ことり

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著者 : 小川洋子
  • 朝日新聞出版 (2012年11月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510228

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ことりの感想・レビュー・書評

  • 終わり方は冒頭で明らかにされているのに、途中経過が魅力にあふれていてそんなことはすっかり忘れていて読み終わる直前にああそうだったかと思い出す、というような感じでした。登場人物の誰にも固有名詞が付いていなくて、お伽噺のような雰囲気で進みつつ、登場人物たちは役割としてお伽噺の流れに埋もれてしまうことも無く、個人としてキラキラ光り輝いていました。悲しくも美しいお話でした。とても面白かったです。

  • リアリティがあるのに、異世界のような、そんな小川ワールドに時々触れたくなる。まさにそういう内容。ある1人の小父さんの一生。美しい話。

  • 主人公と,兄,家,勤め先,図書館の分館,薬局,幼稚園,河原・・・
    主人公にかかわるところ以外の世界が全く浮かばない
    常に死の気配がある,というか,生きている,存在の現実味を感じない
    白い画用紙の真ん中に,その場面や登場人物などが描かれていて,その周りが暈されている画を見ているよう

  • 夏の夕影は地平の彼方へ去り、秋の風もすでに遠く、冬の気配が色濃くなった。空を渡る鳥の名前も知らない少女は、一冊の本を貸出カウンターへ差し出した。
    とたんに香ってきた花の匂いに、それまで表紙の小鳥に注いでいたまなざしを上向かせると、唇の端に笑みをたたえた図書委員の少女と目が合った。
    「芍薬……」
    「久しぶりね、雪。寂しそうな顔をしてるから、そろそろここに来るんじゃないかと思ってた」
    「寂しいわけじゃない……」
     うつむいた雪の目線は、芍薬の手の中に収まった小鳥へ向けられた。白い表紙のなかでただ一羽だけ色づいた小鳥を。耳をすませばその歌声が聞こえてくるような気がしたが、羽ばたくには空はあまりに遠すぎた。
    「そうね。外から寂しく見えたって、本当に寂しいとはかぎらないもの」
     こともなげに云って、芍薬は返却日のスタンプを押した。きっかり二週間後を示した日付をそっと人差し指でなぞって、彼女はかすかな笑みとともに本を手渡した。
    「返却は二週間後です」
    「……二週間後に、また来る」
    「あなた、相変わらずつれないのね。まあいいわ」
     一日と経たずに読み終えるであろう本を受け取って、雪は芍薬に背を向けた。それきり振り返ることなく彼女は図書室を後にした。
     二週間後の当番は、違うクラスの図書委員だろうとぼんやり思いを馳せて、芍薬は後に控えた生徒から本を受け取った。

  • 静謐で慎ましやか。ドストエフスキーの合間に読んだから、なおさら。不思議で、純。

    小父さんほど、愛すべき人物はいない。そうしみじみと余韻にふけることが出来る作品です。

  • 幼稚園の小鳥の世話をする小父さんのお話し

    小父さんのお話だけどメルヘンっぽいストーリー

    ポーポー語でしか話しのできないお兄さんの言うことを唯一理解できる存在

    小鳥の言葉が喋れたお兄さん

    この作品にも、やさしい図書館の司書のおねえさんが登場する。司書は小父さんが小鳥の本を借りに来るのを待っている

  • 小鳥の小父さんが死んだ時、遺体と遺品はそういう決まりに則って手際よく処理された。つまり死後幾日か経って発見された身寄りのない人の場合、ということだ。

    彼が小鳥の小父さんと呼ばれていたのは、長い間幼稚園の小鳥の世話をしていたからだ。
    両親は早くに亡くなって、彼は独自の言葉を話すお兄さんと暮らしていた。お兄さんの言葉を理解できるのは彼だけだった。彼はゲストハウスの管理人として働き、度々お兄さんと幼稚園の鳥小屋を見に行った。
    ある日、小鳥たちを見ながらお兄さんは亡くなった。

    一人で暮らすようになった彼は、これまでよりも小鳥たちに近くなった。これまでよりも少しだけ他の人との関わりが出来た。心を寄せる女性にも出会ったけれど、その女性と会えなくなっても黙って受け入れた。
    そう。誰にでもある出来事で、特別大きな出来事があったわけではない。
    こんなにも静かで、でも心を打つ物語があっただろうか。

    そして物語の終わりも、静かに訪れた。
    彼がメジロを保護したのは偶々で、メジロが元気になったら放してやろうと思っていた。鳥は空を飛ぶものなのだから籠に閉じ込めておいてはいけない。
    「明日の朝、籠を出よう。空へ戻るんだ」とメジロに話しかけ、ひと眠りする積りで目を閉じた彼は、二度と目覚めない眠りに落ちた。

  • こんな司書いないよー、という司書が登場します。物語は素晴らしいです。

  • 2016.9.13読了
    淡々とした文体で語られる、小鳥の小父さんとその兄のお話。静かに沈んでいく哀しみのようなものがある。

  • 親や他人とは会話ができないけれど小鳥のさえずりはよく理解する兄、
    そして彼の言葉をただ一人世の中でわかる弟。

    その兄弟と小鳥たちの物語なのだけど、
    最初から最後まで静謐で、
    ほんのり死の香りが漂う小川さんらしい世界だった。

    これだけ物や情報に溢れた世界で、
    人間ここまで無欲に生きていけるものなのだろうか・・・。

    現実に置き換えると異質で気味の悪ささえ覚えるかもしれない。
    しかし物語として読むこの人たちは本当に美しい。

    美しすぎてかわいそうに思う。
    もっと幸せになっていい、もっと報われていいと思うけど、
    彼らは十分幸せだったのかもしれないとも思う。

    怖い事は何も起きてはいないのだけど、
    何か怖い事が起きそうで落ち着かなかったのは、
    常に死がまとわりついている感じがしていたからでしょうか・・・。

    小川さんの世界観といえばそうなのですが、
    その中でも本当に美しくてせつなくて怖い本だと思います。

  • 小川さんでなくては書けない世界観かもしれない。
    同じ日常を共有しながらも、薄紙のように重なり合っている、清らかな別の世界に生きているような人たちのお話。

    別の世界の言葉を話すお兄さんと40年以上暮らした“小鳥の小父さん”
    小鳥の小父さん世界に、濁世からの干渉が入ることもあったり、ほのかな恋がほんのり香ることもあったが、小父さんとお兄さんの思い出が穢れることはなかった。

    小父さんの“鳥の歌”は、一羽のメジロに託され、かの鳥にみとられて、小父さんのたましいは天に昇った。

  • 他に誰も話すことのできない言葉でしか話せないお兄さんと
    世界でたった一人だけお兄さんの話す言葉が理解できる弟。
    両親を早くに亡くし、肩寄せ合って生きる二人の暮らしは
    ささやかだけれど、幸福と信頼に満ちた静かな日々でした。
    ほんの少しの大切な物たち
    (薬局で買うキャンディー、静かに流れるラジオ、毎日庭にやってくる小鳥)
    に囲まれ、訪ねて来る人もめったにいない暮らしが
    どうしてこんなにも幸せそうで満ち足りて見えるのか。。。
    たくさんの物に囲まれ、即座に世界中の情報が手に入る暮らしをしていても
    自分の本当に大切な物もわからず、心の通じ合う会話さえできない人が多い現代で
    自分たちが作り上げた小さな小さな世界の中で
    他人と比較せず、欲張らず、清らかに生きる兄弟の姿に感動さえ覚えるのです。

    日々大量に流されてくる情報をシャットアウトし
    自分に必要最小限のものと本当に大切な人だけに囲まれて暮らす。。。
    憧れるけど、俗物の塊のようなワタシには無理だろうなぁ・・・(涙)

  • このお話を気に入るかどうかは、
    主人公の小父さんに好感を持てるかどうかで決まると思うのだけど、
    わたしの場合、途中からどうにも小父さんを好きになれなくなってしまい、
    最後の方はちょっと読むのが苦しくなってしまった。

    前半部分のいくつかのエピソードはよいものもあり、
    淡々とていねいにつむいでいく様子は
    好きだった。

  • 小川さんらしい静かな本だった。心がスーッと落ち着いた。
    静かで、寂しい、ひっそりとした一生だったけど、どこか幸福そう。
    ラストからもう一度最初を読み返すと、よりしんみりする。

  • ひとりで夜に読むのがぴったりの、溜息が出るくらい静かな物語。日中や人のざわめきの中で読んだら、静かな鳥のさえずりを聞き逃してしまいそう。小川さんはなんでこんなに素敵な本が書けるんだろう。小鳥に看取られた小父さん。大空に飛び出していった小鳥。始まりに繋がるラストが良かった。

  • 小鳥の小父さんが死んだ時から物語が始まる、小鳥の小父さんの物語。

    メジロの鳴き声の描写が多いんだけど、よく分からなかったので、you tubeで聞きながら読んだ

  • 相変わらず静謐な世界は素敵なのだが、どうにも周囲の人々が優しくなさすぎてアカン。

  • 小鳥の言葉を聞き取り、小鳥の言葉しか話さなくなった兄と、兄の言葉を唯一理解する弟の慎ましくも美しい日々の物語。兄が亡くなったあと、弟は兄弟でいつも行っていた幼稚園の小鳥小屋を掃除し子供たちから「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになった…暖かく、切なく、とても繊細な小鳥そのもののような人生を送った小父さんの生涯。

    読後は、大事に育てていた小鳥が籠から飛び出して行ってしまったような寂しさと余韻が残った。

  • とてもとても静かな物語。
    孤独な兄弟。兄は11歳の時に弟しか理解出来ない言葉で話し始める。
    不気味な男たちが現れる、虫や小鳥を自分の楽しみの道具としか見ない。
    兄がキャンデーの包み紙で作るブローチや、架空の旅行の荷造りの挿話が好き。
    色々な断片が悲しみと美しさで綴られていく。
    このお話好きだなあ。

  • 鳥好きにはたまらない一冊。通常の言葉を失った兄と、その言語を理解する唯一存在である弟。ふたりを繋ぐ小鳥のキズナ。どこまでも純粋に、自らの世界を守って暮らしている弟への、周囲の残酷な目。ことりの持つ、もうひとつの意味が切なく、腹も立つものの決して弟側には立てない自分がどうしようもなく。じわじわ染み入るように、入ってきました。

  • ことりを慈しむ小父さんの話。

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ことりの作品紹介

小川洋子、12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説!

親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、
そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。
小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。
兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。
青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。
弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。
静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。
そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、 弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。
世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作。

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