週末は家族

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 285
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509253

作品紹介・あらすじ

シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女ひなたの週末里親になって、特殊な人材派遣業に起用することになるが-ワケあり3人が紡ぐ新しい"家族"の物語。

感想・レビュー・書評

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  • うわぁ〜何だこれ!
    めちゃくちゃ爽快な作品だった〜‼︎
    桂望実さん初読みだったけど。

    シェークスピアを神と崇めて小劇団を主宰する大輔
    他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂
    この二人は互いに理解した上で親友となり、世の中の色々な手続きが便利だと夫婦として長く暮らしてきた。
    大輔は劇団資金の為の副業で劇団員を派遣する仕事をしている。
    入院した親に恋人のふりをして会って欲しい
    家族として口うるさい親戚の法事に出て欲しい
    なんてよくあるあれです♪

    子役が欲しいからと言う理由で養護施設で週末里親というシステムがある事を知り、見学している時にたまたま施設の劇をみて演技の上手い「ひなた」を見て週末里親になるのです。

    育児放棄され施設に入った彼女はとにかく強い!
    母親と一緒にいるよりは施設がいいが施設にいるよりは外の世界にいられる里親の方がいい…

    最初は3人が別々の思いでこの関係を何とかやり続けようと頑張るのだが…

    作中にちょっとしか出てこない瑞穂の親友
    とても良いキャラなんですが、彼女が悩む瑞穂に言うセリフが印象的。

    「親子はこうあるべきだって…そういう思い込み、勘弁して欲しいよね。すっげー酷い親だったとしても、親と子供は一緒に暮らすべきだって、そういう宗教じゃん、日本って。そんなことないよ。全然ないよ。別れて暮らす方が幸せな場合だって、たくさんあるはず。スットコドッコイなヤツでも、オタンコナスなヤツでも、子供を産めちゃうんだからさ」

    互いに理解し合うナイスな3人が家族ではない素敵なチームになる話を胸のすく思いで読みました♪

    良い人、良い子…世間の思い込みでモヤッとしてる人に読んで欲しいな(^-^)



    • ひまわりめろんさん
      むむ
      みんみんはすんごいおもろいやつはレビュー長くなる傾向あるから要チェックやな
      むむ
      みんみんはすんごいおもろいやつはレビュー長くなる傾向あるから要チェックやな
      2023/03/20
    • みんみんさん
      もうわたしの思ってる事が小説になってたわ笑
      でも正反対の意見も知りたい(〃ω〃)
      もうわたしの思ってる事が小説になってたわ笑
      でも正反対の意見も知りたい(〃ω〃)
      2023/03/20
  • 作者である桂さんの本は毎回「なるほど」って思わされます。
    きっとテーマを決めて、そのテーマを表すのに最も適した設定・環境を用意し、肉付けしていくっていう書き方なんだと思います。
    だから、きっとテーマがぶれないんでしょうね。

    今回は「世間の思い込みに囚われるな」っていうテーマでした。
    主人公は、打算的に友人関係から夫婦になった二人と、そこに週末だけ子供として家族になる女の子。
    こうやって書くと、ドロドロしてそうな話ですが、内容はカラっと爽やかです。

    普通とは違う主人公たちは3人とも、世間と外れていることに悩んだり、ストレスを感じています。
    でも、そんなことで苦しむ必要はないんだ!っていうのがこの本の結論。
    人生楽しんだもの勝ちっていうのは、頭では分かっていてもなかなか難しいですよね。
    勉強になりました。

  • 『幸福ロケット』読了後、続けて手に取った本書にも小学4年生が登場。しかも「こんな10歳がいるかよ」と思っちゃうような小学生が。まあ、そんなことはいいのいいの。ウルッときて、ひなた頑張れよ、とエールを贈りたくなるいい小説でした。

  • 家族でも友達でもない、こんなチームがあっても良いと思えた。

    シェイクスピア馬鹿の大輔も、心配性ですぐオロオロしちゃう瑞穂も、誰かに受け入れられたいと願うひなたも、一塊になればなかなかどうして良いチーム。
    シェイクスピアの話ばかりを長々とする大輔は、身近にいたらちょっとうざいだろうけどなんか憎めない。すぐパニック起こして動揺する瑞穂を、ひなたが母親のように背中を撫でながら宥める一見逆転しているような関係性も心地良い。

    ただ一つ気になったのは、無性愛者だという瑞穂の設定。それ必要だったかな?
    二人が結婚する理由に繋がってくるから、必要と言えば必要なんだろうけど・・・。あまり物語に絡んでこないというか、その設定にするならもう少しそれを生かして欲しかったかもと思ったり。

    三人がそれぞれ笑いを堪えようと自分の太ももを叩きながら、それでも堪えきれずに大笑いするシーンに、読んでるこっちも楽しくなって思わず笑う。
    はたから見たら、だいぶ珍妙な光景だけど。
    うん、でもやっぱり良いチームワーク。

  • シェイクスピアに心酔する劇団主催者、大輔とその妻で男性を愛する事が出来ない無性愛者の瑞穂は週末だけ児童養護施設から、ひなたという少女を預かり疑似家族になる。
    その目的は大輔が副業でしている人材派遣業-誰かの家族になり、演じるという仕事のため。
    ひなたの演技をたまたま目にした大輔がその子役としてひなたに白羽の矢をあてた。

    利害により結びつく三人。
    大輔は世間的な肩書きと結婚する事により得られる利便性のため、瑞穂と結婚した。
    瑞穂もその事は承知済みで、二人の間に男女の愛はないが、友情はある。
    そして、二人がひなたを子役として利用するのと同じように、ひなたの方も週末だけでも自分の自由になる時間や場を得る事ができる。
    そんな関係性の三人がそれを飛び越えて、徐々にお互いを人間として認め、心通わせていく。

    子供は親といるのが一番幸せ。
    結婚には愛が必要。
    そんな世間の固定概念を打ち破った話。
    人はそれぞれ違う。
    だから幸せの形もそれぞれだし、世間一般の幸せや概念にとらわれるとむしろ不幸になる事もあるんだって・・・そんなのを皮肉にも利害で結びついた三人が見せてくれる。

    最初、中盤くらいまで、大輔という男性があまりに能天気で無神経なので見ていてイライラきました。
    子供っぽいし、思い込みが激しいし、口癖ひとつとってもイラっとくる。
    でも、そんな男性も物語の後半では自分の思い込みに気づき、変わっていこうとします。
    その間、心の葛藤に苦しんでいる様を見て、人って心に葛藤をかかえて苦しんでいる時って、自分でも成長をしようとしている、今までと変わろうとしている、正に最中なのかもしれないなと思いました。
    そんな男性の成長していく途中の様子を見て、後半には憎めないヤツだと思えてきました。

    設定としては変わってますが、特に変わった事件や衝撃的な事がある訳でなく、淡々としたストーリーでした。
    そんな静かなストーリーの中に自然に自分の言いたい事を見せているというのがすごいと思います。
    初めて読んだ作家サンですが、これからこの人の本を読んでみたいと思いました。

  • 言葉を尽くす。
    思っているだけじゃ何も伝わらない。大事な事も些細な事も。

    周りの"思い込み"で何かしら話をされて「違うのに」と思った事があるから、形は違えど分かるなーと思う所もあって。
    読み終わったとき、私も"思い込み"に囚われずに、自分なりを大切にしていこうと改めて思いました。

  • この本で言う「思い込み」って「普通~」っていうことだと思うけど、この「普通」っていうのがなかなか曲者だ。

    普通は自分にとってであってそれぞれ違うもの。

    最近はそこを描いた本も多く、これもそういう一冊。

    児童擁護施設で暮らし十歳ながらかなり精神的に自立しているひなた、シェイクスピアに心酔する大輔、無性愛者で心配性の瑞穂。
    大輔と瑞穂がひなたの週末里親になったことから、演劇や特殊な人材派遣業を通じてお互いが少しずつ変わっていく。

    主人公はひなたなのかもしれないが、私には大輔、瑞穂(二人のキャラの設定がいい)が変わっていく様もなんだか良かったのだ。

    なにも大人ばかりが子供を育てるわけじゃない。
    大人も子供に育てられる。
    お互いに影響しあっているところがいいなぁ。

    もちろんこれで問題が解決するわけではないのだが、なんだか希望がもてる、なんとか乗り越えて進んでいけるのではないか、と思わせてくれるところがいい。

    そして、やっぱりシェイクスピアってすごいんじゃない、と思った一冊でした。

  • 例によってとっつきの悪い始まりで、何度も帯を読みなおしてしまった。

    「ワケあり夫婦と母親に捨てられた少女が紡ぐ新しい”家族”の物語」

    これだとけっこうウエットな内容なんじゃないかと思ったのだが、いきなりひなたのキャラクターに面食らった。
    「母親に捨てられた少女」という言葉から思い浮かぶかわいそうな感じが全然しない。
    さらには、「ワケあり夫婦」のワケがかなり意表をついた。
    無性愛者ときたか。たしか近藤史恵さんの「モップの魔女」シリーズの長編にそういう人が出てきたんじゃなかったか。
    どうして瑞穂が無性愛者という設定なのか最初はわからなかったが、最後まで読むと納得できる。
    まさに彼女はそういうタイプじゃなくてはならなかったのだ。
    瑞穂は大変な心配性であるが、その心配は常に本質をそれて枝葉末節に拘泥する。そして自分の心配に振り回されてパニックに陥るのだが、このあたり他人事ではなかった。私も瑞穂と同じような心配の仕方をする。そしてたいがいパニックになる。
    どうしてだろうと思っていたのだが、彼女を見ていて気がついたことがある。
    人間、本当のことをちゃんと伝えたり自覚したりしていないと、どうしてもそこにごまかしが発生する。そして本質をごまかしているのが常になってしまい、その上そのことから目をそらす癖がついてしまうので、他のことに対しても、枝葉末節ばかりが気になってしまうのだ。

    自分が他人の思い込みに辟易されているにもかかわらず、瑞穂はひなたとの週末里親契約について後ろめたく思う。それは「家族とはこうあるべき」という思い込みに囚われているからなのだが、そのことに気づくシーンがいい。高校時代の友人との会話で、瑞穂はそのことを教えられるのだ。

    「思い込み」はそこらじゅうにある。なぜそんなものがあるのかといえば、便利だからだ。
    一定の型にはめて、これはこういうもの、と決めつけてしまえば、いちいち個別対応しなくてもすむし、他人の問題に足を突っ込まなくてもすむ。
    大人と子供が一緒に入ればそれは親子なのだし、親と離れて暮らしている子供は親のそばにいたいと思っているものだ。年頃になれば結婚するものだし、結婚したら子供をつくるものだ。
    そういうことにしておけば、具体的に考えなくてもすむから、世間はそうしているのである。他人との適当な付き合いのための社交辞令だって、思い込みの上に成立しているのだし。

    でも、その思い込みから外れてしまった人間は、ひどく生きにくい思いをする。
    40すぎてもシェイクスピア三昧の大輔くんも、無性愛者で恋愛感情を持てない瑞穂も、母親を見捨てたひなたも、みな世間の思い込みから外れている。
    ひなたは子供な分、よりいっそう思い込みに悩まされてしまう。

    ひなたは「母親に捨てられた少女」ではあるけれども、ある時期から「母親を捨てた少女」になる。子供だから、幼いから、何もわからないということはないのだと思う。5年生くらいになったらかなりのことが感覚としてわかってしまうものだし。

    私も、世間にたくさんある「思い込み」や自分の中にある「思い込み」にずいぶん振り回されてきた。
    そのことで苛立ったり、落ち込んだりもした。今でも世間の思い込みには腹立たしい思いをすることがよくある。
    そういうものに決然と立ち向かうひなたは、かっこいいなと思った。
    ぐちゃぐちゃになっても、がんばって思ってることをちゃんと言えた瑞穂は素敵だ。
    そして、大輔も、大きな抵抗を乗り越えて変わっていった。現実にはなかなかこんなふうに変われる男性はいないと思うけど、こういう姿が見られるのが小説のいいところだ。

    桂望実さんの作品は、スタートダッシュがないんだけど、途中からの疾走感がすごい。いつも中盤あたりからページをめくる手を止められなくなる。そして読後感が爽やかで、充実感がある。

  • その子はある悲しい過去を背負った女の子でした。

    週末だけの里親の家に
    ある役割として預けられた一人の少女。
    彼女は当たり前にある幸せですら
    感じたことのない子でした。

    当たり前が当たり前じゃない環境にあること。
    そしてそれがかなわない環境があるということ。

    本当はひなたのような子は増やしちゃいけない。
    だけれども必ずどこかで出てきてしまう。

    それと子供はあんたら親の道具じゃない。
    幸せな環境になると勝手に思うな。
    血のつながった家族がよいとは限らないこと。

  •  凄く好きです。
    児童養護施設のひなた、劇団主宰者の大輔、(無性愛者の瑞穂と籍は入れている)人材派遣に起用する目的で、週末里親となり、十歳の少女と触れ合っていく物語。冒頭、これは虐待じゃないのと思ったが、話の展開は素晴らしい方向に。派遣の仕事でお葬式に、福岡でのシーンが特に好き。スカっとした、大輔君がとても魅力的。

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著者プロフィール

一九六五年東京都生まれ。大妻女子大学卒業後、会社員、フリーライターを経て、二〇〇三年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー。著書に『県庁の星』『嫌な女』『ハタラクオトメ』『頼むから、ほっといてくれ』『残された人が編む物語』『息をつめて』など。

「2023年 『じゃない方の渡辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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