大正天皇 (朝日選書 663)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022597632

感想・レビュー・書評

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  • 一大論争を巻き起こした噂の書籍(笑)。アマゾンレビューを見ていただければ全体像がつかめるかと…。私もアマゾンレビューを見て、読むのを控えていた人間です(笑)。他の大正天皇史料を読んだ後に、そろそろ、と思ってこのたび購入しました。まぁでも、思ったより悪くない本かな、と思います。むしろ巡幸行路などについては、図付きで詳しいものが他で見れなかったので、この本は重宝。よくも悪くも、大正天皇研究にとっては欠かせない1冊であることは確かかと思います。

  • 「明治」と「昭和」にはさまれて埋もれがちな大正天皇像に興味があって読みました。

    病気がち、というイメージがありましたが、それはすこし払拭。

  • あたりまえですが、明治、大正、昭和はつながっているんですね。
    貞明皇太后のエピソードが強く印象に残っている。

  • 遠眼鏡事件の真偽のほどが明らかではないってのは初耳だったな。
    病弱な天皇と気の強い皇后というステレオタイプな認識しかなかったけど、これ読んでイメージが変わった。
    反省してます。

  • あまり知られていない大正天皇の半生と悲しき晩年、20世紀という過渡の時代を示す。行幸と近代国家の体制強化、メディアと民衆など、いろいろな面で非常に面白い。

  •  ひじょうにおもしろかった。自分は歴史にはひどく疎いので、読み物として評価する。大正天皇の評伝として、十分におもしろく読めた。<br />
     筆者はまず、大正天皇の「遠眼鏡事件」の話から始める。当時誰もが知っていたあの奇怪な事件。大正天皇が、国会にて詔書をくるくる巻いて遠くをぽおっと眺めたという、あの事件である。これをもって、大正天皇はすこし頭がおかしい人だった、という説が通説となっていた。しかし筆者はここに疑問を持つ。まずこの遠眼鏡事件だが、いざ調べてみると、いつ起こったのかすら定かではない。誰もが知っていたのに具体的な証拠がほとんどないのだ。かろうじて残っている実際に「見た」という証言をとってみても、不思議なことに、起こった年代がはっきりしていない。どうにも怪しい。しかも当時「天皇」という存在である彼が何故そこまで貶められることになったのか。明治天皇のイメージと、大正天皇のイメージはあまりに違いすぎる。この差異の陰には一体なにがあるのか。筆者は大正天皇の実像へと迫っていく。なかなかに引き込まれる出だしである。<br />
     しかし読み終えた今、いくつかの疑問もある。筆者は大正天皇の人間性を擁護しようとするあまり、ときどき無理な「私見」が垣間見られる。丁寧に証拠を挙げているわりには最後の「私見」に強引さを覚えるのである。一読者としては、大正天皇はやはり天皇には向かない人柄だったのだろう、というきわめて素朴な感想を覚える。もちろん知恵遅れなどではない。だが政治的に優れた人物とはとても感じられなかった。よって本書は、大正天皇に対する通説を根底から覆すというまでにはいかない。<br />
     しかしそれは問題ではない。この本の優れた点はそこではなく、むしろ様々な言動から浮かび上がってきた「大正天皇」の生々しさにある。この愚かにして愛らしい姿には忘れがたいものがある。ひとりの「人間」の記録として十分におもしろい本だった。(けー)

  •  大正天皇。明治天皇と昭和天皇の間にあって、影の薄い存在である。天皇として在位した15年間のうち、最後の5年近くは政治の表舞台にも立てなかった。精神的に病んでいた、と漠然と思われている。
     その「虚像」に挑んだのが本書である。本書によれば、幼少期は確かに病弱だったものの、皇太子として過ごした若き日々は全国各地を巡り、四人の男子(昭和天皇・秩父宮・高松宮・三笠宮)にも恵まれた(明治天皇は子供は多かったが、無事成長した男子は結局、大正天皇だけ)、そんな健康な人だったというのが分かる。
     しかし、天皇の任務というのは、ただでさえ過重なものである。また、日露戦争後、日本も、ただ列強に追いつけ追い越せだけでは行かなくなった。列強の仲間入りをした帝国日本を一身に背負わなければならない。それに耐えうるほどの強さは、彼にはなかったようである。即位後、徐々に健康を悪化させ、やがて、主君押込のように、摂政が置かれ政治的実権を剥奪される。天皇家の後継ぎに生まれたばかりに味わわなければならなかった悲劇と感じてしまうのは、私だけなのだろうか。
     本書については、伊藤之雄氏による論証への批判がある。それを差し引いても、大正天皇に初めて光を当てた本書の意義は大きいと思う。

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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