検証 東電テレビ会議

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510426

作品紹介・あらすじ

大震災後の3月11日午後6時27分から3月16日午前0時2分まで。開示された録画記録150.5時間のうち、音声付きの49時間、60万字分を中心に徹底検証。

感想・レビュー・書評

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  • 第一部は事実を交えた検証、第二部は音声の書き起こし。てんで役に立たないコラムが間にいくつか。
    現場と東京の断絶が凄まじい。現実的な危機と焦燥が渦巻く現場、一方で東京は、命令系統や外部対応の体裁づくりで頭がいっぱい。会社勤めをしていると、こういう意識のズレは「普通にあること」と麻痺してしまいがちだけれど、この極限状態では、トップの現実感の薄さ、理解の弱さが、ごまかしきれない害として浮き彫りになってしまう。
    全部をつぶさに読みこなすには自分が不勉強な部分も多くあったけれど「あれはこのときのことか」と、伝え聞いた報道の断片と、当時起こっていたことを照合できる部分は多々あった。そういう意味でも読む価値のあった一冊。

  • テレビ会議の書き起こしをまとめたものです。
    事故当時のリアル感や,同時並行で起こる事象への対応,発電所だけでなく国やマスコミへの対応を行ったことなど,混乱の中で考えられていたことがありありとわかります。
    読んで感じたことは,これだけの知識力と判断力を持った人たちが集まり,万全と思われる対応を取っていてもあの事故は防げなかったんだなあということです。
    原子力保安院や官邸の判断を待つために現場が動けないくだりなどは,読んでいるこちらもイライラして,早く説得しに行けよ!と感じました。
    原子力が今後どうなっていくのかは分かりませんが,ヒューマンエラーの事故が頻発している昨今,どのように事故時の対応を行っていくのだろうかと考えさせられる良書でした。

    たまに差し込まれるコラムは,結論ありきな内容になっているし,本書の内容とあまり合っていないし蛇足だと感じました。

  •  東京電力が、「原発」という危険なツールを任せられない企業であるとは思っていたが、本書で明らかになった「テレビ会議」の検証はそれを確信させるものであると思った。
     下請け・孫請けなどのピラミッド型な重層的な企業群による事業構成は、日本の企業においてはお馴染みのものである。
     「経済合理性」を考えると当たり前の事なのかもしれないが、本書によると、福島原発事故時に消防自動車を運転出来る人間が下請け会社にしかおらず、契約外の危険な仕事に躊躇し、必要な対策が遅れたとある。
     それはそうだろう。契約外の危険な仕事で致命的な損害を受けても、東電が充分な保証をしてくれるとは限らない。
     下請け・孫請けとはそのような関係であることは、かつて「原発ジプシー」などの告発で明らかだろうと思えた。
     してみると、原発は「経済合理性」とは別のシステムによって運営されるべきなのだろう。
     東電のだらしなさは本書で明らかではあるが、「東電テレビ会議」の記録を「プライバシーを盾に全面公開を拒否」とは許されないどころか犯罪的所業であるとさえ思った。
     これだけの被害を引き起こした以上、すべての記録は「公共財」であり、社会に生かされなければならないと考えるのは当然である。
     記録の全面公開が行われていれば、本書はもっと辛辣なものとなったのかもしれないと思うと、「東電という組織」に対し暗然たる思いを持った。
     本書は、福島原発事故後の東電の対応を記録、検証したものであり、予想通り東電のひどさを明らかにしているが、「全面公開拒否」については、マスコミとしては抗議のみではなく、裁判を含めたもっと強硬な対応はできなかったのかとも思った。

  • 東電のテレビ会議をもとに、朝日新聞社の記者が時系列などと合わせて記事にしたもののようです。ただテレビ会議の会話だけ収録されているのかと思っていたのでわかりやすくなってました。が、記者の主観も入っているかもしれないのでどうなのでしょう?
    コラムに原発と関係ない感じの人のコメントなどあったのは蛇足だったように思いました。

  • 「全面撤退」問題。
    これを読む限りでは、官邸の勘違いという言い訳、苦しすぎ。
    官邸の介入が事態を混乱させたというが、むしろ介入が遅かったとさえ思わせる印象。
    人間テンパってると、助けを求めるという発想も出来なくなる。

    16日以降の完全版キボンヌ

  • 大企業の体質とも言うべきか、被害の最小化に向けた行動のための意思決定が遅く、対策が遅々として進まない様子がありありと伝えられていた。本店非常災害対策本部、オフサイトセンター、福島第一原発、様々な拠点の存在が逆効果となったのか、指揮命令系統がはっきりしない。所長は本店からの絶え間ない調整に疲弊し、さらには政府からの圧力までのしかかる。そうやって右往左往しているうちに、歴史に残るであろう重大事故を招いてしまった。
    危機への対応力のなさにも驚くほかない。自社に消防車を運転できるものがいないから、子会社に委託したい。しかし、子会社との契約にはそのような委託をできることが記載されておらず、放射能にまみれた福島第一原発へ赴くことに尻込みしている子会社にお願いができない。災害時の指揮命令系統、職務権限に関する規定は存在しなかったのだろうか。
    震災前まで、東電は安泰な会社だったのではないだろうか。製造業のように、自社の存在を脅かすような競合が現れることもなく、真面目に仕事をしていれば人生安泰というムードがあったのではないだろうか。
    このような重大事故が発生したにもかかわらず、事故時の映像の公開を拒み続ける東電の隠蔽体質には、憤りを覚える。事故時の社員には、大災害が発生したとは思えないほど楽観的な雰囲気が漂っていたようだし、そもそも原発を運営する会社として、万一のことが起きたら、日本国民に多大な損害を与えかねない、という意識はなかったのだろうか。競争にさらされない産業でのらりくらり働いている人間に、そのようなプロとしての自覚は芽生えないのかもしれない。
    東電は、あの事故を引き起こした自戒として映像を公開すべきであるし、そのような姿勢がなければ、原発再稼動の可能性が高い将来の日本に、居場所などないはずである。

  • 【新刊情報】検証東電テレビ会議 543.5/ア http://tinyurl.com/b2vndgj 報道機関のみに公開された大震災後の3月11日午後6時27分から3月16日午前0時2分までに及ぶ「テレビ会議録」を徹底検証。60万字分の記録から浮かびあがる、あの日の真実。 #安城

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著者プロフィール

2005年朝日新聞社入社。総合プロデュース室・メディアディレクター。
週刊朝日記者として教育系記事等の執筆を担当した後、データ ベース事業部でデジタル商品企画開発に従事する。その後、新規事業部門「メディアラボ」で子ども向け教育サービス「朝日こどもニュース」を立ち上げた。
朝日新聞社のグループ企業との連携によって、新聞業にこだわらない子ども向けサービス開発を担当している。
『はじめての論理国語』シリーズの制作に携わりながら、多数の子ども向けワークショップ講師を務める。


「2017年 『これからの論理国語 小1~小2レベル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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