しろいろの街の、その骨の体温の

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.74
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510112

作品紹介・あらすじ

季節が変わるごとにたくさんの転校生がやってくるニュータウンで、クラスの立場も性格も、正反体の女の子と男の子が出会う-。学校が嫌いだった人たちへおくる、教室の物語。

感想・レビュー・書評

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  • やってくれたな!
    これから新しい中学校生が
    始まるというのに、
    なぜ、こんなにも
    不安にさせるのだろうか。
    新一年生、
    これは読むな。
    リアルな生々しい気持ち悪さを
    叩きつけられる。


    主人公の気持ち、よく分かる。
    私も信子ちゃんのような人が
    あのような行動をとると、
    美しいと思ってしまう。


    私のしろいろの家も死んでいるみたい。
    そして、私も死んでいるみたい。
    骨も、もう、延びない。

  • 全ての作品を読んだわけではないが、村田さんの作品の中では、珍しく、分かりやすい未来の見える終わり方が印象的だった。他作品の、次第に精神的な方向へ行くそれらとは異なる理由として、私が思ったのは、村田さんなりの、もがき苦しんでいる人たちへの励ましの作品なのではないか、ということ。

    私も、物語の主人公「結佳」のような、孤独で辛い体験をしている。ただ私の場合、高校だったので、周りの責め方が少々大人びたやり方だったという違いはある。まあ、それはそれで、たちが悪かったが。

    そして、この作品の舞台の中学校だと、より分かりやすく、ストレートな子供っぽさを発揮するので、余計に刺さって辛い。今の私の年で考えると、そういうやり方でしか自分の存在価値の高め方が分からなかったのだろうなとも思うのだけど。

    いじめてた人って、大人になってから後悔とかすることもあるのだろうか? あの頃の自分は恥ずかしかったな、とか。そういう気付きが出来ないから、いじめをするのだったら、明らかに人として問題があるから、まだ気休めくらいにはなるかもしれないが、後悔しているとか思われたら思われたで、当時の血塗れの自尊心(本編より抜粋、印象的な言葉)は出口を見失い閉じ込められたままで、なんの解決にもならない。若さゆえって言うけど、この問題になると、その言葉の整合性も分からなくなる。身分制度じゃあるまいし、人間に上も下もないんだけどね。

    それでも、当時毎日通うことでしか、人生をやり過ごせなかった子供心にすれば、学校が本当に逃げられない牢獄のように見えたし、本編でも、「開発途中で途絶えた、一見小綺麗に見えるけれど、体温を失った無機質な街」と、「自らの行き所と価値観を見失い、人生が途絶えたかのように思い込んでしまう結佳」とを、重ね合わせた様にどうしようもない、やるせなさを感じ、少しずつ、精神的なバランスを崩していく痛々しい描写は、真に胸に迫るものがある。

    それで、この後、私は学校を逃げ出したが、結佳はそうしなかったところが、おそらくこの作品の主題であると思う。ネタばれになるので詳細は控えるが、怒濤の展開になります。この辺は、正直、こんなに上手い具合に事が運ぶかなとも思う。思ってしまう自分に嫌な感じもある。けれど、だからこその、励ましの作品だと解釈しています。机を倒したりすれば、何かしらのお咎めもあると思うのに、そうしたシーンは書いていないことも、結佳の物語だから。

    ただ、一つ、私の中で確かな励みになったのは、結佳の「伊吹」への狂おしい程の情愛。おそらく、これらのシーンだけつなぎ合わせれば、別の作品になるのではと思うくらい、骨太で、狂っていて、切なくて、哀しいほどの、手を持て余した情愛の塊は、それこそ、そこら辺の上のクラスメイトより、よっぽど真っ当な生き方だと私は思う。ただ、それを、より正当な方向へと向けて歩み始めた結佳を見て、私とは違うなという、寂しさを覚えたのも確かなのだけど。

    自分の過去が入りすぎたので、評価はできません。
    こういう感覚は、宮内悠介さんの「黄色い夜」以来です。

  • 結佳は新興住宅街で暮らし、周囲とのつながりと友達関係を差しさわりないように取り繕いながら過ごしている…小学4年の時に同級生の伊吹と会話を交わすようになり、2人の関係が変化していく。中学2年生になったとき、また小学生の時とは違う環境に身を置くことになる…結佳は変わらず自身を取り繕いながら過ごしていたが、伊吹への想いが抑えきれなくなっていた…。
    激しく共感できることもあれば、反感を覚えてしまうようなこともあったりと読んでいてほっとできる時間を持てなかった印象で残念かなって感じました。村田沙耶香さんの他の作品は何冊か読んでいて、この作品を絶賛する読書家さんも多いので手に取りましたが…私にはあわなかったのかもしれません。それでも、この作品のことは何年たっても忘れないと思います。

  • あの頃のスクールカースト。ひたすら慰めて保ってきた自尊心。抑えきれない衝動。
    こんなにリアルに生々しく描かれている本を初めて読んだ。

    カースト上位の男子に対して、カースト下位の女子が抱く、歪んだ恋。

    周りを勝手に見下して、自尊心をひそかに向上している主人公の様子を、最初はこちらも上からこっそりと眺めているような気分で読んだ。だけど途中からは、同じ目線になって、ハラハラしながら読んでいた。

    小学校のとき、たしかにカーストなどなかった。成長するにつれ、自然とグループで分断されるのは、本当に不思議だ。
    カースト内でもさらにカーストが存在する。主人公の行動を嫌だなぁと思いつつも、私も全くしていないとは言いきれなくて、少し共感もした。いや、正直共感のほうが大きいかもしれない。

    谷沢の気持ちにはわかるところが多かった(全くわからないところもあった)けれど、伊吹の谷沢への感情の理由は最後までわからなかった。
    なんでこんな谷沢のことを…?と思った。笑
    “幸せさん”だからなのか。
    というか伊吹みたいなのは現実に存在しないと思う。

    若葉のことも信子のことも、最後には不思議と愛しく思えた。みんな白くて狭い世界で、それぞれなりに生き抜くのに必死だ。

  • 読むきっかけは、フォロワーさんの本棚。

    白く無機質なタイトルと表紙に吸い寄せられてしまった。

    最初はイメージ通り。

    でもすぐに、繊細で鋭くて生々しい、小学4年生の世界に引きずり込まれてしまった。

    女子のグループ内外での会話•駆け引き。

    中学に入ってからの、クラスの中での序列•イジメ。

    主人公結佳の、友だちへの軽蔑心、劣等感、プライド。自分でも理解•制御できない自分の行動。

    人に見せたくない恥部すべてを晒されているようで、読みながら同化している自分に、後ろめたさまで蘇ってきてしまう。

    いろいろなマイナス感情でない混ぜにされて、この本は何が伝えたかったのか、と思っていると、

    信子ちゃんの「爆発」で気づかされる、1人の少女の成長物語でした。

    読み終えてみると「圧巻」。

    でも、精神エネルギーをかなり消耗したなぁ。

    フォロワーさん、厳しくも良質な作品、ありがとうございました。

    • hiromida2さん
      shukawabest さん、こんにちは。
      確かに、精神エネルギーをかなり消耗する作品ですよね
      お疲れ様でしたヾ(´▽`*)ゝ♪
      でも、男の...
      shukawabest さん、こんにちは。
      確かに、精神エネルギーをかなり消耗する作品ですよね
      お疲れ様でしたヾ(´▽`*)ゝ♪
      でも、男の人にも読んでほしい作品ですね。
      感想聞けて嬉しかったです。
      ありがとうございます♪
      2022/07/18
  • 街が膨れていく音がする
    ニュータウンに伸びる白い道は骨のよう
    身体の中で骨が伸びて軋む音がする

    五感が研ぎ澄まされていくようだ。

    小学女子のあるあるや、中学校でのクラスカーストの描写がとてもリアル。自分より"下"がいることに安心するが、"上"の女子から標的にされたら終わりだ。仲の良かった3人に値札がつけられ、
    グループ分けされて、次第に距離を置く場面は読んでいて息苦しくなるほどだった。

    言葉の選び方がどうしてこれほど上手いのだろう?「女の子の未成熟な身体の中で、エピソードは宗教になり、初恋は化け物になる」「好きな人をもう一目見る放課後」・・etc

    結佳は教室から弾かれて初めて気づいた。皆の価値観をバカにしながら、その価値観で裁かれることに怯えていた自分の薄気味悪さに。自分の価値観を持ち言葉にして誰かと触れ合いたい!

    中断していたニュータウンの工事が始まり、塞がれていたトンネルが抜けた。見知らぬ真っ白な道をペダルを漕ぎながら進んでいく結佳の姿が一瞬見えた気がした。彼女のこの先の物語も読んでみたい。

  • 季節が変わるごとにたくさんの転校生がやってくるニュータウンで、クラスの立場も性格も、正反対の女の子と男の子が出会う。

    思春期の息苦しく爆発しそうな思いが繊細に暴力的に描かれている。
    読むのが苦しかった…

  • 見事に少女の心を書ききっている。圧巻だった。
    そのあまりのリアリティに自分の子供時代の思いと主人公の結佳の気持ちがないまぜになって、読めば読むほど苦しくなる。
    辛い辛い小説だった。

    誰もがきっと経験したことがあるのではないだろうか。
    子供は決して無邪気で純粋なんかじゃない。
    幼いなりに、いや幼いからこそその未熟さから、残酷になるのだ。
    小さな世界でぐらぐらと危うい自分の居場所を必死に守るために、他人を傷つける。その痛みに気付かないふりをする。

    結佳と正反対の性格を持つ幼馴染の伊吹は、まるで太陽のような存在。結佳の心の描き方から見ると、純真無垢に過ぎる気もするがここまで突き抜けた存在ではないと物語が成り立たないのだろう。
    これも作者の意図するところか。

    現実の小学生、中学生は結佳のように冷静な行動なんかできないし、毎日を過ごすのに必死になっていると思う。
    ましてや伊吹のように救いとなる存在なんていない子供たちが大半だろうと思う。
    でも伊吹じゃなくてもいい、小説でも、音楽でも、アイドルでもなんだっていい。自らを肯定し未来へと進んでいく勇気を何処かで見つけてくれることを願ってやまない。

    • まろんさん
      vilureefさん、こんにちは。

      この本、新聞でどなたかが絶賛していて、とても読みたいと思っている本なのです。
      でも例によってイナカの図...
      vilureefさん、こんにちは。

      この本、新聞でどなたかが絶賛していて、とても読みたいと思っている本なのです。
      でも例によってイナカの図書館には置いてくれなくて。。。

      苦く辛い物語なんですね。
      私としては苦手なジャンルだけれど、vilureefさんのこのレビューを読ませていただくと
      やっぱり読んでおかなくちゃいけない本だ、という気持ちになりました。
      古書店で探しつつ、図書館でリクエストカードも出してみようかな、と思っています。
      2013/02/03
    • vilureefさん
      まろんさん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      私も田舎の図書館利用ですよ(笑)
      最近は県内の他の図書館から取り寄せても...
      まろんさん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      私も田舎の図書館利用ですよ(笑)
      最近は県内の他の図書館から取り寄せてもらう本も多いです(^_^;)

      この本は☆5つにするか☆4つにするか最後まで迷いました。
      もう一度読み返したいかどうかで判断し4つにしました。それ位自分が元気な時でないと息苦しい本でした。

      でも最後には希望を持たせて終わっている救いのあるお話なので、多くの人に読んでもらいたいなと思います。
      まろんさんのレビュー楽しみに待っています(^_-)-☆
      2013/02/04
  •  白。

    『都合のいいやつ。』

     ってエヴァのマリみたいに言ってしまいました。

     素敵な作品でした。

  • NHK「理想的本棚」で紹介された1冊

    本当に村田沙耶香さんは無機物を有機物として捉える表現が素晴らしい。あるあるの話をしているようで村田世界の人物であるからこその不気味感が醍醐味。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田沙耶香の作品

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