春に散る 上

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.81
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本棚登録 : 277
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514417

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】著者が半生をかけて追い続けるボクシング。そのすべてを込めた感動巨編! アメリカから40年ぶりに帰国した広岡は、かつて共にボクシングの世界チャンプを目指した仲間3人と再会する。共同生活を始めた4人が出会ったものとは──。

感想・レビュー・書評

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  • ルポタージュの沢木耕太郎が小説を書くとこうした作品になるのかと思いながら読みました。

    元ポクサー4人が、あるきだかけからシェアハウスで暮らしはじめる。それは元ポクサーの老人ホームのようでもあるが…。

    上巻は4人の同居が始まり若者ポクサーと出会ったところで終わる。
    下巻も楽しみです。

  • 映画化されるとの事で読み始めましたが、思いのほか波に乗るまで時間がかかりました。
    後半はスラスラ読めたし、すぐに下巻を読みたくなるほど面白いです。

  • この作品とても面白いです。最近書かなけど今回わ書く。☆5つ! もちろん誰が読んでも面白い、という保証わ無いです。でも、日頃ボクの感想文をちょっぴりでも読んで「あ、こいつ面白いかも」とか思っていただけている方ならこの本面白いかも!です。

    で、ここで天邪鬼的に話題を変えて。

    じつわ先に読んだ貴志祐介著『エンタテインメントの作り方』に書かれていた、面白い小説の書き方、みたいなノウハウを全部実践している小説だな、となんとなく思いました。

    沢木耕太郎はプロの作家なのだからそんなのあたりまえでしょう、と思いつつ、いやいやでもなかなかどうしてここまで読みやすくて面白い小説わなかなか書けんのでしょう、などと上から的失礼な目線で読んでいました。

    必要なことを最小限の言葉で伝える、これが一番大切なことですな。でもこれがなかなか難しい。書き足りないとわからないし、書きす過ぎるとそりゃあもう読み辛くてどうしようもない作品になってしまうのです。

    沢木わルポライターが本職だから、そういう無駄を省いて事実だけを伝える様なテクニックにわとても長けているのだろう。

    で、とにかく面白いので、たぶん下巻わすいすい読んでしまって、ああもう読み終わってしまうのか残念、とかなる。m(_~_)m(すまぬw)

  • 新聞の連載小説

    結構前に購入して積読になってたのを、
    映画が公開されると聞いて読みはじめた。

    忙しかったのもあるが、
    読了までにすっごい時間がかかったなー。

    リズムよくページをめくる感じにはなりません。
    後、半分。

  • 読了。レビューは最終巻で。

  • 藤原伊織の「テロリストのパラソル」も元ボクサーでアル中のバーテンダーがなぜか女にモテる設定で全共闘世代の妄想全開とバカにされていた。この作品の広岡もボクサーとしては挫折するも、引退後はアメリカでホテル王になり、40年ぶりに日本に帰国すれば、みんな自分のことを覚えていて、すぐに昔の恋人に再会、なぜか若い不動産屋の娘が世話を焼いてくれ、広い家を是非にと貸してくれる人が現れ、昔の仲間が揃った所に、教えがいのある若者まで登場する。欲しいと思ったものは必ず手に入る、わらしべ長者状態である。

  • レビューは下巻にて

  • 孤高で極限の精神を鋼の肉体で纏った選ばれし者、それがボクサーのチャンピオン。一人の勝者と残りすべての敗者、リングは栄光と挫折の目撃者でもある。40年ぶりに帰国した元ボクサーで主人公広岡は、当時同ジムで各階級の王者三人と共同生活を始めるが・。いづれも往時の勢いは影を潜め、時の経過は老いという現実へと後押しする。引退後の余生、老いを必然と受容するか抗するべきか万人に訪れるこの難題を模索する中、赤い糸かゴングのロープかに引かれる如く青年が・・。老いと対峙するボクサー魂が時間、肉体との狭間を揺れ動く心理描写は流石

  • 沢木耕太郎さんが高倉健さんのために書いた映画の原案が、御蔵入りしていたが、小説という形で蘇った。また、沢木耕太郎さんがボクサーを書くとなると、『一瞬の夏』を青春時代に読んだオールドファンには期待という言葉以上の昂ぶりを覚える。
    今回は新聞連載で読み終えた。

    ともにチャンピオンを目指した昔の仲間たち4人が同じ家に住み、才能あふれるものの挫折した一人の青年にボクシングを教える。青年は自信と素直さを取り戻し、チャンピオンへの成長を見せるが、眼に故障を抱えてしまう。
    主人公の藤原仁は再びグラブに手を通すが、若いころと異なる心の状態に気づく。若い頃はチャンピオンになりたい、何者かになりたいと念じ、ボクシングに熱中していたが、年老いた今は違う。現在の自分自身に意識は向けられ、今自分はどう”あるべき”なのかを問い、実践している。

    どうありたいのか。
    中年を迎えるころから自分も”あり方”を考えることが多くなった。
    一つの指針として本書を読んだ。

  •  沢木耕太郎の小説を読むのは初かもしれない(いや、きっと初)。大学生の時に『テロルの決算』を読んで以来、ノンフィクション、エッセイと数々の著作を読んではいたが、我ながらちょっとびっくり。ま、ほとんど小説書いてないってことだと思うけど。

     要は苦手分野なのかなんなのか、確かに沢木の小説が良かったとの評判はあまり聞かない。本書も最初は『三匹のおっさん』+ボクシングかっ!?と、いかにも今風で分かりやすい人物造形、TVドラマ向けの舞台設定(登場人物たちが共同生活する都合よい物件など)に、やや鼻白む。装丁、挿画が劇画調というのも現在(いま)の読者を掴むには止む無しなんだろうな~と、早くも☆ひとつかふたつ減じて読み始めた。
     が、アニハカランヤ、単行本上下巻一気読みくらいの勢いであっという間にのめり込んでの読了だった。

     さすが『一瞬の夏』『敗れざる者たち』と著者がノンフィクションの題材としてずっと追いかけていたボクシングのお話だけに、ボクサー(現役、引退した者含め)の心理描写、ボクシング界の歴史・変遷、練習風景や試合運びのリアリティが見事だった。丁々発止の拳の応酬、秒にも満たない瞬間を見事な筆致で描いていてシビれた。
     ただ新聞連載(毎日新聞2015/4/1~2016/8/31)という回数制限の故か、下巻の物語の展開があまりにも急で、もう少しじっくりと書いて欲しい箇所が多々。これでも「連載から大幅加筆」とあるから、新聞連載時は相当端折っていたのかと要らぬ心配もしている。

     主要登場人物は40年前の全盛期に四天王と言われた真拳ジムのボクサー4人。それぞれにワケありの人生を過ごし60代で再会を果たし共同生活を始める。当時のジムのマドンナだった”お嬢さん”も登場(白木葉子かっ!笑)。世話好きなヒロインとして不動産屋の女性が絡み、マスコット的に合宿所にかわいい仔猫を登場させるのも相当アザとい。そして才能を秘めた若きボクサーと彼らが出会うところまでが上巻。
     かつて自分たちがなし得なかった世界チャンピオンの夢を若者に託し、4人のおじいちゃんたちがそれぞれの必殺パンチを伝授、若者がマスターしながら世界チャンプへの挑戦という階段を登っていくという、実に分かりやすい先の見え見えの展開ではあった。必殺パンチを短時間でひとつひとつ習得し実践で披露し勝利していく様は「週刊少年ジャンプ」のノリだったよ。下巻はその過程を一気に描き切る。
     タイトルからもう結末さえも見え見えなんだけど、アクセル全開の飛ばしっぷりに途中下車も出来ずに一気読みで、けっこう滂沱できました。上下巻のバランスの悪さや伏線の張り方の甘さと回収の拙速さなどはあるのだけど、やっぱ男ってボクシングの世界観、好きなんだね~。あと、沢木節のかっこいい台詞に時折「おぉ!」と唸らされ、2017年新年1冊目としては十分満足の作品でした。

     上巻でやや倦まされたのは、スピード感や甘い設定等に加え、すごく作者が透けて見えたこともあったことを挙げておこうかな。
     やはりこれまでノンフィクション作家として読んできたこと、エッセイとして作者の素の思想、感情に触れてきたこともあり、いろんな場面場面で発せられる言葉、風景描写が小説の中の登場人物のものでなく沢木耕太郎のものと思えて、なかなか物語の中へ入っていけない気がしてならなかった。
     おそらく主人公の広岡仁一は年齢設定的にも著者の分身でもあったろうし、沢木自身も後進に、若き世代に夢を託す年齢になっている。その他、映画の話、街の移り変わりに対する感慨など、ほとんど沢木のエッセイを読んでいる気分。主人公が今の時代の歴史小説を読むクダリがあるが、描写が淡泊と主人公に言わせるのも、当然沢木が感じていることなのだろう。
     それと現代(いま)風の味付けとしては、身寄りのいない年寄りたちの共同生活の形を描いている点。さらには、若い登場人物たちも家族の絆が希薄なこと。これは核家族化を通り越した、この先の日本の在り方を著者として示唆していたのかなと深読みできなくもない。

     おまけにもひとつ。主人公が昔の仲間を山形は酒田の先のローカル線に乗って訪ねるシーンは、沢木のJAL機内誌での連載、フォトエッセイの確か初回を思い出させる。2年近く前のことだったか、羽越本線に乗って水田に映りこむ鳥海山を車中から撮った写真と文章。その風景のままの描写がこの作品にも出てくる。ひょっとしたら、機内誌のエッセイは本書のそのシーンの取材のために訪れた時のものだったのかもしれない。

     いろんなところ(特に上巻)で著者が顔を覗かせる小説でした。沢木耕太郎、小川軒のレーズンウィッチも好きなのかな~(笑)

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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