EPITAPH東京

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512673

感想・レビュー・書評

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  • 物語というより、旅行記、日記的な感じ。
    なので、読んでいると自分も一緒に移動しているような気になり、東京のその場所へ行ってみたくなる。
    本当にそうなっているのか確認しに。
    そして、ところどころ物語、戯曲が挟み込まれている。
    1冊で色々なことをいっぺんに体験した感覚。
    他人の日常ってこんな感じ!?

  • 筆者・Kは、小説を書くかたわら、今、戯曲を構想中である。
    作者・恩田陸を思わせる筆者は、行きつけのバーで、吉屋と名乗る男と出会う。
    彼は自らを吸血鬼だというが、現代の吸血鬼は血を吸わず、人のもつ情報を吸うのだという。

    都内のあちこちを舞台に筆者が書くエッセイのような文章がメインで、他に吉屋を語り手とした話と、筆者の書く戯曲から抜粋された「エピタフ東京」、3つの話が織りなすこの作品は、ファンタジーのようなSFのような、民俗学のようでもあり、日記でもあるという複雑な造り。

    よく考えれば東京に限らず大都市は多くの死者を抱えている。
    死者にまつわる話は多いはずだ。
    けれどそれを東京という年に無理なく落とし込んだところに恩田陸の上手さがある。
    さらに、東京を描いておきながらその背後には地下鉄サリン事件や、阪神淡路大震災、東日本大震災の存在がしっかりと根付いている。

    事程左様に一筋縄ではいかない作品なのだけど、面白かったのはやっぱり筆者視点のエッセイのような部分。
    うんうんなるほど、そうだよね、と頷きながら読んでいた。

  • ものすごく恩田陸。

  • 一般的な小説が、時系列に沿って連綿と繋がっていくものだとすると、本作は無数の断片が積み重なっていくもの。
    本作中に描かれる断片だけでなく、過去の恩田陸の著作や、これまで自分自身が感じてきたこと、見てきたことなど、すべて重ねて、各断片の共通する点が混ざり合い、反する点が反発しあい、複雑な文様を作り出していくことを感じてそれを楽しむ。
    そういう小説。

  • なんだろう、どーゆースタンスで読めばいいのかサッパリ。
    恩田陸、斬新すぎる。装丁もなにもかも凝っていて素敵だけども本当に待ちに待っていた長編新刊で期待値も高かかったのに、予想とはかけ離れた内容で戸惑うばかり。
    戯曲の部分みたいなあーゆーのが読みたかった。
    戯曲を作るための「筆者」の日々を描いた作品ってことなのだろうか?

    でも何はともあれ、恩田陸の長編新刊ってことですべてよし。

  • こういう話とくくれない。その不思議さが、いい。
    恩田さんの思いが出る部分には、興味、驚き、納得があることが多い。

  • エッセイだと思って読んでいくと、違うような、所々に出てくる作家に興味を持ちいつな読んでみたいと思う。
    恩田陸の世界と同じような小説何だろうな。

    先が気になり1日で読了。

  • 恩田陸独特の視点で、震災後の東京を見る。街を人を歴史を見る。そこに交差してくる吸血鬼やら戯曲やら怪獣?やら。東京にふさわしい墓碑銘とは何か。物語の種がそこらに撒き散らされ芽吹く。実に恩田陸らしい作品。

  • この本を読み始めて最初に感じたことは、ジャンルがよく分からない、というものだ。恩田陸の小説ではよくあることだが、これは全ページを読み終えた今でも、読んだ感想がまだよくまとまらないでいる。東京の様々な場所を巡る登場人物、戯曲「エピタフ東京」の内容とその構想を練る筆者、吸血鬼と名乗る吉屋の話がぐるぐる。一言で言ってしまえば、著者の東京観が垣間見得るような作品と表現できるだろう。戯曲「エピタフ東京」も、全部読んでみたいと思った。

  • エッセイ風小説??

    「筆者」の感じる東京へのエッセイと
    「吸血鬼」である男性目線のエッセイ?と
    筆者が書こうとしている戯曲と一部と
    途中、1回だけ「インタビュー」が挟まれる。

    更にラスト、3・11に対する筆者の辛辣な、でも的確なメモ書き。

    筆者の引出の多さ、感性の豊かさ。
    共感や、新しく芽生える感情、物事等あり楽しめる。
    ふと、読み返したくなる一冊。

    浅田次郎『天切松』にも登場する永井荷風や
    桐野 夏生『OUT』
    『虚無への供物』など、今読むから分かるネタが。
    時が経って、また読んだら印象に残るテーマは変わるだろう。

    驚いたのは『シン・ゴジラ』のようなテーマがあった事。
    2015年刊行、書いたのは更に前、震災後だからだろうか。
    映画の情報を得た時、筆者が何を思ったか、知りたい。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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