家族の悩みにおこたえしましょう

著者 :
  • 朝日新聞出版
4.04
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本棚登録 : 83
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510044

作品紹介・あらすじ

臨床40年の経験を結晶させた、ふだんのカウンセリングでは伝えきれない著者の考え。回答がそうであるように、質問内容にもこれまでのカウンセリングのエキスが詰まっている。家族(親子、夫婦)、仕事、友人など多岐にわたる、28の問いと答え。

感想・レビュー・書評

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  • 家族の悩みって相談しにくいからこそ第三者が関わるべきと思う一冊。2012年に発売された本ですが現代にも通じる相談が多数あります。どれもとても深刻な家族の悩みで「こうすればスカッと解決!」というものはないというのが読んでいて人生や人間関係の難しさを感じさせられました。困ったら医師へ相談といっても現実は解決できないことが多いですよね。カウンセラーって自称できてしまうがゆえに玉石混交なのかもしれませんが合うカウンセラーなら決断の推進力になる可能性があると考えさせられました。

    ●「手を上げる」といわない
    それは暴力 といいます。その認識だけでも重要だと感じました。家族だから大目に見る、しつけとか相手に過失があるとか理由は問わないところが重要です。

    ●悩みは比べられない
    被災者の苦悩に比べたら私の悩みなんて… その比較は無意味だそうです。悩みは比べられないので、いつでも悩んでいいのです。

    ●家庭内の暴力で悩まれている方のなんと多いことか
    凪良ゆうさんの本を読んでみんな何かしらあるというのは感じていますが…。本当に悲しいことです。何かをきっかけに別フォルダにあった記憶が蘇ったり、その記憶が決断を邪魔したり…そういう方にきちんと寄り添うカウンセラーが報われてほしいと思いました。

  • 雑誌「一冊の本」2010年6月号~2012年3月号連載したものを単行本化するにあたり加筆修正しました。
    悩み相談とその回答ですが、実際の相談をもとに作成したものです。
    震災関連が必然的に多くなります。

    信田さんは本当に頭のいいかただと改めて思いました。彼女の本は何冊か読んでいます。
    私は相談を読むと「大変だなあ」としか思えませんが、理路整然と分析、相談者以外のかたの心をも解説、どのように対処するか冷静に、でも優しく提案されています。

    「妻の浮気」を読むと「なんて酷い妻!」と思いますが、彼女の想像を読むと「なるほど。そうかもしれない」と頷いてしまいます。
    「アルコールがささやかな楽しみと語る女性」も、彼女の次の文に納得してしまいます。

    >ここまでお読みになってヒトミさんはショックを受けられたかもしれませんね。アルコールが記憶障害(ブラックアウト)を起こすせいもあり、本人の認識している体験と、周囲から見た本人の酔い方とのあいだに大きな落差があるのがアルコール問題の常態なのです。娘さんたちが母から距離をとってきた背景には、このような事態が起きていた可能性は高いと思われます。



    ただ、読み終わって疑問を残したままのことがひとつあります。
    トラウマとフラッシュバック。
    信田さんは次のようにいいます

    >蓋をしていただけであって、過去のものになっていたわけではないのです。もう一度正面から被害経験を扱う必要があると思います。
    どんなに苦しくても思い出したらラッキーだ、と私はクライエントに伝えるようにしています。(略)過去を精査し過去を処理することなくして未来はないと私は考えています。フラッシュバックは置き去りにされた過去の記憶がその人を呼んでいるのかもしれません。
    ご自分に起きていることが「正常な反応」であり、過去のトラウマに向き合うチャンスがめぐってきたのだとお考えになり、トラウマや被害経験を扱うことのできるカウンセリング機関を利用されるようにお勧めします。

    何かをきっかけにゴミ箱をひっくり返して、過去の嫌な思い出が浮かび上がるのは私にもわかります。
    私たちにできるのはゴミ箱をひっくり返さないこと、あるいはゴミの上に痛みを感じない記憶をたくさん積み重ねるしかないと思っていました。
    でも優れたカウンセラーがいてくれたら、過去としっかり向かい合って解決することができるのでしょうか?
    トレイシーローズの手記を読んだとき、そういう世界があるのかなと思い始めていたところでした。

  • P117
    どんなに苦しくても思い出したらラッキーだ。過去を精査し過去を処理することなくして、未来はない。

    そういうふうに考えると、いいんだ。

    PTSDとは異常な事態に対する正常な反応である。
    これもとても腑に落ちる。

    P200
    同じ屋根の下に暮らしながら、人生のある時期には愛を誓った二人がここまで離れてしまっていること、言葉すらかわせない異世界を生きているという現実をしっかり見つめる。

    P202
    理解される希望を捨て言葉の通じない相手と暮らすことは自分の人生の根幹を枯渇させていくかもしれない。

    なんて素晴らしい言葉だろうか!
    今の私に向けての言葉だとしか思えない。

    読んでよかった。また読みたい。
    この著者の本はたくさん読んでいるが、説得力あり。

  • 辛口回答の悩み相談。
    正論で気持ち良い部分もある。

  • 146.8
    カウンセラーとしての見地からのアドバイス

  • 良書。

  • 相談者の依頼文を基に、回答するというシンプルなスタイルだが、表面的な事象だけではなく、依頼文の端々に現れる言い回しなどから、相談者の本音をつまびらかにしていく展開は、さすがだと思う。
    対面のカウンセリングであれば、表情やしぐさから読み取るところを、文章の端々から読み取る感じ。

    これは、コミュニケーションの基本の部分でもあると思うので、カウンセリングに限らず、普段から気をつけたいところ。

    そして、何かを決めなければならないとき、背中を押すところまではやっても、最後の決断は、必ず相談者にゆだねる姿勢も見習わねば、と思った。
    ついつい、面倒で、「こうだよね」と言いがちだが、自分で決定することが、自立の第一歩なんだよね。。。

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著者プロフィール

公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

「2023年 『家族と厄災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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