潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022616845

作品紹介・あらすじ

アマゾンジャパンの物流倉庫に、ひとりのジャーナリストが潜入する。厳しいノルマとコンピュータによる徹底的な管理。そしてアマゾン社員を頂点とする「カースト制度」のなか、著者が目にした「あるもの」とは…。驚異的な成長の裏に隠された真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 働く人間を交換可能な部品とみなすことは、市場主義、合理主義の一つの回答なんだろう。「欧米流の」と冠詞をつける必要もない。日本だってどこの国だって、似たようなことはやってきたし、これからもやっていくのだろうから。嫌だったら努力して抜けだせ、と言われれば反論はしにくいし、どんな仕事だって熱意と誇りをもって、と上滑りな理想論を振り回されても何も変わりはしない。
    中の人がどういう働き方をしていようと客には関係ない。特にAmazonは、客にとってはキーボードとディスプレイの向こうにある便利なサービスにすぎず、顔が見えるのは宅配便のお兄さんだけなのだからなおさらだ。問い合わせやクレームのメールを送れば返事はあるけれど、テンプレートのそこここに固有名詞を埋め込んだだけ。優秀なAIと配送ロボットが完成すれば、Amazonに人間は不要だ。すべてが交換可能な部品なら、それでよい。もちろん、客は困らない。

    そういう未来がぼくらは欲しいのかなあ、とAmazonでぽちっとしながらふと考える。客は一方で働き手でもある。効率の名のもとに、少なくとも若干は、楽しく働ける場を減らしていくことは本当に「ぼくら」のためになるのだろうか。

  • 著者の横田氏が2005年にアマゾンの物流センターにアルバイトとして潜入し、その内部を暴露した『アマゾン・ドット・コムの光と影』の文庫版。文庫版にあたって、直近の5年間のアマゾンの動向について、大幅に加筆されている。

    本書で取り上げているのは、大きく2点。

    第一に、超秘密主義であるアマゾンという企業の実態や戦略について。

    第二に、そこで働く人々の労働問題についてである。

    そして、著者の感情は、この2点において自身の中で大きく対立する。


     

    アマゾンの戦略や分析については、非常に的確である。

    なぜ、アマゾンがここまで勢力を広げることができたのかという疑問の答えは、全てこの本に書かれている、と言っても良い。

    そして、アマゾンユーザーとして、著者はアマゾンというサービスに非常に愛着を持っていることも分かる。

     

    一方、物流現場で働くアルバイトとしては、その労働環境に対して問題を提起している。

    1年続けるスタッフがほとんどおらず、働ければ誰でもいい、使い捨てと言っても良い待遇の中、著者は同僚のスタッフとの関わりの中で、アマゾンへの怒りを覚えていく。

     

    ワンクリックで購入できるネットショッピングが増加している一方で、その注文品をピッキングし、梱包し、発送する、という単純作業の仕事が増加しているし、そのシステムの構築や管理のために、システム会社は、ひたすらプログラムを打つという単純作業や、24時間管理する、という体制を行っている。

    ただし、アマゾンに関しては、Kindle戦略が、この状況を大きく変えていくことになるだろう。

    電子データを掲載しておくだけのKindleであれば、物流を担っていた「使い捨ての人材すら不要」になるからだ。

  • 記者、編集者目線でもこれほどエネルギーに溢れて仕事をしてる筆者に刺激を受けたのと、
    アマゾン配送センターでのアルバイト経験で描かれていた社内の人間の階級格差が、自尊心の格差、希望格差に繋がっているという意見に圧倒された。

    自分の仕事の意味を理解して、意義を感じて、自分の仕事に胸を張って好きでいられることがどれだけ大切なことかを感じさせられた。

    そして当時革命的だったであろうAmazonのシステムを成り立たせる裏側には、泥臭くアナログに仕事をする人間の存在があるというのも忘れてはいけないなと思った。

    この本が、職場で所在不明に取り残されていた本だというのにまた皮肉を感じる…

  • 横田増生氏による著作。
    2010年12月30日第1刷発行。
    本書は2005年4月に情報センター出版局から刊行された
    「潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影」を改題し
    再構成したものです。なお、第二部は文庫化にあたり書き下ろしました。

    本書は横田増生氏が2003年11月から2004年3月にかけてAmazonの物流センターにアルバイトとして勤務し、目撃した事をまとめたものだ。
    (市川塩浜駅からバスにのって物流センターに通勤した)
    オタク系英単語もえたんの出荷が多かったとする記載には時代を感じる。

    amazonが急成長していく瞬間を垣間見た思いだ。
    入社したアルバイト、派遣を即戦力化していくシステムは大変勉強になる。
    他の物流系企業ではこう簡単にはいくまい。
    その点ひとつとっても、Amazonが他を抜きん出ている事を痛感した。

    ただ個人的にはAmazonや日通の秘密主義には違和感を覚えた。
    トリンプ・インターナショナル・ジャパン元社長の吉越浩一郎氏のオープンな経営の真逆のように感じる。
    本当にただの歯車でしかない仕事にやりがいなど感じまい。
    あまりにゲーム過ぎる仕事をずっと続けるのもきついだろう。
    ただ理不尽なノルマ、暴言に追われる営業などを考えるとずっとマシのようにも思う訳でして・・・

    印象に残った部分を紹介したい。

    再取材ではっきりしたことは、アマゾンが再販制度を軽視する態度であり、それを軸として考えることが、アマゾンという企業の戦略を把握する近道だ

    アマゾン社員を頂点にいただくカースト制度があった。
    トップはアマゾン社員の次には、センター運営を請け負う日本通運の社員がきてその下にはアルバイト。
    さらに最下層には、入ったばかりのアルバイト見習いが控えるといった四階層から成り立っていた。

    アマゾンは、アルバイトが一瞬たりとも気を抜くことがないようにと、ノルマとコンピュータの監視によってがんじがらめにしていた。

    日本のリアル書店はこれまで、洪水のように流れてくる新刊の波に翻弄され顧客が何を求めているのかという商売の基本をおろそかにしてきた。
    それに対してアマゾンは、顧客データをもとに需要を予測して仕入れや商品開発につなげている。
    それまで受け身一辺倒だった書店経営を
    顧客第一主義という理念を軸にして能動的なものに変えたことがアマゾン急成長の秘密だったのだ。

    アマゾン、日通ともに秘密主義の色合いが濃い会社である

    顧客と直接対面する店舗を持たない通販企業にとって、物流こそがその接点となる。
    どの物流業者と組んで、どんなサービスを提供するのかは通販企業の成否を分けるほど重要な戦略なのだ。

    物流を見ればその企業の全景が見えてくるというのが、数年間、物流に携わってきて得た確信である。

    物流部門には、商品開発や営業部門を比べると、地味で野暮ったいイメージがつきまとう。
    薄暗い倉庫の中で、重たい荷物と格闘している肉体労働的なイメージだ。
    しかしエクセレントカンパニーと呼ばれる業績好調な企業ほど、物流の重要性に気づき、また大切にしている。

    物流業務で同業他社との差異化を図ろうとする企業の常として物流現場を公開することはめったにない。
    物流先進企業にとって、物流センターは企業秘密のぎっしり詰まった場所であり、その業務内容を知られることは企業のノウハウや経営内容を暴露するに等しいからだ。

    ベゾスが本を最初の取扱商品として選んだのは、次のような理由からだった。
    まずは書店がパパ・ママストア(家族経営による昔ながらの小規模な小売店)中心で大手チェーンは存在したが、市場の独占からは程遠い状態であったこと。
    また出版社、取次(本の卸のこと)書店の思惑がぶつかるため、流通が非効率で、新刊本の返品率が4割近くに達していたこと。
    加えて、英語で流通している本は100万タイトルを超える膨大な数にのぼり、ネット上の検索機能が活かせると考えたこと。

    アメリカにせよ、日本にせよ、書籍の流通に非効率な部分が残っていることが、アマゾンのような後発組であるネット書店に付け入る隙を与えたのだ。

    大学時代(関西学院大学)の恩師からは、本を探そうと思えば、書名はもちろん、著者名、出版社名、出版年、それにできればISBN番号を調べてから、本屋に注文するようにと言われた。
    生半可な気持ちでは本を探すことは出来ない。
    本探しは学問道に必要な修行なのだ、と。それ以来、恩師の教えを実践してきた。
    (そのような本探しを根底から変えたのがAmazonである。ただし書名を把握する事の大切さは変わらないだろう)

    顧客第一主義に関してベゾスはこう話す。
    「私達が注意を払う相手は顧客であって、競争相手ではありません。競争相手をよく観察し、学ぶべき所は学ぶ。また、よいサービスを顧客に提供していれば、自分たちもできるだけそのサービスを採り入れようとする。でも、競争相手を意識するつもりは全くありません」

    ベゾスが具体的にイメージしたのは「小さな書店」だったというのだ。
    それもチェーン店にはない、個人の趣味を知りぬいた独立系の書店を目指していた。

    本というのは、嗜好性の高い商品であり、特定少数の顧客を対象として作られているパーソナルな商品である。
    それと対極に位置するものとしてコンビニなどで売られている歯ブラシやボールペン、ノートなどの日用雑貨がある。

    Amazonには物流現場にありがちな、けだるい雰囲気がまるでないのだ。
    早くシフトが終わらないかなあというだらけた雰囲気とは逆に、ピンと張りつめた空気の中を皆が急き立てられるように足早に歩いていた。
    バイト同士の笑い声はもちろん、話し声さえ聞こえてこない。
    真剣そのものである。

    作業ノルマとしてピッキング1分で3冊。検品1分で4冊。棚入れ1分で5冊。
    手梱包1分で1個。
    毎月個人の作業データを集計して成績表を作るのだという。
    作業に間違いがあれば、さかのぼって犯人を探し出すことも出来る。
    また、ノルマに達していないアルバイトには指導が行われ、それでも成績がよくならない場合は、2ヶ月ごとの契約更新時に、契約が打ち切られるという。

    インバウンド(入荷)・・レシービング(荷受け)ストーイング(棚入れ)
    アウトバウンド(出荷)・・ピッキング、梱包

    業界紙と一般紙の最大の違いは、取材対象や読者との距離にある。
    業界紙とは、読者と取材対象、広告主がほとんど三位一体という息が詰まるくらい濃厚な世界なのだ。
    だから業界紙は、いつも業界から至近距離で監視されているようなものだ。

    Amazonの物流センターはアルバイトの比率が高いだけではない。
    ここではアルバイトが長続きしないのだ。
    1年もつアルバイトは10人に1人もいない。
    それを埋め合わせるために、毎週のようにアルバイトを雇い入れていた。
    一番不気味だったのは、Amazonも日通も、人が長続きしないことを、露ほどもきにしていないことだった。ここではアルバイトとは、募集広告を打ちさえすれば、陸続とやってくる使い捨て人材の異名でしかない。

    カスタマーレビューが面白いのは、顧客の役に立つだけでなく、Amazonの売上を押し上げるという働きもすることだ。
    「アマゾンの秘密」によれば、商品にカスタマーレビューがつけば、その商品の売上が「約1万円」増える可能性があるとの結果が出ているという。
    それもCDよりも、本の方がその影響力が大きいのだ。

    このマイストアとカスタマーレビューこそが、ベゾスが提唱するネット上に癖のある小さな書店を実現させるため、編み出された手法なのである。

    トヨタ、アマゾン、どちらの職場でも仕事が細分化されているので自分が何をやっているのかよくわからないという点だ。
    よって、やりがいや達成感を抱くことが出来ない。

    番号に従って本を探してくるだけという子供にもできそうな仕事に大の大人が働きがいを感じることは難しい。だから仕事がアイデンティティとはなり得ない。
    そうなるとこの職場に愛着を持つことは難しい。

    インバウンドが格上であることは、アウトバウンドの作業は日通の社員が説明するのに対して、インバウンドはアマゾンの社員が説明することからもわかる。
    アルバイトにとって、インバウンドの作業が出世と見なされるのは、同じようにノルマはあっても作業がだんぜん楽だからだ。
    レシービングはコンピューターの前に立ったままの作業だしストーイングは専用端末を手にして100冊の本を一列の棚の空いているスペースに差し込むだけでいい。
    ピッキング同様にノルマはあるものの、広いセンターを歩きまわって無数にある商品の中から1冊の本を探し出すのと比べると作業量や緊張感において天と地ほどの開きがある。同じ時給なら、楽な仕事を割り当てられた方がお得なのだ。

    AmazonJAPANの売上・・
    2000年は37億円、2001年は80億円強、2002年は165億円、2003年は500億円、2004年は1000億円を
    越えようという勢いである。まさに倍々ゲームなのだ。(著者の推計)

    出版社への書籍の返品率は36~40%と言われている所を(AmazonJAPANは)
    1桁台に抑えている(日本経済新聞2004年11月11日号AmazonJAPANメディア担当者)

    私(著者)はアマゾンの不思議なまでの秘密主義の根底にはベゾスが抱く恐怖心があると推測している。
    社員が辞めた後まで守秘義務を遵守させるというその異常なまでの秘密主義の根幹には、ネット事業のノウハウが流出すれば新たなライバルに追いつかれ、呑み込まれてしまうのではないかという恐怖心があるのだ

    2004年1月には募集アルバイトの時給が900円から850円に引き下げられた。
    (2018年の今ではちょっと考えにくい。時代を感じる。首都圏のAmazonなら1000円以上に今はなっている)

    時給50円の差は大きい。
    1日8時間働いて400円の差だが、1年だと10万円になる。
    200万円前後の年収からさらに10万円減るのだ。

    アルバイトの中から日東配の契約社員に登用される道があり、このころセンターにはアルバイト上がりの契約社員が3人いた。
    しかしそのエリートとて、さほど待遇が良いわけではない。
    アルバイトが2ヶ月ごとの契約更新であるのに対して、契約社員は1年ごと。
    残業代はつかずに、こき使われるだけこき使われて年俸で300万円前後というのだから、日東配の契約社員になりたがるアルバイトはよっぽどの物好きだった。
    しかしこれがアルバイトに与えられる最高の待遇なのだ。
    しかもその確立が400分の1では、アルバイトのやる気にはつながらない。

    少しでも気に入らない事があれば、さっさと辞めてしまえばいいという気楽さが、アルバイトという不安定な雇用関係の対価として、手に入る唯一の特典と
    言えなくもない。
    一生同じ会社に勤めて、会社との愛憎関係に幾重ものひねりを加えながらも、会社にしがみついて生きていく正社員とは全く別のメンタリティーである。

    ベンダーコード一覧にBOOKOFFの名前の記載があり新古本をAmazonで販売している疑惑が持たれた。
    しかしこれに関しては著者が後日Amazon側へ取材しても回答が無かった。
    そのような事実は無いとするも、なぜベンダーコードがあったのかと質問するとそれについては回答しかねると。

    上場は果たしたものの、BOOKOFFには業界内の黒や灰色の噂がついてまわる。
    一番根強いのは、BOOKOFFが新古本を高値で買い取る事が、本の万引きを誘発しているという噂。
    もう一つは、出版社が新刊本として出回っている
    自社の本を、BOOKOFFに二束三文で叩き売っているという噂。
    最後は、書店がBOOKOFFから新古本を買ってきて、取次に売れ残った本として返品して利益を上げているという噂。

    辞める際は、ネームプレートや入館証を手渡すと、それで終わり。
    毎日のように人が辞めていく職場では、去っていく人間のことを気に留めている暇などないのだ。

    Amazonはサイトオープンから5年も経たずに、自らの顧客がどんな本を何冊買いたいのかを予測できるデータを揃えている。
    Amazonが今後、取次を中抜きして書籍の買い切りを増やしていくという根拠はここにある。

    今、Amazonが日本の書籍流通を大きく変えようとしている。
    今後さらに、Amazonの売上が書籍市場の1割以上を押さえることになれば、その影響力は現時点では想像もつかないほど広範囲に及ぶだろう。
    そのとき、日本の出版業界は果たしてどんな姿になっているのだろうか、その中心にAmazonがいることだけは、もはや疑いようのない事実である。

    約半年のアルバイト生活で実感したのは、この仕事では、まともな生活設計を立てることはできないということだった。

    マーケットプレイスでは出品者が儲けることができない構図になっている
    買う人の99.9%までが1円でも安い本から買っていく
    だから、どうしても出品者同士のダンピング競争になる。
    出品者が個性的な品揃えをしている事を知ることはできない。
    出品一覧を見ることができないからだ。
    マーケットプレイスで本を売るには、常に最低価格で本を出品することが前提となるのだ。

    マーケットプレイス専用の価格の自動引き下げソフトによって古本の2割が半年以内に1円本になるといわれているマーケットプライスは今や、お金をかけて、古本を捨てる市場に成り下がった

    コングロマリットによる支配を許すと、二度とは元には戻らない
    (アメリカの編集者アンドレ・シフレン氏)

  • 無感想

  • トヨタの絶望工場を参考にした(ヒントにした)と著者は語っているが、同じ潜入ルポながらまったく違うものになっている。トヨタには希望があったが、アマゾンには最初から希望はない、というのが印象的。また、マーケットプレイスにも触れているが、これも出品者は絶対に大儲けできない仕組みになっているようだ。綿密な計算があらゆるところで張り巡らされている。

  • 本来の筋もだが、マーケットプレイスのくだりがそういう事かと。
    再販制度については自分の意見が決められない。
    この本実はAmazonの中古で購入して読んだのだ・・

  • 『アマゾン・ドット・コムの光と影』情報センター出版局 (2005年4月19日発売)は読んでいた。本書は二部を追加して2010年に文庫本として発行されたものである。

    アマゾンがマーケットプレイス(中古本)で一円本を1冊売る方うが新刊を売った場合の二倍以上の利益があるのだとか、更に中古本に1000円以上の値が付けば利益は四倍になる。この手終料ビジネスには、コストも作業も在庫も発生しない。マーケットプレイス(中古本販売)は09年アマゾン全体の三割を占め、アマゾンの利益の源泉になっている。

    アマゾンの創設者、ベゾスの理念とは「顧客第一主義」そして「小さな書店の時代に戻すこと」それらをインターネット(オンライン書籍販売)を使って実現しようということである。顧客第一主義が行き過ぎることで、そこで働く労働者の疲弊は著しい。彼らはベゾスにとっては顧客として認知されていない。
    ________________________

    『アマゾン・ドット・コムの光と影』
    2014年7月12日 以下レビュー
     流通現場はシステム化されており、人手が必要な仕事も将来的に機械化される可能性がある。雇用の崩壊により労働力は更に流動的になる。潜入ルポを行った著者は、現場で労働する人達とアマゾンで本を購入する顧客層の違いに気づく。日本にも格差社会は確実に広がっている。

  • 平成29年4月9日読了。

  • 2010年(本書第一部につき底本05年)刊。タイトルどおり、アマゾン・ドット・コムにおける販売対象商品の物流現場に、自らアルバイトとして勤務した体験談を叙述する第一部。さらに、その後の状況につき①ブック・オフとの関係、②アマゾンのマーケットプレイスの販売・収益の構図、③電子書籍キンドルへの識者評価を叙述する第二部とに分別。いやあ、面白いなぁ。第一部はその生々しさがいい(①時給が900→850円に下がる模様、②残業代負担法定アップ分に待ったをかける新シフト制設定とアルバイト募集、③興味を引く秘密主義)。
    まともな生活設計を立て得ないアルバイトの時給や短期契約、派遣会社のピンハネ実態は。読破済みのB企業論で展開されているのと類似なので、ここでは問わない。が、レートによるが、米国アルバイト時給が1200~1600円で組合運動(内容不明だが、ストまでいかず団体交渉か)が起きたという事実は記銘すべきか。レイオフされたが…。また、マーケットプレイス(少ないながら利用歴有)の1円古本の儲けのカラクリと価格設定用のソフトの存在には吃驚した。アを地主・出店者を小作人に準えるのも秀逸。
    最期に、ダンピング等も懸念される価格自由競争は寡占を招き、その結果、価格決定権を寡占企業体が掌握。メーカーは単品利幅を大きくすべく、徐々に値上げへ。かかる構図が書籍で起こっていいのか。車や家電製品と違い、多数の情報が公平に行き交い、その結果、流通情報の価値が決まるという性質を持つのが書籍。アは多数の情報を知らしめる機能を一定程度持っているが、学術書未満だが有益情報を含む書の出版ハードルを上げる結果にならないか、という?が本書から沸き起こった。杞憂かも知れないが…。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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