アウシュヴィッツの地獄に生きて (朝日選書)

  • 22人登録
  • 3.27評価
    • (1)
    • (3)
    • (6)
    • (0)
    • (1)
  • 3レビュー
制作 : Judith Sternberg Newman  千頭 宣子 
  • 朝日新聞 (1993年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022595799

アウシュヴィッツの地獄に生きて (朝日選書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 著者のジュディス=スティンバーグ=ニューマン氏は1919年生まれの女性で、当時ドイツ領だったブレスラウが生まれ故郷。そこからアウシュヴィッツに送られた約1万人のユダヤ人のうち、生きて帰ってこれたのは38人で、そのうち女性は2人だった。

    著者と訳者の出会いはアメリカで、ニューマン氏に著作を読んでみるかと問われたのが日本語訳をする遠因である。「むさぼるように読みました。戦争をイメージでしかとらえることのできない私にとって、平凡な女性の眼を通して描かれた強制収容所の日々は、衝撃的で想像を絶するものでした」と記している。

    戦争が始まってから、ユダヤ人の生活は日に日にひどくなり、市民としての権利が剥奪されていった。1942年2月23日に仮設収容所に連れていかれ、数日後、家畜用の貨車でアウシュヴィッツへ送られた。ナチス親衛隊によるひどい扱い。女、子供、病人、年寄りを「選別」してトラックへ投げ込んでいたという。

    収容者に休日などあるはずもなく、疲れ果てた頃に新たな拷問が試される。一時間走らさせられ、「一度の耐久マラソンのテストで五千人の女の中からおよそ二千人がはずされて、二十五号棟に連れて行かれました。それは死の建物で、そこから収容者たちはガス室へと送られました」。それだけではなく、親衛隊による人体実験も行なわれていた。

    ロシア軍前線が近づいた頃、アウシュヴィッツ(ビルケナウ・アウシュヴィッツ・ブーナ=モノヴィッツの3つの地域を通常「アウシュヴィッツ」と呼ぶ)の二十万人を一晩で撤退させよという命令が1945年1月4日出され、目的地はグロスローゼンであることが伝えられ到着したものの、そこには収容できる場所などなく、ロシア軍の接近もあり、収容所自体が崩壊しつつある状態であった。

    新しい目的地はラーフェンスブリュックとなり、貨車で移動し、到着。そこで待っていたのは飢餓と死だった。仕事もなければ食べ物もなく、収容者は各地から集まってくるので全員を収容することができなかったのだ。それでも、アウシュヴィッツを撤退して以来何も口にしていなかったので、3日目にあったスープの配給が「最高のご馳走でした」。

    2週間後、マルコフへ移送。ここでは兵舎に住むことができ、トイレや浴室もあり、毛布まであった。じゃがいもが日曜日に与えられたり、薄いとはいえ毎日温かいスープも配給されたり、「マルコフにも強制収容所がありましたが、ここ(ラーフェンスブリュック)とは生活を異にするものでした」。

    1945年の2月が終わる頃、再び移動の準備が始まる。6日後にライプチヒに到着し、そこからタウハへ移された。タウハの収容所はあまり大きくはなかったものの、周りを工場で囲まれており、労働収容所というようなところで、収容所長は誠意ある人だった。「彼はまた、私たちがすぐに自由の身になれるよう希望していると言ってくれました」。毎日普通の食事もできた。

    その後、収容所を出発し移動中に脱走を試みた。脱走中サンドウィッチをくれたり、靴や服がないか近所に聞いてくれたりする人もいた。ドイツ人やドイツ国防軍の中にはこうしてよくしてくれる人もいたと書かれている。

    最初に会ったロシア兵も、ドイツ人のパン屋で食べ物や飲み物を調達してくれた。そして、まだ故郷のブレスラウでは戦いが続いていたものの、ロシア軍が著者たちを自由にしてくれたのは1945年5月1日だった。同5月8日、ブレスラウの陥落とドイツ軍の敗北による戦争終結が発表された。ブレスラウに着いたのは1945年7月5日。しかし、ロシア軍占領下では未来に希望が持てない気がして、ブレスラウからアメリカ軍占領地へ移ることになった。その後、収容所の仲間と結婚し、1947年6月からアメリカで生活することになる。

    「訳者あとがき」にて、日本人の歴史認識についての問題が書かれている。韓国人の友人に「本当の気持ちとして、日本人は昔のことをどう思っているの?」と聞かれたことがあるが、はっきりとした答えができなかったことを振り返って、「自国のことさえ知らぬ人間が、いまの複雑な国際問題について、明確な意見など持つことができるものでしょうか」と問題提起をしている。「一人一人が経験や知識から得た価値観によって、個人としての意見を持ち判断していくしかないのです」。「知らないから、苦手だからと、だれかに決めてもらえるようなことではないのです」。

    同じく朝日選書の『アウシュヴィッツは終わらない』よりは読みやすい印象。「「尊い自由を守り抜き、永久の平和と人類愛を祈ってほしい」というニューマンさんのメッセージがどうか届きますように」との願いで「訳者あとがき」は終えられている(さらに、この本には望田幸男「強制収容所の歴史と意味」という解説が付されている。一読してみる価値はあるだろう)。

  • ヒネクレものの僕が読んだ本の中で一番感動した本です。イメージがビビッドに沸きます。
    本当にオススメです。

  • 読みやすく、生々しい。
    収容所内の選ばれたユダヤ人が、収容されているユダヤ人にひどい仕打ちをしていた事を知り、愕然とした。
    ナチスは人間の醜い感情を上手く使って、人を操ったんだと実感した。

全3件中 1 - 3件を表示

アウシュヴィッツの地獄に生きて (朝日選書)はこんな本です

ツイートする