- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022513458
感想・レビュー・書評
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2019年15冊目。
妻に読ませたくない本、だそうです。ぼくはどちらかというと読んでもらった方がいいんじゃないかと思ったくらい。それは夫として父親としての自分に自信があるってことじゃなくて、様々な角度からの見方に気付かせてくれるすごい本だから。
人間関係とはどうも複雑なようで、一対一の関係だけじゃないから、相手の心理状況・身体状態によって同じ言葉を伝えても捉え方は変わってしまう。逆もまた然り。そんなつもりじゃなかったってのは言い訳にもならないし、責任転嫁したって自分さえも守れない。だけど、だからこそ口酸っぱく伝える必要があるし、伝え方を工夫する必要があるし、伝わり方だって考えなきゃいけない。
相手に同じことを期待するのは野暮だけど、せめて愛してもらえるように愛せよってことに帰結する。少なからず自分からは傷つけることが少なくなるようにしたいな。それも相手の捉え方次第だけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
''23年4月25日、Amazon audibleで、聴き終えました。確か、十数年ぶりの、久々の角田光代さんの作品。
なかなかに、凄い小説でした。
アカの他人の事件の補欠裁判員に指名され、裁判を審議していく過程で、いつの間にか被告人に自分自身を重ねていく主人公…自分も、夫と義父義母、娘との間がとても危うい状態である事に気づき…と、苦しい内容でした。
事件を考察することで、主人公が自分を取り戻していく(?諦めていく?)過程が描かれていました。
なんという恐ろしい話ಥ_ಥ
「皆、スレスレなんだよ!」と、首に刃物を当てられたような気がしてます。いや、刺されたのかな?終盤、冷たい汗が出ました。
角田光代さん、audibleに何冊かあるので…もう少し聴いてみます! -
この話も感情移入し過ぎてしまった。
角田光代さんの話はどれも、「ああ、私の気持ちを代弁してくれてる」と感じてしまう。 -
書評の通りで「主人公は私の気持ちの代弁者か」と思わせるような、主人公の心理描写。フィクションなので誇張はあるものの、女性読者には、多くの共感を得られると思う。
一方の支配的な言動に、他方のネガティブな被害的認知。家族関係の輪廻。心理的虐待についても、考えさせられた本。 -
Audibleにて。
毎日の様に起こっている幼児虐待事件。犯人の顔をニュースで見て、酷い、可哀想、そんなことするなら産まなきゃ良かったのに、と思うのは簡単な事だけど、実際その背景に起こってたすべてを知ることは無理だと思った。
裁判員裁判のことも、実際どういう事をしているのか知れて良かった。 -
幼児虐待のニュースが頻繁に新聞をにぎわす現代に、タイムリーな題材で、作家角田光代の凄さを如何なく発揮した傑作。
裁判員になった主人公が、被告人とシンクロしてしまう裁判員裁判が舞台。
ある書評に、「読むのがつらい小説である。つまらないからではない。むしろ面白い。しばしば逃れたいと思うものの結末が気になる。」と、記されているように、読み手を捉えて離さない、凄まじいまでの磁力がある。
それは、主人公と同じような立場の女性ばかりでなく、立場を異にする男性にとっても・・・ -
母親による虐待死事件を巡る裁判員裁判。
被告人の母親と、裁判員(補充)として選ばれた母親の違いなんてほとんどない。
一歩間違えれば、自分が逆の立場になっていたかもしれない。それは子育てを一身に引き受けている母親の大半がそうじゃないだろうか。
母乳神話、成長線に沿った成長、離乳食のペース、排泄の処理、予防接種、乳児湿疹、突発性発疹、夜泣きや卒乳、発達障害の不安…医療従事者でもない、助産師でもない、保健師でもない素人の女性達が、子供を産んだ瞬間に「母親」となる。育児書やネットで調べても理想の子育てしか書いていないし、周囲に相談しても現実的に助けになるわけでもない。他の赤ちゃんとの発達の違いに打ちのめされ、小さな小さな赤ちゃんの命の重圧に押し潰されそうになる。夫や両親達は良かれと思って言うが、心無い一言に苛立ち、突き落とされる。
きっと誰しも少なからず経験していて、その苛立ちが「虐待」まで度を越してしまう事を本当に恐れている。
泣き止まない赤ちゃんの泣き声に、何も考えられなくなるのに「近所から虐待と思われたらどうしよう」なんて恐怖心がいつもある。
読んでいて、凄く共感できて、息苦しくなる話だった。
被告人と環境は違うが、私だっていつだって紙一重だと改めて思わされて、とにかく怖かった。
貧乏より、多忙より、孤独が1番子育てなんてできない。協力よりも本当は理解を求めているんだから。 -
正直に言いますと、主人公の心理が丁寧に描かれ、共感するところも多かったのですが、とても読むのがしんどい小説でした
私自身は、人は法で裁かれるべきであり、心情や感情の介入をまねく裁判員制度には反対です
その難しさが描かれているのみならず、「地方特有の考え」やコンプレックスから来る「えらいわね」の評価に、子供に追い抜かれることに嫉妬する親の様
人が気付かない理不尽を悪意の表れと感じて、愛情なのか自身がひねくれているのか判断ができず、六実のように笑って済ませられないために自らが生み出した沼にはまっていく主人公などと、感じさせられる部分は多いです
冷静に考えれば隠す必要がないことに、変な引け目を感じてしまうことなど身につまされる思いがしました
単純で面白い小説ではありませんが、多くの人に一度は読んでもらいたいと感じました