。
(聖ならぬ)怠け者の私としては登場人物全てに賛辞を捧げたい。 -
京都に現れた謎の怪人、ぽんぽこ仮面。
『八兵衛明神の使い。万人に親切な怪人。愛すべき狸野郎。」(p.16)
困っている道ゆく人達を手当たり次第に助けて回る善なる存在がぽんぽこ仮面である。
怪人的物語、或いはDark knight 的物語にはVillainの存在がつきものである。
バットマンのジョーカー然り、アンパンのバイキンマン然り。
しかし、ぽんぽこ仮面の敵役はわかりにくい。
これといったVillainは特段いない。
もちろん、謎の組織「テングブラン流通機構」やその走狗「大日本沈殿党」、「閨房調査団青年部」或いはそれらを司る「土曜倶楽部」云々、種々累々の秘密結社とぽんぽこ仮面は対決することになる。
しかし、ぽんぽこ仮面の真のヴィランは「怠けたい」という気持ちだったのではないか。
「怠けたい」はこの高度資本主義社会に到達した日本では、抑圧されるべき悪い感情である。
少なくとも、苦労は買ってでもするべしという価値観は健在であり、たとえ休日であっても、土曜日であっても、その土曜日を『無限に拡張』しようと試みる事が善しとされている。
ぽんぽこ仮面も等しくこの価値観に支配されているようだ。
『「眠るのではない。少しばかり目を閉じて、α波を出すけれども気にするな。眠るのではない」』
そして、真の主人公?である小和田くんは「怠ける」事が生きがいのぐうたら青年である。
彼は夢の中でバカンスへ赴き、夢の中で退屈な夢を見る男である。
物語後半、ぽんぽこ仮面は窮地に陥る。
その窮地を助けるのはこれまで敵視していた「怠け」である事はもはやお決まりなのかもしれない。
しかし、兎角現代は極端である。
24時間働き続け、徹底的な効率化かつ合理化、ダウンサイジングで市場価値が高まる社会構造「一億総活躍」が大号令である一方で、『まだ東京で消耗してるの?』的なる「働き方改革」も同時並行的に追求されている。
どちらかが善でどちらかが悪という構造よりもむしろ、一方にとって一方が悪であるという交流不可能な一方通行両極端な社会となってしまった。
しかし、ぽんぽこ仮面も等しく怠けたい心があり、同時に誰かの役にたちたいという心が共存しているように、我々だって、ほどよく頑張り、ほどよく怠ける心が共存していて然るべきである。
『「わかってますよ。アンビバレントであることは承知してます。でも、これは仕事ですから。」』(p.68)
ぽんぽこ仮面の物語を通じてこんな事を考えてしまっているようではまだ怠けが足りないのかもしれない。
小和田くんを見習って「将来お嫁さんをもったら実現したい事リスト」を作ることとしよう。
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「なむなむ」
「何をなむなむ言ってんの?」
「万能のお祈りの言葉なのよ。なむなむ」
「独身寮にある愛すべきパソコンが桃色データの負荷に耐えかねて、やけに発熱するようになってしまった、どうしてくれよう。」
『ああ、素晴らしきものよ、汝の名はお布団なり。』
「多くの人は、ただ漫然と動くのを止めさえすれば休むことができると思いこんでいる。しかし我々に必要なのは、じつは動きを止めることではない。正しいリズムを維持することです。マグロのように泳ぎ続け、疲労の向こう側へ突き抜けること。これがコツです。」
「若いうちに遊んでおかなかった人間というものは、歳をとってからヘンな汁が出てくるのです。男汁は若いうちに出し切っておかねば、ワタクシのようにステキなおっさんにはなれません」
「気をたしかに持て。部屋に籠って『将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト』なんて阿呆なものを作ってるから、そんなふうに思い詰めるんだよ。」
『黙って逃げる若い女と、追いすがる若い男。傍目から見れば「痴情のもつれ」以外のなにものでもない光景を一瞥して、道ゆく人々は「なんだ痴情のもつれか」という顔つきをした。』
「みなさん。他人の妄想を邪魔する者は、馬に蹴られて死ぬそうです」
「宵山なのに温泉なんかに入る。これが宵山温泉」
「よいやまおんせん」
「二人は仲良し」
「ふたりはなかよし」
「本当にアルパカにそっくりだったんだよ」
「どうせ大げさに言ってるんでしょ!」
「アルパカによく似た人か、もしくは人によく似たアルパカだな。きっと前世はアルパカだ。そして来世もアルパカだろう。」
『恩田先輩の言う通り、前世から来世に向かう束の間に、たまたま人間界に立ち寄ったかのような、みごとなアルパカぶりだった。』
「我々は人間である前に怠け者です」
「眠るのではない。少しばかり目を閉じて、α波を出すけれども気にするな。眠るのではない」
『内なる怠け者の歴史は長い。我々は人類であるよりも前に、まず怠け者であった。ご先祖様が木の上で暮らすのをやめたのは、木に登るのが億劫だったからである。勤勉な猿たちが木登りテクニックに工夫を凝らして高みを目指していたとき、木登りを苦手とする怠け者たちは地べたでグウタラしていた。ある日、幸運にも落雷がこんがり焼いてくれたイノシシをみんなで分け合いながら、「あれ? 木登りできなくても問題なくない?」と気づいたパイオニアがあり、人類史に栄光の新地平を切り開いたのである。』
「小和田君、だらしないことを言うなよ。人間として恥ずかしくないのか?」
「僕は人間である前に怠け者です」
『あくびというものは伝染する。あくびとは内なる怠け者の咆哮である。』 -
森見登美彦的、京都世界の全容にして、素晴らしき土曜日賛歌。
怠け者賛同者よ刮目せよっ笑
ぽんぽこ仮面なる善良な怪人から二代目を見込まれた小和田君の、
宵山における一日の出来事です。
世界で一番怠け者な探偵とか、
その助手の方向音痴な女子大生とかでてきます。
あと、八兵衛明神様。
きれーいに話の収集がつくわけではない感じも、世の条理というか、
わたしはすきです。
朝日新聞の夕刊連載から全面的に改稿されたらしいです。
最近、がつがつ働いてたので、ちょっと肩のちから抜けましたー
ゆっくり休んで、また月曜日から働くのだっ!
休日用のプロトコル
「充実した土曜日の朝は、熱い珈琲とタマゴサンドウィッチから始まる」 -
休みとは有意義に生きんとすれば無駄になり
無意義に生きんとすれば結局無駄になる、仕方がないので何も考えず休むのが一番有意義である
あと一番面白かったのがぽんぽこ仮面の秘密基地の場所でした。 -
「有頂天家族」のアニメを見終わって、
この人の作品を読んでみたいなぁと思ったのがはじまり
この人の書く、京都は魅力的でつい行きたくなってしまう
恩田先輩と桃木さんが個人的に好きで、
この人達のような休日の過ごし方もいいし、
小和田君のような休日の過ごし方もいいなと思った
あと、ぽんぽこ仮面のお面欲しいなと思った(笑) -
えっと、不思議の国のアリスを読んだ感じ?とにかく漫画的な節回しがテンポよくて、厚い本でも一時も飽きずに読了しました。新聞で連載されていたと知り、これは読者を真っ二つに分けるだろうな、と余計なお世話的感想も(私は好き)。全面改稿されたとぴうことで、元版も読みたかったなーと思ってみたり。この小説の連載期間中、この新聞取ってたけど、小説読んでなかった時なので・・・もったいないことしたー!!!