夢の国

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022507907

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  • 著者は無期懲役囚という略歴に驚く。韓国の貧しい農家に生まれた男が、夢と希望を持ち日本にやってきたところからの物語。鉱山労働者から用心棒となり金貸の成金になる男はとにかく力が強く喧嘩に強い。意志の強さと激しやすさと怖いもの知らずの闘争心で登り詰めていった。喧嘩・暴力の描写には圧倒された。壮絶だ。あまりに強烈で内面の心理描写がもの足りないくらい。この猪突猛進の主人公にも時には回顧したり逡巡したこともあったと思うのだが、そういったことは全く書かれていない。この男のことを理解することはできなかった。後半生き甲斐となる息子翔太の半生が描かれる。翔太については、作者が投影されているようだった。読み終えて今、翔太の人生が悲劇に思えてならない。罪を犯したということだけでなく、あまりに父の影響を強く受けすぎてしまったために、彼自身の人生を生きることが出来なくなってしまったことが可哀想でならない。著者には「人を殺すということはどういうことか 長期LB級刑務所・殺人犯の告白」「死刑絶対肯定論 無期懲役囚の主張」などがあるそうだ。特異な生育環境にあった著者の本をもう1冊読んでみようかと思う。

著者プロフィール

美達大和
1959年生まれ。無期懲役囚。現在、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で仮釈放を放棄して服役中。罪状は2件の殺人。ノンフィクションの著書に『刑務所で死ぬということ』(小社刊)のほか、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)、『死刑絶対肯定論』(新潮新書)、『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『私はなぜ刑務所を出ないのか』(扶桑社)、小説に『夢の国』(朝日新聞出版)、『塀の中の運動会』(バジリコ)がある。また「無期懲役囚、美達大和のブックレビュー」をブログにて連載中。http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/

「2022年 『獄中の思索者 殺人犯が罪に向き合うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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