- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022512864
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学小説】3.11運命の日、一歩も退かずメルトダウンの危機と対峙した首都電力奥羽第一原発・富士祥夫所長。巨大組織の社員として日本の原発黎明期に志をもって原子力とともに歩み、見届けたひとりの男の生涯。好評「週刊朝日」連載、待望の刊行。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災の際、福島第一原発所長だった故・吉田昌郎をモデルにした作品。
生い立ちから始まり、東京工業大学、東京電力、東日本大震災、そして亡くなるまでの生涯を描く。一応フィクションとなってはいるが、すぐに思い浮かぶ官僚や政治家も多数登場し、ほぼノンフィクション。
前半部分は、人となりを紹介するような形で進み、下巻途中より震災事故の話となる。原発を食い物にする政治家や企業、またそれらを取り巻くムラ社会の恐ろしさも描かれている。3.11の事態の推移は圧倒的な臨場感や緊張感に溢れ、内部の極限状態の様子が伝わってくる。事故の後、ガンにより入院していた彼を両親が見舞いに来たシーンは泣けてきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016.09.19
吉田所長のお話。我が社の名前も出てるし、評価もされていると思っていたが、この方の働きに比べたら、そして部下達の勇敢さに比べたら、とてもとても表立って話せるものではないと思った。
送る会にも、お墓にも、自宅にもお邪魔させて戴いたが、ただ頭が下がる思いでいっぱいである。国家の危機を乗り越え、日本の為に死を賭して1Fを守った吉田所長に再度感謝を伝えたい。
合掌。 -
福島原発のあの名所長をモデルにしたフィクション。フィクションとは言え、福島原発トラブルに関するストーリーはほぼノンフィクションと読んでも間違いはないように思います。やはり今回の事故は100%人災であり、正しく設計され建造され運用されれば原発ほどクリーンな発電所はないという思いが強まりました。
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過日「フクシマ・フィフティ」という映画を観たこともあり、福島第一原発の吉田所長をモデルにした小説を手に取ってみた。「沈まぬ太陽」のような描き方かな。普段読まないジャンルだけどなかなか興味深かった。
この小説では奥羽第一原発の富士祥夫の生涯が、原発と電力会社でのサラリーマン人生を軸に描かれている。いわゆる3.11の大地震が起きるのは下巻なので、上巻は富士の人格や電力会社内の人間関係・政治との癒着・隠蔽問題などを丁寧に描いている感じ。フィクションとはいえ、これだけの虚偽報告や癒着がまかり通っていたのか…と愕然とさせられる。そして、常に故障や誤作動といった危険と隣り合わせであっても、どこかコントロールできているとのんびりした空気感が存在していて、実際にそうだったんだろうなと思わせるじんわりとした怖さがあった。世の中の色々な仕組みが、こういう紙一重の安全に成り立っている部分は大きいのではないかと思う。
いくつかの安全策も予算カットや承認がおりずに実現できておらず、ひとつでも改善されていたら何か変わっていたかもしれないのに…と思わずにはいられない。
下巻では3.11後の緊迫した対応が描かれる。何が起きたかわからない中でもできることを行い、周りを鼓舞しながらも冷静な判断をし、命を最優先にするというリーダーシップを発揮する所長の姿には感銘を受けた。混乱の中の話し方や態度がとてもリアルで、実際の吉田所長の姿をよく捉えていたのではないかと思う。何が良くて何が悪かったか、専門家でないので問うことはできないけれど、必死に事態を収束させようとした関係者の方々には本当にお疲れ様でした、とお伝えしたい。
こんな時だからこそ「有事」に備えて、また起きた時どうあるべきか、どういう発想が危険なのか、を多面的に考えるうえで良い読み物だったなと思う。 -
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上巻ご参照ください
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震災の当時、福島第一原発の所長だった東電の吉田昌郎所長を題材にした書籍。生い立ちから3.11、そして亡くなるまでを書く。
原発に関連する専門用語が多いが物語をより臨場感溢れるものにしてくれる。事実に忠実に執筆することを可能とする取材力は圧巻。
あの日原発では何が起きていたかをリアルに書いた作品。 -
3月11日の事態の推移をリアルに描き出していることには好感が持てる。