戦場の村 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022608017

感想・レビュー・書評

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  • 戦場下にある人々の様子が生々しい筆致で語られる。

  • ベトナム戦争を題材にした作品は数あれどアジア人の眼から等身大の市民とその戦争の災禍を捉えた作品は貴重であろう。サイゴンでのやや牧歌的な日常と打って変わり「戦場の村」で描かれる光景は熾烈極まるものである。市民の生活にまで入り込んだ本多氏だからこそ見える景色がここにある。

    特に印象的なのは旧南ベトナムの人々が解放戦線や政府軍に対してではなく代理戦争を行う外国人部隊に憎悪を向けている点だ。国内で横暴を働く米軍はもとより実際は紳士的であった韓国軍らに対する悪罵は愛国者誰もが持つ自国の地を踏み荒らされることの怒りと憤りといえる。それは本多氏が言う我々「死の商人」も例外ではない。白人米兵は無邪気に騒ぎ黒人米兵が労わりを持ってベトナム兵へ接するのはアイデンティティを害される根深い沈痛を理解できる否かの違いなのかもしれない。

  • ベトナム戦争のこと。現地へ行き体験したことのレポートということで、読んでみた。そもそもどんな戦争かよくわかっていない私にとっては、対立関係、登場組織名が分からず、Webで調べてみた。

    大局ではなく、戦争に巻き込まれた民の生活や体験のレポートで、現地の人々の感情、考えはある程度理解できたかと思う。このような状況でも、その場で生きていかなければならない大変さ。想像するだけで恐ろしいが、諦めたように生活する人々。

    朝鮮軍の事は新鮮だった。同盟軍としてベトナムに派遣。米軍よりも規律のある行動をするが、情報操作のため悪評を立てられてしまう。

    【ベトナム戦争】
    第二次大戦後、ベトナム民主共和国を樹立し独立することを宣言。この独立を認めたくないフランスは南部に傀儡政権を建国北ベトナムと争うことになる。
    8年続きフランスの敗北、1954年7月にベトナムは分断される。南ベトナムにはアメリカを後ろ盾としたベトナム共和国になる。がこれが汚職まみれで国民から不満だらけ。 ベトナム共北ベトナムはベトコンを結成し内戦が始まる。
    この状態を見たジョン・F・ケネディは南ベトナムに4000名の特殊部隊を派遣することを決意。北ベトナムにはソ連が後ろ盾となって戦う。結果北ベトナム勝利。

  • (1999.01.26読了)(1998.07.12購入)

  • 1967年の5月から12月にかけて朝日新聞紙面で連載された「戦争と民衆」に加筆して1968年に出版された、『戦場の村』の文庫版。同社記者であった著者が、1966年12月から翌年10月にかけてベトナム共和国に滞在し、ベトナム戦争と現地の人びとの生活についておこなった取材によるルポルタージュである。これをひとこと、「ベトナム戦争についてのルポ」とかたづけてしまうのは惜しい。目次にあるとおり、「サイゴンの市民」・「山地の人々」・「デルタの農民」・「中部の漁民」と、民衆が生きる場それぞれに滞在し、彼らの生活のなかに参与観察するという、きわめて文化人類学的な視点で書かれているからだ。それだけならまだしも、アメリカ軍や南ベトナム解放民族戦線、細かいところでは韓国軍にまで従軍し、その実態を調べている。世界はもちろん、サイゴンの市民でさえもっていた通説を、著者が実際にたしかめることによって修正していくさまは圧巻であった。
    本編中盤では、同じ東アジア農耕民族(を名乗っていいものかわからないが)としての、そして人間としての、米軍の悪行にたいする怒りに燃えていた心が、終わりに近づくにつれ、解放戦線の人びとの温かさと強さに、こっちが逆に平和への希望を励まされるような気持ちになってくる。そのじわじわと広がる興奮を、読んでぜひとも味わってほしい。

    それにしても、この時代の日本のジャーナリストはすごかったんだなあ。いまの新聞記者は、この名著を読んでいるのだろうか。

  • 今ではオシャレな雑貨めあての女性が押し寄せる人気観光地となったベトナムは、ほんの三十数年前には「泥沼の戦場」だった……知らない人もいるんだろうな、きっと。戦場の村に入り込んで、現地の人の目線に近いところからジャーナリスト本田勝一がとらえた戦争の姿が、とても生々しく描き出されたこの本は、今だからこそ読み直さなきゃならない、と思う。それにしても、つくづくアメリカって学習能力のない国だと思うなぁ。

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