星の子

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514745

感想・レビュー・書評

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  • キレイな装丁とタイトルに惹かれ手に取ったこの作品。
    主人公は小さい頃から病弱だった林ちひろ…娘が苦しむ姿をなんとかしてあげたいと、両親がのめり込んだのが「宗教」…。ちひろは生まれながらに「宗教」に属しており集会や研修旅行などに自然な形で参加し自身の居場所を作っていくが…ちひろの姉は家出し、両親はますます「宗教」にのめり込む…。
    読み終えてみて、これから何かが変わっていくんだなぁ…そう漠然と感じました。ちひろにも高校生になったらバイトしたり、友達とカフェで恋バナするような当たり前の日常があるといいなぁ…そんな風に願ってしまいました。

  • 新興宗教に傾倒している家で育った少女の話。
    少女・ちひろにとっては新興宗教が「標準」である世界だった。
    だけど世間とのずれに挟まれていく。

    ちひろはいろんな方面からいろんな種類の愛情を受ける。
    宗教から逃げ出そうと助け舟を出してくれる親戚、「友達じゃない」といいつつ一緒にいてくれる友達、同じ宗教の同年代の子たち、そして先生。
    けれどきっと、ちひろにとって一番うれしくて必要としている愛情をくれるのは、両親だけなのだろう。

    宗教団体の中では、ちひろはすごく居心地が良かった。
    その宗教の力で健康になったちひろ。
    雑誌にも取り上げられちょっとした有名人になったちひろ。
    団体の行事は楽しくて、「いい人」ばかりに囲まれているちひろ。
    「宗教外」の人からいくら助け舟を出されようとも、この宗教の中がちひろにとっての居場所なのだ。

    わたしの読解力が乏しいからなのか
    ちょっとよくわからない突然な終わり方だった。
    いつまでも両親と寄り添って星を見上げること。
    たとえ新興宗教の中にいようとも、世間から見ると歪な形であろうとも、ちひろにとってはそれが最大の幸せなのかな…と。
    そんなふうに解釈した。
    傍から見ると異様でも、人にはいろんな幸せのかたちがある。


    人によって評価が割れる作品かなと思う。
    辻村深月さんはこの作品を大絶賛していたそうだけど、ちょっとそれは私には理解できなかった。

  • タイトルが素敵な感じだなって読みだしたら、宗教にハマっていく両親と2世の話しでした。
    近所の公園でカッパのフリして皿に水かけてる時点で怪しすぎ。
    それが両親だって告白しても、壁を作らずに普通に接してくれ心配してくれるクラスメイト、信仰の自由を尊重してくれてるとこがいいですね。また、好きな人が信じるものを、一緒に信じたいと宣言する彼氏もカッコいいなぁ。

    逆に、霊感商法の被害にあって訴えてる人がいるとの噂や両親の手から子供を保護しようと真剣に心配してくれる親戚夫婦。

    宗教に対する見方は様々だけど、作中に神とか教理に関する記述は一切ないところが小狡いですね。
    読者の先入観と偏見で読み進めていくしかないところとか

    主人公の家がだんだん小さくなっていくところから察すると相当献金してそうだし、長女は家出してしまったのだから。周りから見れば騙されているように映るところが、
    本人達は洗脳されているのか不幸に感じてない訳だから救いようがないのか、むしろ救われてるのかなんとも言いがたい。
    幹部クラスになると金持ちで、大きな家に住んでいるのは宗教に限った話でないけど、どの辺に幸福を感じるかなのかなぁ。

    カゴの中で暮らした方が幸せな鳥もいるし、不自由を感じるなら抜け出せばいい訳だしこれも本人次第なのかなぁ。

    最後に親子3人で流れ星探して、いつまでも星を眺め続けたってあるのが。
    ゾーッとするんですけど。
    雪山とか行くのでわかるのですがタオルが凍りつく温度ってゆうと–10℃以下なんですけど、長時間いると凍死するんじゃないかと心配になります。

  • うーん?終わりに近づくにつれて不穏な空気がすごいのに、唐突に終わってしまってアレッという感じだった。
    宗教的なものって、子供は幼い頃から親の意向で何の疑いもなく信じているから、それが外から見たらどう見えるかなんて分からないんだろうな。自分の信念に関係なく、親が信者だからというだけで気付いたら入信させられているのは、思考の広がりも止めてしまうだろうし気の毒に思う。
    なんかちょっと現実的なお話でゾクっとした。

  • 最近とても好きな今村夏子さんの作品。
    「あひる」、「こちらあみ子」に引き続き手に取った。

    今まで読んできた今村作品とは異なる印象、全体に漂う「不穏感」は少なかったように思う。
    個人的にはその「不穏感」中毒になっていたので、「あひる」の方が好みだったかなぁ…

    自分のために宗教にのめり込んでしまった両親。
    周囲からの異物を見る目に気が付きながらも、両親を裏切ることができない主人公。
    両親、親戚、学校との関係を何とか成立させようと、努力する主人公がとても印象的だった。

    根底にある、信仰の部分を変えることって、そう簡単なことではないように感じる。

    自分だったらどうするかなぁ…と考えながら読み進めた。
    働き始めるまで我慢して、その後は程良い距離感で付き合うことを選択するだろうか。
    すぐに決別できる決断はできない気がする、ましてその理由が自分にあったのなら。

    両親と星を見ながら終わる最後のシーン。
    個人的には、主人公、そして両親共に離れて暮らすことを覚悟したように感じた。

    <印象に残った言葉>
    ・あんたはどう?だまされてるの?(P108 なべちゃん)

    ・最近増えてんだよ、季節はずれの不審者が…(P118 南先生)

    ・わからない。わからないけど、お父さんもお母さんも全然風邪ひかないの。わたしもたまにやってみるんだけど、まだわからないんだ。(P173 ちひろ)

    <内容(「Amazon」より)>
    大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。

  • 生まれたときから当たり前の世界。
    こっちが良いのか、悪いのか、外側から見たらどうなのか。
    どちらが正しいのか間違っているのか。

    余白の多い文章だなと思った。
    人によって解釈は変わるんだろうな。
    映画は興味ないけど、作った人がどう解釈したかはちょっと気になるかも。

  • 最後の会話が示唆するところがよくわからず、映画も見たけど、原作とは違う会話で、結局わからなかった。

    何かを純粋に信じる人って、100%善良な人なのかなと思う。
    水の効果を1%も疑わずに、そこから宗教にのめり込むなんて、愛する我が子のためとはいえ、逆にちーちゃんの重荷になっていることに気づかない。

    雄三おじさんやまーちゃんの行動は切なくなる。優しい親戚や友達がいて良かった。

    結局、ちひろも両親もどう変わっていくのか、変わらないのかわからないけど、だからこそ、心に残った。

  • 映画を観たあと、原作も読んでもっと深く味わってみたい!と手に取った。でも読みながら頭の中でもう一度映画を観てるような感じになっちゃって、岡田将生くん本当腹立つー!黒木華ちゃん怖すぎるわってなってました。映画ほぼ原作通りでした。素晴らしい。

    しかしながら、映画ほどは不穏さを感じなかった。ちひろの親への愛の方ずっと印象に残る。

    思春期前の子どもって親から何をされようが親を愛してしまうよね。愛しているから、盲信する。でも気付いてしまった。だけど信じたい、愛してるから。
    ちひろの両親はもちろんちひろを愛しているのだろうけど、ちひろのことを本当に見ているのかな、ちひろからのその愛に気付いているのかな、気付いたのかな。

    最初にこちらを読んでいたらまた感じ方が違ったかもと思うと、先に読んでみたかったなー。

  • 自分は信じているのか分からない…宗教の信者2世のリアルだろうな、と思いました。白黒ハッキリさせない、善し悪しをハッキリさせないところが却ってリアルに感じます。しかし、個人的にモヤッとした終わり方だったように思いました。

  • 怪しい新興宗教にはまっている両親と、
    その家に生まれた娘。
    中学生の娘の眼を通して描かれる家族の日常は
    拍子抜けするほど歪みが無い。
    彼女の周りには、
    親子の愛も友情もあって穏やかに日々を過ごしている。
    ただ、引っ越すたびに家がどんどん狭くなっていったり
    両親が一日一食しか食事をとらなかったりと
    当然の事としてさらりと書かれている出来事に、
    読んでいて『これは異常事態だ』と頭の中で黄色信号がともるのだ。
    彼女が感じている平凡な日常と
    読んでいるこちらが受け取る危機感のギャップに
    なんだか不穏なもの感じずにはいられない。
    少しずつ『世間の見る目』を理解してきた彼女は
    どちらの道を選ぶのだろう。
    私には明るい方へ進む終わり方に思えたのだけれど。。。

著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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