戦争責任・戦後責任: 日本とドイツはどう違うか (朝日選書 506)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022596062

作品紹介・あらすじ

侵略した近隣諸国への謝罪と補償は、どのようになされてきたか。歴史の教訓を未来に生かすために、近現代史、日本アジア関係史、ドイツ思想、政治学の第一人者が「過去の克服」問題を究明する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本とドイツ、何かと比較される両国の戦争責任・戦後賠償について調べてみました。 戦争責任とは?戦後処理とは?
    考えさせられる一冊であり、我々世代が考えないとならない。解決しないといけない世代であることは間違いないでしょう。まずは関心を持つこと、考えを持つこと。ここから始まると思います。

  •  所収論稿は次の通り。

    望田幸男「『戦争責任・戦後責任』問題の水域」
    (日独両国の戦争責任・戦後責任の履行の比較)
    田中宏「日本の戦後補償と歴史認識」
    (日本の軍人恩給や対外賠償における自国民中心主義の解析)
    粟屋憲太郎「東京裁判にみる戦後処理」
    (東京裁判と日本人の戦争責任意識の関係)
    三島憲一「ドイツ知識人の果たした役割」
    (戦後ドイツの知識人・論壇における戦争責任問題の変容過程)
    広渡清吾「ドイツにおける戦後責任と戦後補償」
    (東西ドイツの戦後補償と冷戦構造との関係)
    山口定「二つの現代史―歴史の新たな転換点に立って」
    (日独両国の歴史認識の相違の客観的要因)

  • 戦後の日本とドイツの違いが知りたかった。やっぱだいぶ違う・・・

  • 新聞連載の書籍化。あらためてまとめて読んでみると、気づくことも多いですね。

    昭和16年12月に始まった太平洋戦争。開戦はアメリカなどからの圧力もあって“立つしかなかった”という理屈も理解していましたが、その圧力が始まるきっかけの満州事変や日中戦争には、言い訳の余地はないのではないか。
    第一次大戦で戦争に嫌気がさしていた国際情勢のなかで、その痛手を受けなかった日本だけが、第一次大戦以前の帝国植民地主義を引きずっていたために起きた事態、という説明に、説得力があります。(この話、最近=これを書いている10年5月頃もどこかで読んだ気が。井上ひさしかな)

    [07.11.28]

  • 日本の戦争責任とは解決された問題だろうか?を問いただす本

    ドイツとの意識の差は、アウシュビッツと原爆ドームである。

    と、このように論じる他恩給法など国内の法律等にも不備があった事を伝える

    ただ、単純にドイツと日本を比べて、日本もドイツをマネしろって本では無く、自力で解決せねばならないとしている。と感じた

    古い本ではあるがだからこそ現代に問いかけるモノがあるような気がする。

  • 日本とドイツの戦後政策の比較を、1992年に開かれたシンポジウムを基にまとめたもの。
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    道義的なもの、思想的なもの、実利的な賠償政策、戦犯裁判への反応、制定された法案、教科書の内容、と扱われている範囲は広い。
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    痒い所に手が届いている徹底振りという意味でも、論考のレベルの高さという意味でも、本書の内容は素晴らしい。
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    著者達は、左派に属するので基本的に日本の戦後政策を批判する立場にあるわけだが、安易にドイツを模範することで日本側の政策に短絡的に猛省を促すといった態度はとらない。徹底した実証主義が採られた後、日本の政策の不備を指摘するというスタイルが守られている。マルキシズムの影響下で盲目的で観念的な反省論を行ってきた戦後の左派に対しても批判が加えられていて、ここでの著者達の態度は戦後リベラルが採るべき態度であっただろうし、あるいは今後においても採られるべき態度だろう。
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    「責任論」とは別に思ったこと。本書でも若干指摘されていることでもあるが。日本においては旧軍人を中心に手厚い国内賠償を行い、体外賠償は微々たる額である。逆にドイツでは巨額の対外賠償や継続的な賠償を行っている。こういった差が出てしまった最大要因は道義や思想以上に、地政学的な要因が大きいんだろう。冷戦下で、フランス、イギリスといった近隣の西欧諸国との経済関係の維持の為、そして東ドイツ、西ドイツ間での道義責任の競争といったものが、ドイツを賠償行為に駆り立てた最大要因になっている。
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    逆に、日本がこれだけ対外賠償額が少なくて済んだのは、戦後の経済関係のおいて主たる相手国家がアメリカであったことや、アジアで防共の最前線に位置したことがあるんだろう。
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    毎度思うことだが、日本は冷戦構造の最大の利益享受国家だった。
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    本書の内容に戻ると、第三章の、三島憲一によるドイツの戦後思想について言及した『ドイツ知識人が果たした役割』が特に素晴らしい。
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    戦後ドイツにおいても、終戦直後は、戦争犯罪を「一部の異常な集団(ナチス)が行った野蛮な行為」として、高いドイツの文化的伝統を謳い上げ、回帰することで処理しようとしたこと。後に、そういった古典教養主義的な立場に対しての批判が一部知識人から加えられ、この古典教養的な思想に基づいたドイツの「文化・生活様式」こそがナチを生んだのである、との批判的対場の形成に繋がっていく過程が本章では描かれている。
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    そしてここで興味深いのが、ドイツにおいての終戦直後のこの古典教養主義の回帰現象が、当時ドイツに留学していた日本人学生によって日本に持ち帰られ日本の戦後思想の源流になったと指摘している部分だ。周りを見渡して見れば、ドイツは「一部の異常な集団(ナチス)が行った野蛮な行為」として戦争責任を処理したとか、戦争を「野蛮な行為」として否定する言説は今でもよく見聞きする。
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    戦後政策に限らないなら、高田里恵子が『グロテスクな教養』で指摘しているような日本の教養主義へのドイツからの影響はもちろんこの一端だろう。

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