パンツが見える。: 羞恥心の現代史 (朝日選書 700)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022598004

作品紹介・あらすじ

パンツが見える。それを喜ぶのは男性で、見られて恥じらうのは女性。でも、つい50年ほど昔まで、たかがパンツごときでときめく男はいなかった。なぜなら、和服の女性はパンツを穿いていなかったから、ふとしたはずみでチラリと見えてしまうのは、パンツなんかじゃなかった…。「陰部を見られても、場合によっては仕方ない」、それが戦前の女性の感覚だったはず。だから、多くの女店員が裾の乱れを恥じて墜落死したという「白木屋ズロース伝説」は眉唾だ、と説き起こす。「パンツ」をめぐる感性の興亡を考証する、著者10年の思索の結実。

感想・レビュー・書評

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  • 長らく和装の生活を送ってきた女性たち。
    急に洋装が取り入れられてもパンツがはかれるようになるまでは、
    時間がかかった。「パンツ」普及に至るまでの時代の流れと、
    感性の変化を多くの資料から考察し、語る。
    1 白木屋ズロース伝説は、こうしてつくられた
    2 パンツをはかなかったころの女たち
    3 ズロースがきらわれたのは、どうしてか
    4 「みだら」な女も、はいていた
    5 パンチラをよろこぶ感情が、めばえるまで
    6 ズロースからパンティへ
    7 くろうと筋からの風俗史
    8 一九五〇年代パンチラ革命説
    主要参考文献有り。

    白木屋ズロース伝説の真相の検証から始まる女性の「パンツ」考。
    洋装が取り入れられても、多くがパンツをはかなかった理由。
    当時の本、雑誌や新聞の記事等を検証、考察し、語りに語る。
    考えてみれば、そもそも和装の歴史が長い日本では、
    女性には下穿きが無く、アソコを隠さない日常があった。
    その後、洋装が取り入れられるにつれ、
    パンツ、ズロース、さるまた、ももひきをはく女性もいたが、
    それは学業や職業のためで、依然多くははかなかった。
    ズロースと、和装の美観維持の相反。
    パンツは窮屈、はき心地が悪い。だが、
    洋装の広がりと布地や縫製の向上もあって、20世紀半ばから
    パンツが広まる。ミニスカートの登場はズロースからパンティーへ。
    そして男性にパンチラを喜ぶ感情が、
    女性にはパンツが見えるのに羞恥心が生まれたという・・・。
    隠されたら見たくなるってことか~。
    多少くどいけれど面白真面目で、楽しめました。
    特に、多くの文芸作品や論評を取り上げ、検証し、
    或いは反駁するのが小気味よくて、面白かったです。

  • 女性の下着の歴史。戦前には下着なんて履いていなかったという所からの考察。そして、対比される男性の興味。下着はいつから煽情の的になったのか。ラッキーでパンチラが見えるなんていうのはレベルが低い。昔はラッキーで陰部が見えたのだという。羞恥心も今と昔では違う。確かに、外国では女性も下着を平気で人目につくところに干している。面白い!ただ、後々、延々に続くパンツ談義に胃もたれしてきます。

  • 男が覗くから女が隠すのか、女が隠すから男が覗くのか? 「なぜ男はスカートの中を見ることに、これほど興奮するのだろうか」という下世話な謎は、「つい数十年前まで、和装の女性はパンツすら履いていなかったのに」(つまり、覗いたところにパンツがあるというのは、男にとって残念でありこそすれ、喜ぶことではなかったはずなのに)という本格的な疑問へと展開される。井上章一は、当時の京大生にとっては必読書だったものだが、おそらく『美人論』以来、20年振りくらいに読んだ。

    有名な白木屋ズロース伝説(白木屋の火事で、和服を着ていた女性店員たちが、陰部が野次馬に晒されまいとするあまり、命綱を手放して転落死した)を断定的に否定するショッキングな幕開けに始まる本書は、まさに「知の探求は最高の娯楽」を地で行く面白さで、井上章一は本書によって、この問題における第一人者(一人中)としての立場を確立したと言える。

  • 小説や新聞,漫画などに書かれているパンツがらみの文を丁寧に拾って,ノーパンからズロース,パンツ,そしてパンチラへと変遷する女性,男性の意識を論証していて,もうパンツは結構というぐらい読み応えあり.

  • 白木屋で下着をつけない和服の女性が恥ずかしいのでそのまま焼け死んだ、という話をなかば信じていた。この本で、男性も焼死していたことと、低層からの店員は女性もほぼ逃げられていたことで、フェイクであったことが明らかに示された。
     米原万里の推薦本であった。とても面白いが、卒論の参考本にはなるまい。

  • 100Pでギブアップ

  • 0133
    2019/08/22読了
    ずーーーっとパンツだった。面白かった。
    文明開化してもパンツ(ズロース)を履くことが少なかったというのは驚き。職業婦人たちは履いていた、というがそれが性的な仕事の人がよく履いていたとあるのが面白い。パンツの意味がまるで今と違う。
    戦後になってもなかなか普及していかなかったというのが驚き。若い人はともかく年配の方は全然履かない。
    パンティーになってもやっぱり性的な仕事の人たちから始まって一般に広まっていくというのが面白いなあ。
    男性もパンツを目当てに見るのがここ数十年のことというのが驚き。
    パンツではなく局部だったり膝とか腿をみているとは。
    パンツを履いてれば見えても恥ずかしくないというのは男女ともに共通の考え方だったとは今では考えられない。
    トイレが男性共通の時代があったのも驚いたなあ。
    新しいパンツが欲しくなった。

  • ●昔、女性はパンツを履いていなかった。それゆえパンツ(陰部)を覗かれることに対しての羞恥心もなかった。パンツをめぐる羞恥心や感性の変遷を考察した本。

  • 「パンツ」をめぐる女性の羞恥心と男の感性の興亡を考証する著者渾身の一作だ。なぜ「パンチラ」に男は萌えるのか? またそれはいつからそうなったのか? 女性は女性で、いつから下着の露出を気にするようになったのか?
    いいねぇ。このテーマにここまで真面目に取り組むこと自体が素晴らしい。

  • 久米書店

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著者プロフィール

建築史家、風俗史研究者。国際日本文化研究センター所長。1955年、京都市生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞。著書に『霊柩車の誕生』『美人論』『日本人とキリスト教』『阪神タイガースの正体』『パンツが見える。』『日本の醜さについて』『大阪的』『プロレスまみれ』『ふんどしニッポン』など多数。

「2023年 『海の向こうでニッポンは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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