春に散る 下

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.92
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514424

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】残された人生で何が成せるか? 夢を見るときに人は強くなる──。4人のもとに現れた、才能あふれる若きボクサー・翔吾にボクシングを教え始めた4人は、いつしか彼に世界チャンプの夢を託すようになる。著者渾身、現時点での集大成たる一冊!

感想・レビュー・書評

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  • ボクシングとは縁遠かったが、楽しく読み進めることができました。

    織り込んでくる人生観や人となり、沢木耕太郎らしさが溢れています。
    この度は映画化され、横浜流星さんが演じているとか。
    中心となるチャンプの家も、そこに住まう人々の人生模様も着眼点が素晴らしい。

    旅をたくさん描かれた影響を感じる作品でした。

  • 下巻からやっとボクシングの話らしくはなってきましたが、新聞の連載だからか途中中弛みのような部分もありました。佳菜子のエピソードはボクシングというリアルなストーリーとかけ離れていて少しオカルトっぽくて、なくても良かったような気もします。
    佐瀬、藤原、星のそれぞれのエピソードはよかったし、クライマックスにかけての、スーパーライト級の世界タイトルマッチのシーンも臨場感があってとても良かった。

  • 上下巻、まとめての感想。

    新聞連載の1回目から読み始めた。
    主人公の仁一がまだアメリカにいる時から始まり、帰国してからの、かつて所属していたボクシングジムの、元会長の娘である現会長との再会、不動産屋での部屋探し、ボクシング仲間たちを探して会いに行く過程、そして翔吾との出会い。
    毎日、朝イチで欠かさず読んだ。ボクシングには1ミリも興味はなかったけど、仁一の、不完全燃焼さを抱えたままの人生が、少しづつ動き出していく様が読んでいてワクワクした。
    見た目おじいちゃん達が、かつての必殺技パンチで不良を撃退するところは、前半での一押し場面。そこから、物語が大きく動き出す。
    翔吾がチャンピオン戦に挑むまでは、わりととんとん拍子。ご都合主義的な展開もないわけじゃないけど、仁一達四天王と翔吾を応援しているいち読者の私は気にならない。気になるといえば、佳菜子ちゃんの過去のエピソードはいらなかったのでは?と思った。佳菜子ちゃんというキャラクターは好きなだけに、ちょっと惜しいというか、蛇足というか‥。サセケン、キッド、次郎の話の掘り下げは良かった。人生ままならないよね、から、仁一との再会を経て再生していく過程は、素直に、良かったね!と言ってあげたい。

    翔吾のチャンピオン戦は、文字通り手に汗握った。新聞連載を読んでいたものだから、続きが気になり過ぎて、いっそのこと連載が終わるまで封印しといて一気に読むか?と思ったほど。結局1話ずつ読んだけど。試合が終わった場面を読んだ時は、はあ〜〜と大きなため息が出て、自分が戦った様な爽快感だった。

    ラストは‥まあ、本のタイトルからして想像はついてたけど、みんなにもう一度会わせてあげて!と切に願ってしまった。仁一の遺言を読んだみんなの反応や、その後も知りたかった。ちょっとサッパリし過ぎの終わり方だったかな。

    佐藤浩市と横浜流星での映画化は、イメージぴったりじゃん!と嬉しかったけど‥いろいろ言いたいことはあるけど、2時間でまとめるって難しいんだなと実感した。でもね、チャンピオン戦の描写は凄かった。勝敗わかってても、息を止めて見入ってしまった。

    なんか、とっ散らかった感想で、読んでいただいた方、すみません。この物語、とても良いですよ!と伝わっていたら幸い(^ ^)

  • 元ボクサーのそれから。広岡仁一に寄り添った視点で書かれていて、不安で心許ない思いに共感できた。

  • 上巻よりは、一気に読めました。

    何でしょう…感想らしい感想がないなぁ。

    読むきっかけが、
    映画が公開されるとニュースを見てだし。
    映画を見ようと思います。

  • もちろん、深夜特急は私もバイブルだが、沢木氏の小説も結構好きだ。ストーリーだけではなく、文体を楽しむことができる著者のひとり。

    チャンピオンになれなかった主人公が日本に戻ってきて、以前所属していたジムの仲間を集め、再びボクシングへの希望を見る話。

    タイトルが物語を暗示しているので、ワクワク読みながらも陰を感じてしまうが、私も主人公も歳をとったからだろうね。人生のどうにもならない部分の受入やそれでもやはり良いものだと想う感じ、切なさ。

  • 若者は高校3冠の逸材だった。ボクシングをやめて放浪していたところ広岡と出会い、情熱を取り戻す。この後も、財産の整理をしたければ弁護士が現れる、世界戦がしたければライバルが譲ってくれる、と都合のいい展開が続く。文句を言いつつも読み続けるのは、無垢な存在の広岡を放っておけないから。この話は全部が40年前、アメリカで無一文になった広岡が、最後の10ドルで泊まったホテルで眠り続けている時に見た夢はないのか。ラストシーンのあと、彼はホテルで目覚め、無銭宿泊の後始末をどうつけるのか、頭を抱えるのではないことを祈る。

  • 下巻です!

    上巻よりも面白く読めました。
    著者の意図した主題である、時の流れとの折り合いの付け方、というテーマからは離れますが、才能ある若手ボクサーの登場で、皆のボクシング熱が再燃していく様がとてもよかったです。
    お爺達が若い子に指導する姿にもわくわくしたし、戦術や練習法など、試合に至るまでの展開もリアルでよかったし、実際の試合も手に汗握る感じでドキドキしました。

    面白かったんだけど、佳菜子の存在の意味だけは最後まで見出せませんでした。
    登場早々主人公のおじいちゃんに接近してくるところから違和感があり、その後明らかにされた彼女の過去にも鼻白んだし、結局怪我治せないし・・・
    この小説にあの子必要?
    彼女の存在しない、もっと男臭い世界でよかったんじゃないかなーと、沢木さんに言ってみたい(ウソ・笑)。
    (紅一点玲子さんがいればいいと思います!)

  • 命を全うするために生きるのでしょうね。

  • ニトログリセリン…
    ってことだけが 腑に落ちない。
    他は良かった。

  • 後半はようやくボクシングの話になる。まあご都合主義的ではあるが、面白く読むことが出来た。最後はなあ・・・ あと、佳菜子のあの話は必要だった?

  • 元ボクサーの4人の男達のもとに、若きボクサーが現れる。叶わなかったら夢の続きを若者に託す。
    リングの上で、チャンプになり、自由になれるのか?その自由の向こうには、何があるのだろう。
    若者は、最後にリングの上で、確かに自由になり、我々の見えなかった何かを見たのだろう。
    何か心残りがあり、戻ってきた。一緒に夢を追いかけてきた仲間、夢を託す若者との出逢い、彼らと過ごした日々。ただ一緒にいたい、そんな幸せを求めていたのかもしれない。
    なんかジーンとくるね、いい話だ。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00631739

    残された人生で何が成せるか? 夢を見るときに人は強くなる──。「チャンプの家」で共同生活を始めた広岡たちのもとに現れた若きボクサー・翔吾にボクシングを教え始めた4人は、いつしか彼に世界チャンプの夢を託し……。著者渾身、現時点での集大成たる一冊!(出版社HPより)

  • 今年2023年公開予定の映画原作
    文体はあまり好みじゃないけどなんとか読み終わりました〜
    上巻はおじさんがロードムービー風に昔の仲間を集める話で、下巻が若者達に触発されて生き直して行く話かな

    ボクシングの話なので試合の描写があるのに加えて、日常的な食べ物の描写が多くて、作家さんがそういう日々の暮らしを丁寧にされる方なのかなぁと思ったりしましたね

  • 2023/1/20
    にしては、軽い。

  • 十数年ぶりに沢木作品を手に取った。こんな小説を書いていたことさえ知らなかったが、最初は初めて読む作家のように恐る恐るページを繰っていたが、久々に自分のルーツとも言えるような沢木の文体に触れ、次第に引き込まれていき、一気に読み終えた。
    老いたボクサー達の話なんて、若い時に読んでもピンとこなかったろう。お互いの歳を感じる。

  • 古い読者なもので、沢木耕太郎といえばノンフィクション作家のイメージが強いのだが、そうか、こんな小説も書くようになってるんだなぁ。

    元日本チャンピオンクラスの老人(還暦すぎて古希近い)4人のシェアハウスで世界チャンピオンを育成するというのがおおあらざっくりのストーリー。確かにボクシングにまつわる記載が多いのだが、この小説の主題は「定年後男子の理想郷」を描いたものなんじゃないかと俺は思う。

    若いころ共同生活しともに世界を目指した男たちが、別々に生きた年月を経て再開し、それぞれの個性を侵すことなくほどほどの距離を保ちつつ、もう一度共同生活を行い、それぞれの若かりし頃の必殺技を伝授しつつ、一人の青年に世界チャンプの夢を託す。

    彼らにとって、なんてすばらしい生活だろうか。しかも彼らの周りには美人(彼らの歳相当の人と若い人と両方)を含め、力強くて温かい協力者がたくさんいるのである。当然、小説らしい様々なドラマが起こって読ませるのだが、ひょっとするとそういう紆余曲折の描写はこの物語においては些末な話なのかもしれない。それくらいに日常生活の記述がいい、うらやましい。

    ご都合主義でおめでたい非現実的な設定も多々出てくる。人の夢を聞いて「のんきなやっちゃ」と小ばかにするタイプの人は楽しめない作風だと思うが、俺なんかは「ええなぁ、こういう風に歳取りたいなぁ」と幸せな読書時間を過ごせた。

  • 黒木を育てることで,みんなが纏まって行くところが,夢に向かって進むことの大切さを教えてくれる,佳菜子の生い立ちもなかなかにドラマチックだが,それも含めてタイトルマッチになだれ込んでストーリーは盛り上がり,,,そしてここにタイトルの意味がわかる結末.ぐっと胸にくるものがありました..

  • 2017.5/24 一気読み。出会った青年翔吾のあまりの能力の高さに出来過ぎ感はいなめないが、読んでいて気持ちがよい。上巻で見えなかった広岡の来し方や、佳菜子の過去もはっきりしてスッキリ(;^_^)でもあの終わり方は悲しすぎて。。。

  • 上巻に続き、とても良い気持ちで読了。あざとい仕掛けや特殊なことは何も起こらず、本当に身近に起こりそうなストーリーにとても親近感が湧くし主人公たちに深く同情できる。最後はやはりという感じだが、それでも読後感は爽快。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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