ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫 お 42-1)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022612441

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  • 95年に出版された本だが、論そのものは十分現実の世界の17年間が立証しているように見える。

    農業革命、産業革命、そして今の情報革命がいろいろな価値観や生き方を変えていくだろうし、パラダイムシフトにいる自分たちはその変化に気づいたり、自分の枠にとらわれて未来を予想することはできないと考えられる。

    洗脳とは常に社会によって行われてきているが、その中でどのような社会が次は来るのかを考えることも重要だと思った。

    既に絶版されているが、できれば続きをだしてもらえると面白いと思う。

  • 最も大事なもの、
    「今の自分の気持ち、この自分の気持ちを大切にする」
    と言うのは、重要なキーワードです。

    たとえばルネサンス以前、
    聖書といえばラテン語の筆写本でした。

    そのため、聖書は大変な貴重品で、
    読める人間も聖職者に限られていました。

    だから当時の人々は、
    教会や聖職者をすごく尊敬していました。

    荘厳な教会の大伽藍、
    反響する聖歌隊の歌声、そして
    分厚くて読むことのできない聖書。

    中世の人々が、いかに教会に
    畏怖を感じていたか、本当に
    実感はできませんが、何となく
    分かるような気はします。

    しかし、グーテンベルクが
    活版印刷を発明したおかげで、
    だれでも家庭で聖書が読めるように
    なってしまいました。

    あの無限の謎をたたえた書物を、
    買って読むことができるのです。

    すると、教会での説話と聖書の矛盾に
    気がつく人も出てきます。

    イエス=キリストは荘厳な教会を
    建てて自分の像に祈れ、
    なんて一言も言っていないじゃないか!
    その結果、人々が教会に対して
    感じる尊敬、権威は
    どうしようもなく衰退してしまいました。

    その価値観の変化は人々を、
    中世の「疑問を持つな。ただ祈れ」
    という価値観から解放し、
    ルネサンスをさらに加速させ、
    産業革命の足がかりとなったのです。

    人々の価値観が変わると、
    社会のシステムもすべて、
    大きく変わってしまいます。

    技術の進歩は人々の価値観を変え、
    社会システムをも変化させたのです。

    技術や科学が変化すれば、
    それにつれて社会の価値観も変わる、
    と言ったのはこういう意味です。

    「いいもの」「安いもの」が
    たくさん売れる時代ではないことは、
    日本のサラリーマンも
    実感していたからなおさらで、
    『知価革命』はべストセラーになりました。

    堺屋は、その中で次のように
    トフラーを批判しました。

    「「第三の波』のすべてが変化する、
    という前提は社会構成員の価値観が
    変化する、ということである。
    その変化する価値観を
    具体的に述べない予測は不十分だ」

    では、堺屋が『知価革命』の中で
    述べている価値観の変化とは
    どんなものでしょうか?

    堺屋はいかなる時代、いかなる社会にも、
    社会の共通概念である基本価値観がある、としました。

    その価値観を次のように定義しています。

    豊かなものをたくさん使うことは
    格好よく、
    不足しているものを
    大切にすることは美しい
    と感じる、人間のやさしい情知」

    堺屋はこの “根源的な"法則を、
    『知価革命』の中で
    何度も主張しています。

    これを使って過去から
    現在における変革をとらえ直し、
    未来を予測しているのです。

    これは歴史をとらえ直す上でも、
    未来を予測する上でも
    とても参考になる法則です。

    つまりその時代のパラダイム
    (社会通念)は、「その時代は何が
    豊富で、何が貴重な資源であるのか」
    を見れば明らかになるということです
    ということは、それまで豊富だった
    ものが急に不足したり、 
    貴重だったものが急激に
    豊富になったり、
    といった変化があるとき、
    それに対応して価値観が変化し、
    その価値観の変化によって社会は
    変化する、ともいえるわけです。


    真面目な話、実際に未来を
    予測しようとする際に、最も
    大事なのは「今の時代と未来では
    どんな価値観の違いがあるか」 という
    ことをはっきりと見極めることです。 

    こういった「社会を構成している
    基本的価値観」を「パラダイム」
    と呼びます(「パラダイム」という概念
    の提唱者T・S・クーン自身はその著書
    『科学革命の構造」 で「パラダイム
    シフトが存在するのは自然科学の
    分野のみに限られる」と言っています。
    しかし現在では社会学の用語として
    使われることが多いようです)

    たとえば、私たちは「自然現象には
    すべて合理的理由がある」
    と知っています。

    でも昔の人にとっては電鳴とは
    「雷様の怒り」だったのです。

    また織田信長の快進撃の原因は、
    鉄砲の使用や楽市楽座という
    経済政策によるものだ、
    と知っています。

    でも、昔の人は「あれだけ強いのは
    天の義を得ているからだ」
    と考えていたでしょう。

    これは彼らが無知だからではなく、
    パラダイムの違いによるものです。

    何かに理由を求めるときに
    「神がそう決めたからだ」とするパラダイムと
    「自然法則でそう決まっているからだ」とする
    パラダイムの違いが、両者の違いなのです。

    そのパラダイムに変化があれば、
    当然、社会システムや政治、経済、
    家庭、生活様式といったあらゆる
    部分に大きな変化が起こります。

    そういう大きな、社会を変えるほどの
    パラダイムの変化のことを
    「パラダイムシフト」と呼びます

    仕事に関しても、
    安定した会社とか出世できそうとかを
    中心には考えません。

    「こんな仕事に就いてみたい」
    「自分の可能性を伸ばしたい」
    といった、自分の気持ちを
    大切にしたいと考えます。

    価値観の中心が「今の自分の
    気持ちを大切に」なのです。

    こういった考えが主流になると、
    今まで考えられなかったような
    社会変化が起きます。

    また社会が変化すれば、構成員の変化
    にもますます加速度がつくでしょう。

    そして、私たち自身の心の中でも、
    このような感性、価値観は
    変化しつつあるのです。


    では、良き人生を。

  • 序盤は現状の整理で、時代的な話題ということもあってか、
    特に他人の未来予測の批評部分は生産性があまりなく感じる

    だが実際に洗脳社会の説明に移ると未来への予測がことごとくこの本の原則に従っていることが分かる。この想像を持ってすれば他人の未来予測の批判も納得できる。
    そして今の社会を見返すとその予測の過渡期であることを実感させられる。今からでもこの考えに従って行きていくことが自分の人生の一助になることは間違いない。

  • 読書会の課題本として読みました

    今ならPDFで無料でよむことができます。

    98年に書かれた本ですが、今でも読む価値が十分にあります。

    実質この本の続編であろう「評価経済社会」という本が出ていますが(自分は未読です)、まだまだ読む価値はあります。

    パラダイムシフト、という言葉を意識するようになるかと思います。

    あと、この時代に生まれてよかった、と思うようになりますよ。

  • ぼくたちがどれだけ思考を価値観を操作されていて、暮らしているかって本です。
    読みやすいし、楽しい本です。でも凄い重要な点を捉えていると思う。
    「パラダイム・シフト」って区切りはあんまり強く意識したことなかったので、結構勉強になった。

    ツギハギの価値観で、所属団体が細切れになっていく…という予想は既にもう半分以上実現してますよねw
    なんというかオタクで世間には全然同調できない自分にはとても嬉しい世界になりつつあるようですね。

    ↓ネットでも内容を公開してるようです。
    http://netcity.or.jp/OTAKU/okada/library/books/bokusen/mokuzi.html

  • 岡田斗司夫の最高傑作ですね、文庫版が出ているのを知ったので買っときました。

  • オタキングこと岡田斗司夫氏の本。タイトル等々から、若干手に取りづらいとは思いますが、内容はいたって真面目。社会学の基礎など、非常にためになりました。私の記憶が正しければ、大学入学間際に読んだ本。現在の私の価値観形成に、非常に深く寄与していると言える作品です。オンラインでも公開されているようなので、興味のある方は是非。

著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。通称、オタキング。1984年にアニメ制作会社ガイナックス創業、社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーに。その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を超える。現在はYouTuberとして活動し、チャンネル登録者数は90万人を超える。

「2023年 『誰も知らないジブリアニメの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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