シフォン・リボン・シフォン

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 187
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509796

感想・レビュー・書評

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  • 本屋だった店舗のあとにできたのはカラフルな下着屋さんだった。
    一話と二話は下着屋さんの外の人の話。
    三話・四話は、下着屋さんの話。

    それぞれ、心に刺さっている刺の話。
    誰もが、心にいくつかの刺を刺し、知ってか、知らずか、その刺と共に生きる。
    けれども、その刺は気がついて、自分で抜き、その傷を癒すこともできる。
    特に親から刺された刺は、深く長くとどまっていることが多いが、それも、自分の気持ち次第で、抜き、癒すことができる。
    そして、その時期は遅すぎるということはない。
    自分らしく生きていくためにも、自分に刺さった刺に早く気づき、抜いて、癒していきたいものだ。、

  • 『きれいな下着を身に着けると、自分がとても大切に扱われているような気がする。あなたがあなた自身を大事に扱っているのだから』
    近藤さんの本は好きです。
    かなえさんの下着に対する思いが自分と重なります。
    自己満足だけじゃない、気持ちを底上げしてくれるもの。
    きれいな下着が大好き。

  • 古びた街中のシャッター街にできた可愛いランジェリーのお店から展開する自分や家族と向き合う素敵なお話

  • 題名柔らかく、内容硬め。
    素敵なお店です。

  • ランジェリーショップか舞台でシフォン・リボン・シフォンってかわいらしいタイトルからキュートなお話なんだろうな〜って想像していたら結構ヘビーだった。

    娘の自尊心を傷つけてコントロールしようとする両親や、旧態依然とした父親、自分の子供の部屋を漁りプライバシーを許さない母親っていう毒親メドレーを食らっておどろく(旧態依然父は毒親とはちょっと違うかもだが)。キッツって思いながら読んでいたし、時々は口に出してた。

    それぞれの話の親たちのやったことってほんとに嫌悪感強いんだけど、子供はそれをきっぱり打ち捨てないんだよね。読んでる側からしたらキツいしムカつくが…。
    でも佐菜子は父母をほっぽらないし、篤紀は家を出ず、かなえは母と並んでテレビを見る。
    子供たちは過去に親にされたことはきっとずっと許せないだろうけれど、親は完璧な人間じゃないって知ったときに、少なからず支配から脱することができたのかな。

  • ランジェリー店を訪れる人や店主の話。メインどころ以外の登場人物のクソさが目立つけど、どこかスッキリする展開へ行くのでまだ大丈夫。ランジェリーで変わって行く人の心模様が豊かで面白かった。

  • もっと軽やかな話かなぁと思ったら、思いがけずずっしりくる部分もあったなぁ。
    でも、後味はすっきり。
    誰に共感するとかでもないけど、でもやっぱり人の根幹にあるのは家族なのかなぁってしみじみ。
    縁を切ってしまえば楽だろうか?
    だけど、切りたくないからしんどいし苦しい。
    ずっと大切にできたらいいけど、なかなかそうも出来るもんじゃない。
    でも気がつけたら、そこからやさしくすればいいのかな。
    大切だと思えたら、それに気がつけたら幸せことだ。

  • テーマ的に興味ないから、と思っていたら、どうしてどうして面白かった。この方の作品は自分と価値観が近いなぁと感じる。

  • 『シフォン・リボン・シフォン』 近藤 史恵 
           朝日新聞出版社

    隣町に大きなショッピングモールが出来てから、川巻町の商店街は半分以上が空き店舗になってしまった。まさに、田舎の寂れた商店街という感じ。
    母親の介護の為、大学を卒業後就職を諦め、スーパーのパートと家事と介護に明け暮れる佐菜子。仕事帰りの唯一の楽しみは町で一つだけの「さわやか書店」に立ち寄る事。しかし、その書店も閉店するするとあって、途方にくれる。ある日、元「さわやか書店」が内装工事をしているのを見かけた佐菜子は、淡いピンクに塗られた壁を見て、期待に胸を踊らせる。花屋だろうか?アイスクリーム屋やケーキ屋だったらもっと嬉しい…と。

    しかし、そこにオープンしたのは「シフォン・リボン・シフォン」と言うランジェリーショップだった。田舎町に突然現れたどう考えても場違いなランジェリーショップ。ショウウインドウには息を呑むような美しい下着が飾られていた。

    「シンプルなデザインなのに、肩紐にだけ、シフォンとビーズでできた薔薇の花が咲いている黒いブラジャー。白いコットンのブラジャーには、カットに沿うようにマーガレットの花の刺繍が施してあった。驚くほど面積の少ない官能的なショーツもあるが、なぜか少しもいやらしくみえなかった。あまりにそのものが美しすぎるのだ。」

    こんなショップ、この町でやって行けるのか…?周囲の好奇と多少意地悪な目が見守る中、店は静かな波紋を起こして行く。
    母親に大きな胸を「みっともない」と言われ続け、その言葉に支配され続けていた沙菜子。
    商店街の古株、米屋の主人と自慢の息子。
    今は没落した大地主の旧家の大奥様と、その嫁。
    そして、ショップのオーナーかなえ自身が、なぜこの川巻町に戻ってランジェリーショップを開くことになったかも語られて行く。

    夢のように美しいランジェリー、可愛らしいナイティー。…そして切除された乳房をフォローするプロテーゼを包むブラジャー。そう、この物語は美しいランジェリーショップと対比する様に、肉親である父親や母親に投げつけられた心無い言葉に深く傷つけられた人達、介護、親子、ジェンダー。病いに老い、ランジェリーに象徴される物への偏見が見事に織り込まれて語られる。

    美しくフィットするランジェリーに解放された沙菜子の「私、きれいな下着を身に付けると、自分がとても大切に扱われているような気がするの」というつぶやき。きれいなものしか見ようとしなかった為に現実を受け入れられない旧家の老女。
    自分を大切にする事。人に大切にしてもらう事は、誰かを大切にすることと深く繋がっていること。宝石の様に美しいランジェリーを巡って、重く避けられない人生の側面を見せられた気がした。

    近藤史恵さんは、コミカルなものも、そうでないものも幾つか読んで、作品に好き嫌いの波があったが、これを読んで初めて著者の両面を統合された物として受け容れられた気がした。

  • 題名と表紙から受けるイメージとは異なる内容で、「毒親が出てくる」ということを書いてくださったレビューのお陰で俄然興味がわいて読んでみた。

    私の親が毒親(であり、きょうだいにも問題がある)なのだが、普通のまともな家庭で育った人にはどうしても理解してもらえないことだし、人様に聞かせる話題でもない。

    しかし、たぶん私は自分が死ぬまで悶々として引きずっていくのだろう。
    唯一自分自身のカウンセリングのようなものであり、ストレス発散にもなるのが、「毒親」について書かれている本を読むことになってしまっている。

    小説であっても、「ああこの作家さんは『毒親(またはパーソナリティ障害)』についてよくわかっていらっしゃるな」と思うだけで、救われる。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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