天使はここに

  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 344
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512390

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】ファミレスの契約社員として働きづめの毎日を送る真由子23歳。常連の老紳士や信頼するスタッフとの交流が心の拠り所だったが──。楽ではない職場での人間関係と日々起こる事件の数々から、主人公の心理的成長と働くことの喜びをみずみずしく描いた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • あらすじ
     松村真由子、25歳。ファミレスエンジェルスのアルバイト。高校時代からずっと続け、今は一人暮らしをしている。田舎では母親に捨てられ、祖母と叔母と暮らしていた。小学生のころ父方の家族に引きとられるが、しっくりとはこなかった。放送作家の彼がいるが、その人も郷里に帰るという。真由子はプロポーズも断り、淡々とファミレスでアルバイトを続ける。

     なんとなく「コンビニ人間」のマイルドヴァージョンだと思った。コンビニ人間は極端だけど、真由子のような人ならいそう。家族に恵まれていなくて、人の感情に無関心で、でも時々心情があふれたり、人の機微に触れるって普通だよな。とにかく今の場所できちんと働く大切さは伝わった。

  • 一生懸命な主人公に降りかかるチクチクした理不尽が読んでいてつらかった。モヤモヤする心情を読者に与えるのが上手だと思う。

    読む前は『和菓子のアン』をイメージしてたけど、もっと闇が深くてリアルだった。どちらも面白いけれど、個人的にはこっちのほうが好み。

  • 今まで読んだ朝比奈あすかさんの作品の中では、
    一番 ソフトなかんじでしたね。

    高校時代からアルバイトをしていたファミレスで、
    契約社員として働く真由子。

    正社員にもしてもらえず、責任だけ負わされ、
    仕事量は増えているのに、お給料には反映されない。
    最近よく聞く、ブラック企業のような…。

    この真由子が、とにかく生真面目でね。
    いい子すぎて、心配になるくらい。
    ”おシャケさま”(いつも鮭定食を注文するから)との関わりにしても、
    「どうしてそこまで?」と不思議に思ってしまう。

    それなのに家族や恋人、友人にはいまひとつ心を開かない。
    そうなってしまったわけが、切なかったです。
    実の母親のことで傷つき、誰かに期待し、望んだりすることが怖くなってしまったのかも…。

    でも「この仕事が好き」と素直に言える真由子だから、
    きっとこの先も大丈夫。
    必ず見ていてくれる人はいる。

    真面目にコツコツ努力し続けた人が、いつか報われる。
    やっぱり、そんな希望をもてる話が好きです。

  • 天使、ということでもっとほんわかした話だと思って手に取った。
    飲食業経験者として、主人公・真由子の気持ちが痛いほどよくわかって、ほっこりするどころか疲れてしまった。
    でもハッピーエンドではある、のかな。

  • ファミレスという舞台、アラサーになり、契約社員のままの主人公の真由子さん。さまざまな性格のアルバイト、嫌な店長、常連など人間模様が細かく書かれていて、描写が容易に想像できる。ちょっぴりセンチメンタルになる展開もあるが、ほっこりしたラストで読みやすかった。

  •  主人公は松村真由子23歳。契約社員。
     勤めているのは全国展開するファミレスチェーンの東京桜野店。開店前の準備から混雑時の目配りやアルバイトのフォローまで、いつも真由子は大忙しです。さて今日は……。

          * * * * *

     真由子の成長物語だというのが、読み切るまでわかりませんでした。

     全編通じて描かれるのは、仕事に真摯に向き合う真由子の姿。非常に忍耐強く、ブラックな労働条件でもベストを尽くして働く。立ち位置をわきまえ、常に店のことをいちばんに考えて行動する。

     そんな誠実なお伽話のヒロインのような女性が幸せをつかむまでの話かと思っていました。

     けれど、さすがに朝比奈あすかさん。一筋縄でいくようなストーリーは作らないのですね。

     なるほど、真由子が生育家庭に恵まれなかったことが、ここに繋がってくるのか。そのことに気づいた真由子は確かに成長はします。でも、ほんの少しなんだな。

     クライマックスと呼べるほどの場面もないですし、真由子の日常にさしたる変化はありません。盛り上がりには乏しかったのですが、妙に納得してしまう作品でもありました。

  • ファミレスで契約社員として働く女性のお仕事小説。
    いい子というか生真面目すぎて逆に心配になる。
    [図書館・初読・10月17日読了]

  • ファミレスを舞台にしたお仕事小説。
    表紙のイメージとは違う、常にザワザワした気持ちで読み続けたストーリーでした。
    真面目に一生懸命に仕事に向かう真由子。
    そのせいで、貧乏くじを引くことも多く、周りからも都合のいい存在として扱われてしまう。
    ファミレスの同僚の中には、少しの悪意を持つ人達もいて、明るい雰囲気の場所が舞台のはずなのに、何故かドロドロしたイメージが付きまといます。
    真由子の生育環境、同僚バイトのトキの母娘の確執など、気になることが次々明るみになり、ページめくる手が止まりませんでした。
    最後は明るい兆しの見える終わり方で読後感は良好。橋輝が気になります。

  • ファミレスや"働くこと"の厳しい現実を描きつつも、不思議と不快にならないというか、雰囲気の明るい作品。
    前向きな気持ちになれる。
    根底に主人公の人柄の良さがあるから。
    仕事への真っすぐさはすがすがしく、人に対するあたたかさにもほっこり。
    特に、常連の"おシャケさま"とのエピソードがいい。

  • 15歳でファミレスのバイトから始まり契約社員となり現在は正社員を目指している女子のお仕事小説。
    仕事に対する情熱が半端ない。
    ちょっと怖いくらい。余りにも真摯に顧客と向かい合っているので物語の前半は感情移入出来ない。正直言って、こんなやつおらんで!という世界だ。
    大学生のアルバイトって接客業は基本有り、だろう。私もした。テキトーにやっていた。何より社員もサボっていた。
    真由子ちゃんみたいな社員はいるのだろうか。会ってみたい。私の人生も変わったかも。
    物語の後半、懇意にしていたお客が痴呆症になり、店長がストーカーで逮捕され、新店長が全然頼りなくて、バイト・パート管理を任される辺りから物語も動き始める。真由子ちゃんも人間的に成長していく。終盤急速に話を纏めに掛かっている感はある。正社員にもなっていないし、恋愛も実っていない。でもこれから何かいい事ありそう!そんなラストだ。爽やかです。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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