選書281 待賢門院璋子の生涯-椒庭秘抄 (朝日選書 281)

制作 : 角田文衛 
  • 朝日新聞出版
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784022593818

感想・レビュー・書評

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  • 璋子と璋子を取り巻く人々の生きざまが、膨大・詳細な史実と共に記されている。
    充実の内容だが、璋子が時代を築けるはずもなく、むしろ時代に流され、自身の人生さえまるっと他者に委ねていたのではなかろうか。
    他者を呪うて生きる晩年、というのは寂しい。

  • 著者の角田文衛氏は平安朝の研究者で大学教授でもあった。
    当時の日記や資料を駆使して実に詳細に描かれている。
    小説ではない事実の重さに胸が痛む。
    調べていくにつれて、文字にしてゆくにつれて氏は璋子に恋していかれたのではあるまいか。
    崇徳天皇と後白河天皇の生母であり、その兄弟の争い(保元の乱)にどんなにか苦悩し見守るしかなかった立場。
    璋子は幼い内から養父となった白河天皇に愛され鳥羽天皇に嫁いでから崇徳を産んだ。
    なんという女だろう。それは大河ドラマでも反感を買っている。
    しかし、本書を読むと同姓として悲しみばかりが浄化されるような感じがする。
    過日、璋子が造営し晩年を祈りの日々の中で過ごしたという法金剛院へ行ってきた。清楚で可愛いお寺だった。
    もう一度本書を読み返せば大河ドラマの「平清盛」がさらに面白くなりそう。

  • 保元の乱のちょい前、平安時代末、鳥羽天皇の皇后、
    美貌で名高い待賢門院の評伝です。

    佳人の誉も高いのですが、この方、
    どこまで本当かわかりませんが、
    相当にスキャンダラスです。

    養父である白河上皇との不倫関係が噂され、しかもその白河上皇の肝入りで
    白河上皇の孫である鳥羽天皇の皇后になったあとも関係が続いていたとかどうとか。
    さらに系図上、鳥羽天皇と待賢門院の子である崇徳天皇は、
    ほんとは待賢門院と白河上皇との子だったとか、
    入内前に青年貴族(音楽の指南役)などとの関係が取りざたされたり
    (この件は当時の貴族の日記にも複数見られるようなので、
    少なくとも噂になっていたのは事実らしい)、
    不穏な噂の多い人です。

    この本では、特に崇徳天皇が誰との間の子だったのか
    (父親は白河なのか鳥羽なのか)ということに
    待賢門院の生理日まで特定して詳述しています。
    のちに鳥羽と崇徳が対立して、保元の乱の原因のひとつに
    なっていたりするので、歴史的に意味のある考察ではあると思いますが、
    作者の執念を感じます。

    結局、この本では崇徳は白河の子と推論していますが、
    ほんとはどうだったんでしょうね。

    こんな感じなので、ゴシップ誌を読むような感じで(スミマセン。下世話で)、
    すごいスピードで読めてしまう本です。

    しかし、肝心の美女、待賢門院はどういう人だったのか、
    いまいち見えてこないのですね。

    待賢門院堀河という百人一首にとられるような有名歌人も
    彼女に仕えていたくらいなので、一級のサロンが形成されていた
    ようですが、
    清少納言が語る中宮定子のように、
    あるいは紫式部が語る中宮彰子のように、
    待賢門院のひととなりがわかるようなエピソードが残っていません。

    天下の権力を握っていた、
    待賢門院の養父、白河上皇。
    この本を読む限りでは、養っていた彼女と関係していたのは
    事実としか見えないのですが、好き放題ぶりに呆然。
    待賢門院が、その美貌で周囲の人を籠絡したというより、
    白河が手を出したって感じなんですよね。

    つまり、待賢門院は常に受け身の印象。
    自律的に動いた意思が感じられないのがなぁ。
    小説やらドラマやらの題材にするには小物っぽいんだよなぁ。
    同じ受け身さんでも建礼門院レベルになると、
    浮き沈みの激しさが半端なくて、負けちゃうし。

    しかし、権力者が、こんなことやってちゃ、
    関東武士に実権を取られるのも当然だよなぁ。

  • 院政期は興味があって一時期よく勉強していたんだけど。
    この本は1人の人間の人生に焦点を当てて、詳細に調べ上げているから面白い。
    それに、今まで読んできた歴史の本とは違った視点だった。
    それにしても、生理の周期まで計算するとは・・・

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