いじめゼロ! ある公立中学校が実現したいじめ撲滅 (朝日文庫 な 31-1)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616289

感想・レビュー・書評

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  •  先日「この国が忘れていた正義」という本を読んだ。次に読む本を決めたら,なんと同じ著者の本だった。こんなこともあるんだなぁ・・・・と思いながら読み進めた。

     同じ著者だけあって,基本的に主張は近い。
     「この国が忘れていた正義」も加害者の更生にばかり肩入れして,被害者救済が置き去りにされている実態を強く批判し,刑務所などを被害者救済向けのスタイルに改めることを主張していた。
     この本でもいじめっ子の更生や再教育ばかりに目を奪われ,いじめっ子のパライバシーや人権にばかり配慮して,いじめられっ子の被害や心の傷は放置されたままになっている状態を強く憂うものとなっている。

     著者は,いじめの解消には「人数は最低限で内容は徹底的に」処分することであると徹底して主張します。
     いじめは一部の首謀者が優柔不断で付和雷同的な同級生を語らって引き越すものなので首謀者に絞って断固として決然とした容赦のない処罰を与えればそれでたりるという考えである。
     基本的にはわたしはこの考えに同調する。

     いじめや虐待を耳にし目にするたびにやり場のない怒りとも悲しみともつかない感情は,報われないままの魂に向けられたものだ。
     日本人の多くは実はいじめっ子がきちんとした制裁を受けないことを心のどこかで当然のことのような知っている。だからこそ被害者にどうしよもなくやるせない同情を抱くのだ。
     
     私たちですら,いじめられっ子が死なない限り解決しないのではないかという絶望感すらを感じる状況だ。本人たちにはもっと救いのない状況に違いない。
     彼らの悲しみを父兄や教育者たちはもっと心して耳を傾けるべきである。毎年のようにすくなからぬ子供たちが命に代えて助けを求めているのである。

     この本では後半「君を守り隊」という茨城の学校が取組んでいるとりくみを一つの成功例として紹介している。
     これはたまたま長社の母校なのだそうである。しかしながら著者はこの母校の取組みを評価しながらも,母校の取組みはまだまだ人間性を尊重する側面を色濃く残しているとしてやや距離を置いて一線を画し,あくまでも厳罰主義を前面に押し出す。

     そうやって著者はあくまで厳罰主義を主張しているが,そこには責任をあいまいにして無用な長期化を招来し,結果的に何も解決できない現状ではなく,一見過酷に見えつつも,長い目ではかえっていろんな面で教育的効果の期待できる方法としてこの厳罰主義を主張していると私は感じる。

     私も日頃から,「未成年には教育的配慮から配慮された法律適用がそもそも制度として用意されているのだから,だからこそその適用には長著せず,きちんとそれを適用すべきだと主張している。
     甘く作られた制度を,その運用や適用においても甘くしてしまったらそれはそもそも立法の趣旨を不当に貶めていると考えるからである。
     
     さまざまな場面で今の日本では,こうした当たり前の正義感がきちんと再評価される必要がある。そして,ただ弱者らしき衣を被ったわがままだけが横暴を極めるこの国の歪みをきちんと正すべきが来ていると思う。

  • 学校内のいじめはどんどん根深く陰湿で残忍になってきています。既にいじめなどという言葉では言い尽くせない、犯罪の域に達しています。いじめを根絶するには毅然とした態度が必要です。今、何をすれば、被害者を出さずに済むのか?徹底的に被害者の立場から提言をされています。全ての大人に読んで欲しい1冊。

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著者プロフィール

1955年茨城県生まれ。早稲田大学法学部卒。ジョン・グリシャムの作品に影響を受けて小説執筆を始め、横浜弁護士会に所属しながら1994年『検察捜査』で第40回江戸川乱歩賞を受賞。現役弁護士ならではの司法界のリアリティと、国家権力の影を作品に取り込むスケールの大きいエンターテインメントで人気を博す。著書に『違法弁護』『司法戦争』『第一級殺人弁護』などがあり、本書は『検察捜査』『新検察捜査』に続き女性検事の岩崎紀美子が活躍する最新作である。

「2023年 『検察特捜 レディライオン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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