物語のなかとそと 江國香織散文集

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515438

作品紹介・あらすじ

江國香織の創作/生活の「秘密」がひもとかれる、ぜいたく、かつスリリングな一冊。この二十年のうちに書かれた掌編小説とエッセイから、すべて初収録。

感想・レビュー・書評

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  • 敵わないなぁと思う。
    そりゃあ私は自分の文章を愛しているしそれは私にしか書けないものでもある。それでも、それは私がしたいこととこんなに違う。自分の文章に疑いの気持ちを向けてしまうのはこういう時だ。もしかしてすごくありふれてしょうもないものなのかもしれない。悲しくはないけれど少し絶望する。‬

    しかしながら、自分の中で渦巻く言葉や感情を文章にして外に出すことを教えてくれたのは江國さんだし、私はそうせずにはいられない。江國さんの物語に出逢っていなくても書いていただろうけれど、それは文中の言葉を借りるなら「辞書なしで、いきなり世界と向い合う」ことになっていただろう。

    どうせやめることなんて出来やしないから。素晴らしい文章を読んで自分のしていることに疑問を抱きそうになった時、噛んで含めるようにそう言い聞かせる。


    ------------------
    見返しの青が美しかった。これは江國さんか編集者さんかこの本を作るのに携わった誰かが選んだ色なのだろうけれど、表紙よりもこの本を表しているような気がする。

    私は青という色に憧れがある。それは私の肌にはっきりとした青が似合わないせいもあるだろうし、単純に青の持つ静謐さと凛としたたたずまいを昔から好んでいたこともある。
    この見返しの色合いは完璧で、美術館でただこの青に塗られた一枚の絵があったら買っていたかもしれない。

    そういえば家の壁に飾っている絵葉書のうち2枚は青を基調としているし、海や空を眺めるのも好きだ。気づかないうちに青は私の一部となっていたのかも。それにしてもいいなぁ、この青。切り取ってこれだけ飾ろうかしら。見返しを眺めながら少し得をした気分になった。

    • 大野弘紀さん
      素晴らしく、美しいレビュー
      素晴らしく、美しいレビュー
      2020/08/29
  • エッセイや短い物語、あるいはエッセイと物語の中間のような小話が収められた本。友人がこの本を読んでいるようだったので、自分も読んでみることにした。

    毎日二時間入浴して、朝昼は果物を沢山食べる。外出時は本としゃぼん玉液を持って行くという江國さん。
    お風呂二時間もすごいけど、しゃぼん玉液を持ち歩くことに対しては理由がまったくわからなくて、怖さすら感じてしまった。浮世離れしている、ということなのだろうか。

    初めて代官山を歩く時、十三歳の江國さんは太宰治の『斜陽』で武装したらしい。斜陽と代官山、陰と陽みたいだ。

    自分が十三歳、中学一年だったころは教室で江國さんの書いた『冷静と情熱のあいだ』を読んでいた。過去を背負い続ける男女の恋愛話を読みながら、大人の女性とはこんなにもお風呂に入るものなのだろうか、と疑問に感じたことを思い出した。
    約二十年経ったいまならわかる。江國さんがお風呂好きだったから、あおいもお風呂好きだったんだな、と。

  • どこからどこまでが小説で

    どこからどこまでが現実だろう

    小説的に 現実を捕えることはできるし
    現実的に 小説を描くこともできるし

    真実が どこにあるかが 重要なのではなくて

    きっと そこに感じたものが すべてだった

    心の中に蓄えられたありとあらゆるものを

    好きなように出せる場所があるというのは

    とても贅沢で豊潤で
    ときめきときらめきが一緒になったような時間

    驚きと発見
    悟りと初恋が
    同時に起こるような

    心の中にあるものに
    触れたい

    それだけでもう幸せ

    ないようなんて  なんだっていい

    かんじたものが すべてだから

  • この人の言葉の選び方が好きです。
    日本人作家で、その文体とか言葉の選び方とか書き方のくせが心底好きだと思える人が私には今のところあまりいないので、とても貴重。

    江國さんの散文は詩みたい。もしくは雨音。
    全然うるさくない。というか、すごく静か。
    そして、とても女っぽくて湿っていて、たまにちょっと湿り過ぎててこわいときがある。(目がいっちゃっている変な人を前にした時のような怖さ)

    しかし、今回の本を読んで、思ってた以上に乙女な人だと思った。
    お風呂に二時間、とか、朝食は果物(いちじくが多い)、とか、まとめて読むと、乙女心の食べ過ぎで、ちょい胸やけが・・・
    もし私が男だったら、あんまり近寄りたくないタイプかもしれないとも思う。

    あとがきに、「エッセイよりも小説の方により自分が露呈する」と書いてあったけど、読んでいる私もそう感じた。

    • 大野弘紀さん
      雨の音

      まさに
      雨の音

      まさに
      2019/09/04
    • みけ猫さん
      雨音に同意、ありがとうございます!
      うれしいです。

      でも、書いたときは、「これで江國ファンを敵に回したな」と思っていたので、朝ひらい...
      雨音に同意、ありがとうございます!
      うれしいです。

      でも、書いたときは、「これで江國ファンを敵に回したな」と思っていたので、朝ひらいて「いいね!」を見たときは、魚クンのようにギョギョッとしてました・・・。
      2019/09/04
  • 江國香織さんのもっている空気感が好きです。

  • さまざまな新聞や雑誌に掲載された、「書くこと、読むこと」に関する散文集。江國ファン必読。あとがきに笑ってしまいます。また読みたい本が出てきて、生き延びた。

  • 物語を作ってる人じゃなくて、物語の中に居る人なんだなぁと思った。

  • 書く、読む、本の周り、のアレコレを書いた散文集。透明な感じでサラサラ読める。

  • エッセイと若干の掌編小説からなる。まさか離婚されていたとは。1人暮らしですか。いつ読んでも江國の文章には透明感と毒がある。エッセイでは生き様、感じ様がより鮮明である。独身となり、今後の作品にもその影響があると感じる。放たれたものはやはり毒であったのだろうか。

  • 感想書くのがもったいないくらい、一つ一つの文章が心の中に染み込んで、言葉にできない満足感でいっぱいになった。

    雑誌などに掲載された短い文章(エッセイも小説も)を集めたもの。
    江國さんのデビュー当時の不安を綴った文章もあって、新鮮だった。
    好きな本もたくさん紹介されていたので、読みたい本がいっぱいできた。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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